現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum125号の特集のWeb版です。
「工場で働くということ~プノンペン周辺工場労働者の職と生活の現状あれこれ~」
縫製業やアパレル業などで約90万人の労働者の仕事を生み出すカンボジア。全国1326の縫製工場のうち、727の工場がプノンペンにあり、約34万人の労働者が従事しています。
そんな首都プノンペン郊外の、特にチャオムチャウ町 (プノンペン国際空港の西南部エリア)には工場エリアが広がっています。若い労働者向けの借家や団地もあり、縫製業などに従事する工場労働者が生活しています。そのため、この地区にある工場周辺には日常生活に欠かせない品々や飲食店などがすらりと並び、いつも人々でにぎわっています。
主に地方から集まってくる労働者たちは、この環境でどんな生活を営んでいるのでしょうか。その実態の一角をご紹介します。
田舎に預ける子供のために頑張る共働き夫婦
2人の子供(長女10歳、次男6歳)を田舎の親元に置いて、プノンペンに上京して共働きをしている夫婦がいます。出産直後から今に至るまで子供と離れた生活をしているけれども、月に一度は帰省して子供との時間を作っているというカーン・モイニィブさん(30)が、今の生活についていろいろ教えてくれました。
モイニィブさんは、縫製工場の工員として11年間働いている。親戚の紹介で2012年に採用されてから、プノンペンに上京して服の仕立てを行っている。
「工場に入る前に短期間ですが基本的な縫製の訓練を受けていたので、その技術を買われて採用されました」
住居費の負担を軽減するため、夫婦と姉の 3 人でアパートを借りて生活している。
「月に40ドルで借りた部屋に3人で住んでいます。他に水道代と電気代で約60,000リエル支払っており、切り詰めながら生活をしています」。
給料が少ないからと質素倹約に努めるモイニィブさんは、交通費を節約するために工場近くのアパートから毎日約5分かけて徒歩で通勤しているという。
仕事内容
工場の仕事は朝7時に始まり、遅刻すると叱られたり減給されるという。たいていの工員は朝早く起きて朝食を作り、家で食べてから工場へ行くそう。昼食は持参のお弁当を工場で食べるのが一般的だ。
従業員全員が毎朝工場に着いたら必ず黒板を見て、その日どのような作業が割り当てられているかを確認する。仕立て部に所属しているモイニィブさんは、リーダーから説明を聞いて作業を進める。
「ここでの仕事は所属部の上長から目標を聞いて、各自がそれぞれの役割を目標に向かって進めていかなければなりません。他の部と共同で作業を行うこともあり、連携して目標枚数を縫っていくというチームワークが大事になります。どこかの部が遅いと怒られます」
仕事で大変なところ
決められた枚数を縫っていく中で急ぎの注文が入る場合もあり、そんな時は残業しなければならないそう。また、週に一度から月に一度の頻度でデザインの変更があるが、それに合わせた仕立てが上手くできないこともあるという。スキルが未熟な新人工員がいるため、作業が遅れてしまうこともよくあるそう。
仕事の魅力
工場内にはどこにでも扇風機があり、化粧室も清潔で、以前のように暑く不衛生な環境ではなくなってきているという。また、期日前に納品準備ができた場合は、インセンティブやボーナスが支給される。残業があるときは、月給のほかに手当てが付くので収入が増えるのも嬉しいそう。「工場では仕事を通じていろいろな手当てが得られます。工員みんなで協力し合って仕事に取り組んでいて、環境の良い職場で労働への対価が得られるのが一番嬉しいです」
余暇の過ごし方
「私たち工員は裕福な家庭のように街中に遊びに行くことはめったになく、週末にはたいていアパートで過ごしています。でも、近所の人と食事をしたりはしますね」。多くの人はお金をあまりかけない過ごし方をしているという。贅沢はできないが、アパートの近くのバーベキュー屋や屋台で食事をすることが些細な楽しみになっているそうだ。
収入と支出について
基本給は月250ドル。残業代やボーナスが出たりすると多少プラスになる。40ドルの部屋を3人でシェアしているので1人の負担は約13ドル。水道・光熱費は1人5ドル程度だ。食費は夫と2人で1日10,000 ~ 15,000リエル。毎月親へ50ドル、さらに子供の養育費として50ドルの仕送りをしているほか、故郷の土地購入時の借金を毎月150ドルずつ返済している。このため貯金は毎月ほぼない状態だ。
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