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【日本で活躍するカンボジア人によるレポートフロムジャパン⑤】イー・プーラーさん

近年、目覚ましい経済発展を遂げるカンボジア。

国内の急速なデジタル化で情報を得た若者は国外へ飛び出すものも多いです。

日本へ向かう若者もここ数年で数倍に増えてきています。

勉学に励むもの、母国の発展のために働きながら技術を習得するものなど。

日本で日々奮闘しているカンボジア人の姿をNyoNyumの姉妹誌NyoNyum Khmer内の「レポートフロムジャパン」というコーナーを通して紹介してきました。

そして、上記コーナーを「是非、日本語でも紹介して!」という声が多かったので、読者の日本人の方や日本語学習するカンボジア人の方にも知ってもらいたいということでNyoNyum webで日本語版でも紹介していきたいと思います。

今回は東京大学の博士課程で農業研究をしているイー・プーラーさん(28歳)です。

大学でのコメの研究を通して日本で経験していることを語ってくれました。

 

「研究者にとって健康と時間の管理、明確な目標を持つことが重要」

イー・プーラーさん(28歳)はコンポントム州に生まれ、2014年に高校を卒業した後、2016年から奨学金のプログラムで来日し、現在東京大学の博士課程で農業研究をしている。

読書と研究が好きな人柄で優等生でもあるプーラーさんは、高校を卒業した後、海外留学のための奨学金を探していた。そして自分に相応しい日本留学のプログラムを見つけたという。

彼は「実は、日本は自分の進路で優先にした国ではなかった。でも、厳密に調べた結果、農業でコメの品種改良や育種法、栽培技術、販売市場が豊富で、特にコメ作りがアジアで先進だったこと、米国と中国に相次いで3番目の世界最大の経済大国である日本が、丁度自分の理想に合うことが分かった」と語る。

2015~16年募集の在カンボジア日本大使館実施による日本の文部科学省の奨学金(MEXT)がにかり、2年間の研究生として来日した。

2年間の研究成果を収めた結果、大学の推薦で修士と博士課程まで進学ができた。東京大学での研究生活について彼が次のように述べている。

「この東京大学の農業研究科の博士前期と後期課程においては、日本語及び英語で実験などが実施されました。英語が話せる日本の学生や外国人の学生はいましたが、今までカンボジア人の学生がいなかったんです。修士課程に入る前の2年間の研究生期間中は、研究の傍ら、日本語の勉強と修士課程に入るための試験勉強をしていました。修士課程に入ると、履修科目が30単位必須で、うち10単位が一般履修科目、20単位は研究科目でそれぞれの条件を満たさないといけません。この課程では科学的な論文を出さなくて良いのですが、博士課程においては履修科目が20単位あり、科学的な論文を一本だけ提出する条件となっていました」。

日本での学習を通じてカンボジアのコメ作りの大切さを理解したプーラーさんは、コメ栽培に重要な早苗の根の部分について修士課程で研究し、博士課程では日本の天然肥料(有機肥料)を作る革新的な技術による多収性のあるコメの栽培を研究している。

プーラーさんは「研究と修士課程では、根が深い稲と根が浅い稲の品種の違いにより、稲の根の遺伝がどう違うのか、そしてその違いにより稲の生長と栽培において、特に乾季の水が足りない、もしくは干ばつに陥る地域ではどういうメリットがあるのかについて研究しています。

この研究は学会でよく取り上げられ、科学的な論文としても発行されたりしました。

一方、博士課程においては、AMFというカビの菌を天然肥料として化学肥料の代わりに使う、「ハイブリッド米」という日本の新しい稲品種を使って、1ヘクタールに10トン以上の収穫高のある美味しいコメ作りのメリットについて研究しています。

この研究は稲の成長と豊作に着目するだけでなく、特に水が乏しいかつ干ばつ地域を対象としています。

このような研究はカンボジアではまだ行われておらず、革新的な研究だと言っても過言ではありません」と語る。

日本での学生生活は、みんな朝から深夜まで勉強と研究に没頭し、日々忙しいという。

また、留学生より日本人の学生の方が実験能力が優れており、多くの博士課程の学生は研究者か教授の職に就きたいという意志が強いと、プーラーさんは感じている。

そんな環境の中、この4年間の日本の滞在で自分自身に次のような変化がみられたと振り返る。

「自分に変化をよく感じたのは、先ず考え方です。先進国である日本に来ることは自分の将来を探りに来るようなものです。次は自分の習慣です。来日の前は物事をやりながら、話すのが好きだった自分でしたが、今はおしゃべりより目の前のことに集中するようになったと思います。それから、自分以外の考えを幅広く取り入れられるようにもなりました。日本での研究では、日本のことのみならず、米国や、ヨーロッパ、オーストラリア、アジアの他の国の研究もしており、専攻した研究に関連する政治や経済、社会の現状も知っておかないといけないからです」

 

日本で生活していく中で、日本の良さもいろいろ感じたという。

「日本と日本人の良さは数え切れません。交通事故や泥棒などをみても自国とは違います。日本においては泥棒に入られないよう家の回りに高い塀を作る必要もないし、放置した自転車やバイクなどが盗難される心配もありません。また、落としたものが警察署に届けられたり、騒音もなく、日本は地上の天国のようだと思いました。また、日本の田んぼはよく整備されており、上空からみると田んぼに挟まれた用水路がたくさんあり、平面に広がる日本の田んぼの光景は非常に綺麗です。日本の稲作は収穫量が多く、機械化の農業発展が進んでおり、市場の整備も良くできています。農作物に対する政府からたくさんの支援や施策があり、やや高価格ですが、作物の品質や包装、管理がきちんとできています。さらに、日本人はたくさん話をするよりたくさんやるのが好きで、また理論より結果を重視し、平等主義で、他人に助けてもらうより自助努力を求める国民性だと思いました。国民一人一人のイノベーションと画期的な出来事への挑戦の意識、過去より未来を向いている国という印象です。他方、日本には地震や津波、豪雨による洪水などと言った自然災害が多い国であり、国民は勤勉しすぎるから、人としての人生のバランスを崩して見える部分もあります」という。

都会より田舎の生活を好むプーラーさんは、将来カンボジアで日本での研究結果や体験したことを活かし、農作物の栽培や家畜の飼育、農業の新技術などの研究をしながら生きていきたいという。

研究生から博士課程までのこの4年間の道のりの中で、自分に大切だと思うことは何か、という質問にプーラーさんはきっぱりと答える。

「時間の管理や目標設定とその実現のために闘う姿勢の他に、精神的且つ肉体的に健康でいられる自己管理が重要です」

(NyoNyum Khmer 42号掲載)
※掲載情報は取材当時の情報です

 

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