(日本語) 【日本で活躍するカンボジア人によるレポートフロムジャパン③】モ・ピセイさん
(日本語) 【日本で活躍するカンボジア人によるレポートフロムジャパン③】モ・ピセイさん
2020.07.30

近年、目覚ましい経済発展を遂げるカンボジア。

国内の急速なデジタル化で情報を得た若者は国外へ飛び出すものも多いです。

日本へ向かう若者もここ数年で数倍に増えてきています。

勉学に励むもの、母国の発展のために働きながら技術を習得するものなど。

日本で日々奮闘しているカンボジア人の姿をNyoNyumの姉妹誌NyoNyum Khmer内の「レポートフロムジャパン」というコーナーを通して紹介してきました。

そして、上記コーナーを「是非、日本語でも紹介して!」という声が多かったので、読者の日本人の方や日本語学習するカンボジア人の方にも知ってもらいたいということでNyoNyum webで日本語版でも紹介していきたいと思います。

今回は日本語の研究者として日本に滞在しているモ・ピセイさんです。

 

日本語講師から日本語研究者への道のり

韓国の友達の卒業お祝いにて

モ・ピセイ(28)さんは2013年にプノンペン王立大学の日本語教育学学部を卒業した。

大学に在学中に優秀な成績を修めため、Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJの奨学金のもと、短期留学で2回ほど、日本に渡航することができた。

大学卒業直後から2018年の3月までカンボジア・日本人材開発センター(CJCC)で日本語の講師として勤めていた。

その間、ピセイさんは日本語講師を育成するプログラムの奨学金で2014年末に2週間と、2016年後半から半年間の3回にわたり訪日した。

そして2018年4月から現在に至るまで、日本の文部科学奨学金(MEXT)で、日本語の研究者として日本に滞在している。

 

●日本での研究を決意したきっかけ

ASEANの友達と日本語講師育成プログラムで取得した資格の贈呈式にて

今回の日本留学を決めたのには3つの理由がある。

一つ目は、日本には今回の研究テーマで有意義な研究結果が得られるための研究資料が多く整っているから。

二つ目は、日本は自分にとっていろいろな体験ができる国であり、日本文化のみならず他国の文化にも接することができると思うから。

特に日本の学校などでダンスパフォーマンスを通して、クメールの文化を日本人に発信することができると思った。

三つ目は、日本で新しい友達作りができると思うから。

彼女はこれまえ、5期にわたるMEXT奨学金の合格者に日本語を教えたことがあるので、日本でみんなと再会できることが楽しみだった。

​また、今までやってきた日本語教育プログラムで出会った35ヵ国の外国人の友達と交流があり、今回の留学で日本人だけでなく、さらにASEAN地域の友達を増やしたい。

そのため、今回の日本留学は修士課程で日本語の研究のみならず、日本と自国の文化の発信と今まで出会った友達との再会、そして新しい友達作りにも期待を膨らませている。

 

●研究生活について

日本の友達と後輩との高尾山の散策

現在は日本の学生と他国からの留学生と一緒に研究をしている。

単位で科目の履修という点ではカンボジアの大学と似ているが、日本では本をたくさん読むなど事前の研究やチームワークが多い。

そして、クラスでの学習以外には水泳やバトミントン、合気道、歌とダンスなどのクラブ活動もあるため、学内の研究のみならず、色々なイベントを通して多くの学生との交流し、学ぶことがたくさんある。

 

●日本での生活

アルバイト先の日本人同僚とカンボジア料理レストランにて

生活費は奨学金で賄えるが、時間に余裕がある研究者は週末で週に28時間以内でアルバイトをすることが可能である。

ピセイさんは後輩の紹介で週末と休日に東京の郊外にある中華街の中華レストランで働いている。

慣れるまでは、一日8時間立ちっぱなしの仕事で、来客の対応や上司に対するきちんとした言葉遣いなど、学ばないといけないことが多くあり、最初はいろいろ大変だった。

しかし、アルバイトから学ぶことも多くある。

どんな仕事でも価値があるので、大変なことがあっても学校で学べないことを体験できることが、自分の成長に繋がると信じている。

「今日は大変で、明日も明後日もまた大変になると思うが、頑張れば、いつか報われるだろう」ピセイさんは語る。

 

●日本で学んだこと

この2年間の滞在で学校と生活の中から学んだことが多くある。

ピセイさんは、「日本で生活し、いろいろ経験してきた中で、以前よりも精神的に成長できました。特に自分で料理もできるようになったし(笑)。そして、“実るほど頭の下がる稲穂かな”という日本ことわざにある通り、人間は自分の誤りを認め、反省すること、人との相互理解を共有するなど、責任感のある行動を日々していけば、いつかきっと報われてくれるだろうと信じています」と語る。

 

●日本暮らしの中での思い

“怠けものは貧乏で勤勉なものは金持ちになる”という言葉がある。

「日本人と一緒に働いたり、学んだりしたことからみると、日本人は仕事に勤勉で、時間厳守、計画性があり、特に細かいですね。

例えば、日本のものづくり文化においては、相手への配慮で綺麗な包装をしたり、消費者の安全をよく考えています。

日本のお菓子や飲み物の容器を見ると分かるように、開ける順番を分かりやすく書いているなど、日本人は我々が普段そんなに大切だと思わないところまでちゃんと考えてくれることに驚きました。

また、日本は技術が進み、清潔的で、自然にも巡られているし、生活しやすい国です」とこれまでの体験を振り返えるピセイさん。

しかし、日本の近代史をみると、だいぶ前から日本人が労働で海外に出かけたり、自然災害が多くあったりして苦難の時も少なくなかった。

今我々が目に見える発展の背景には、日本政府が投資してきた教育と先人の方々の努力のお陰でもあることを忘れてはいけないと思っているという。

 

●将来への希望

今は、日本の文学を研究しているが、将来は文学を通して教育に携わるような仕事をしたいというピセイさん。

「日本留学を考えているカンボジアの学生が、日本の文化科学省の奨学金の情報や日本での生活状況など知りたいなら、いつでも自分に連絡してください。みんなを応援したいです」と話してくれた。

 

取材、翻訳:Nop Visal
(NyoNyum Khmer 40号掲載)
※掲載情報は取材当時の情報です

 

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