こんにちは。ボンユキです。
前回の続きです。 ※【前回の記事はこちら】
主役、主体であるコンポンチュナンの村の人たちが、より豊かに、より誇りを持って生きられる形を作る。ミッション。そう思ってやってきた。
では、私は何のためにそれをやってきたのか、やっているのか・・・。
そもそも、私はなぜカンボジアに来た?そんなことからインタビューは始まりました。
1994年に青年海外協力隊の日本語教師としてプノンペンの観光省に赴任して、一年足らずで病気になり、そして日本で手術を受けるも、JICA/JOCVからの再赴任の許可が降りず、泣く泣く志半ばで断念した。
それが悔しくて、1年間日本で働いてお金を貯め、1996年の4月に再びカンボジアへ。なんのあてもなく、ただ協力隊の時に知り合いになった友達に頼って戻ってきた。日本で稼いできたお金を食いつぶすわけにもいかないと、現地採用で働く口はないかといろいろ回ってみた。
しかし、大使館も、JICAも、民間企業も、「現地採用スタッフの枠」がないと門前払い。自分の居場所がどこにもなかった。ちょっと絶望的になったけど、何もできないならこの時間を利用してカンボジアのことを勉強しよう。そう思ってクメール語のレッスンを受け始め、その先生がプノンペン大学の文学の先生だったこともあり、大学には入れないかという相談をしてみた。
教育省に相談したが、「私費留学生の枠」がないと、こちらも門前払い。話だけでも聞いて欲しい!そう思って先生と相談して政府に手紙を出すことにした。当時第1首相だったラナリット首相宛だ(第2よりは第1の方がいいかと思い・・・)。その手紙を持って教育省へ。「首相に出しておいてください」とお願いすると、先方はびっくり。ちょっと預からせてくれということに。
しばらくして、私のお願いに対して会議を開いてくれたという話。しばらくして大学入学の許可が伝えられ、1996年10月からプノンペン大学の学生となった。その後4年間学生と机を並べて勉強をする中で、彼らが自分たちの将来に対して希望が持てない、国に対して誇りが持てない、アンコールワットを作ったのが自分たちの祖先ということさえも信じられないと言った言葉を聞き、ショックを受けた。
いくら外国人が援助、援助といってお金を持ってきたって、この国の若者が自分の国に誇りをもてないんでは、この国は良くならないんでは?そんな思いを抱いた。
一方で、大学生活も後半に入り、少しずつ通訳や翻訳の仕事をし始めていた私。カンボジアに実際に住んで、生活し、いろんな情報が入ってきて、それを知る中で、メディアが伝えない、伝えきれないカンボジアの日常生活や、文化、伝統、歴史、笑顔というものをもっと伝えたいと思うようになっていく。
もしその作業を、自分の国に自信がもてないと言っていた学生と一緒にすることができれば、彼らも自分の国を一度取材ということで知り、客観的に見て、文章にしてそれを世の中に伝え、世間から反応を得るということで自信につながっていくんではないか。そう思って「ニョニュム」を始めた。そして援助ではなく、民間企業として彼らの就職先として位置し、一緒に働き、お金を生み出し、それを分配することで、フェアな関係でいられる。企業活動を通じて「給料」と「税金」という形で個々人に収入をもたらし、そして国家に歳入をもたらすことで、国民生活が潤い、国家の財源が確保されその一部が福祉や教育、保健へと循環し、父となる、母となるスタッフが新たに子を産み、満たされた社会で健やかに育った子供が将来再びうちの会社の社員となって戻ってくる。
そんな循環を作ること、それが私なりのこの国への貢献ではないか。そう思った。
そして法人登録をし、以来15年間、通訳・翻訳、雑誌を発行する会社としてここまで来た。
その通訳・翻訳、雑誌の取材活動の中で、いろんな地域に訪れ、そこで村の人たちがいろいろなものづくりをしているのに出会った。その一つがコンポンチュナンだ。伝統的なものづくり、手工芸品、雑貨がいっぱいあるのに、それを売る市場がない。その前に、もっと付加価値をつけないときちんとした収入にならないのだが、その付加価値をつけるための知恵、知識、技術がない。それを身に付けるために必要な元手、資本がない。だから伝統的に村に受け継がれていたレベルでのものづくりしが細々と続いているだけの状態。
その中のコンポンチュナンの土鍋は、女性の手仕事として祖母から母へ、母から娘へ、娘から孫娘へと受け継がれてきた伝統だ。しかし都市部が経済発展をし始め、地方との格差が出来ると、地方の働き手は都市部の工場や外国へ出稼ぎに行くようになる。もし、地元に働く場所があったら、ぜったい家のそばで働きたいはず。でもそれがないから、少しでも良い給料がもらえるのならと、子供を祖父母に預け、出稼ぎに行く親たち。
一方で、土鍋作りは窯業。窯業といえば一つの産業である。外国から直接投資で工場を誘致するのも一つのやり方だ。でも、カンボジアにもともとある伝統が産業になるならそれを育てるのもありなのでは。産業であり、焼き物の里として観光業にも結びつけることができる。そうすれば、財団に問いかけたような社会の構図の基礎ができるのでは。また、伝統の継承という文化活動でもあるし、将来芸術家が生まれるという可能性だってある。それがすなわち、クメールの誇りとなるのではないか。
そうして始まったプロジェクト。2009年から2015年まで日本財団の助成金を頂き、2016年からは焼き物の里でのものづくりと、それをブランディングし市場開拓するという、チュナンとニョニュムの両輪の関係を作り上げてきた。どちらがかけても何もできない。そういう関係。寄り添い、時には喧嘩もし(苦笑)、でもお互いを尊重し合い、励まし合う。。。
そんな話を記者さんに伝えていたら、胸がキュンとしてちょっと涙が出てきました。こうやって人に語るのは美しい話になります。でもその裏では、いろんな問題が起きたり、悔しい思いをしたり、悩んだり、それを解決してはまた起き上がって。そんなことの繰り返し。未だにいっぱい問題を抱えています。この先やっていけるのかと、心細くなることもあります。でも、今回の記者さんのように、「素敵だね」って言ってくれる人がいたり、応援してくれる人がいる。記者さんは、ある日本食屋さんでコンポンチュナン焼を見てこの活動を知ったんだよって。私たちが蒔いた種がいろんなところで実を結び始めている。
実はこのインタビューの数日前にも、現場で問題が起きているという話があり、どこまで私が介入すべきなのか、すべきでないのか、自立ってなんなんだろうって悶々としていた矢先だったのです。あくまでも主体は彼ら。だからこそ彼らが自分たちの問題を解決すればいい、そういう思いになりました。私は私のやるべきことがあり、それ以上のこともできないし、それ以下でもないのだから。
私は何のためにそれをやってきたのか、やっているのか。
一言でこれっていう言葉は見つかりませんが、こんな学生時代の一場面、村で出会った女性たち、そんなクメールの誇りを巡るストーリーがあっての今であり、これからなのかな。そんな風に思います。
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