2003年のNyoNyum創刊当初から連載している「ボンユキエッセイ」。カンボジアに長年住むと街の移り変わりが見えてくる。
おもしろくもあり、どこかもどかしくもある。
通訳、翻訳、会社経営に奮闘中のボンユキこと山崎幸恵がおくるカンボジアあれこれ。
今回は記念すべき100 号を迎えたNyoNyum(ニョニュム)の誕生にまつわるお話です。
続けること
ニョニュム100 号を迎えました。毎回雑誌を見てくださり、関心を持ってくださり、時には批判をくださり、そして支えてくださった読者、広告主、執筆者、そして取材に協力してくれた皆様に、心からの感謝を申し上げます。言葉では言い表せないほどの感慨深い思いです。
16 年前、自宅兼オフィスの一角で、私たちは「ニョニュム」という“子” をどのように生みだし、育てていこうか考えました。
まず、「カンボジアを伝える」雑誌というコンセプトが決まり、コンテンツを検討し、そしていよいよその名前をどうしようか、という話になりました。
「オークン(ありがとう)」とか「サバーイ(楽しい)」とか、いろんな名前が上がりましたが、どれもしっくりこない。そして、ある瞬間にパッと降りてきたのが「ニョニュム(微笑み)」でした。
1994 年7 月、初めてカンボジアの地に足を踏み入れた日。私はその日に“ニョニュム” に出会いました。
空港で、ぼろぼろの一張羅のワンピースを着た小さな女の子。
首に白い淡水パール風の首飾りをつけていたその子に、「スァーッナッ(すごくきれいだね)」って声をかけたとき、はにかんだような、笑み(ニョニュム)を浮かべました。
その無垢な、透き通るような笑みに一瞬で魅了され、そして私はこの国が好きになったのです。
2003 年10 月10 日、創刊号発行。
微笑みがいっぱい詰まった雑誌が生まれました。
あの空港にいた女の子を出産したような、そんな感覚でした。そしてその子がこの世で受けた使命は「伝える」ということ。
カンボジアのいいことも、悪いことも伝え続けることで、カンボジアを理解し、共感し、一緒に考え、悩み、歩んでくれる日本人、外国人がもっともっと増えるように。
そして伝えるということを通じて、この子たちが自分の国を見つめなおし、これが自分の国なのだと認識し、誇りを持ってこの国で生きていけるように。
今回の100 号記念号は、この国に住む、関わる皆さんの思いを集約させていただきました。カンボジアとの思い出や、ニョニュムに対する感想、ご意見を、アンケートを通じていただきました。
そのひとつひとつを読ませていただき、皆さんのカンボジアに対する愛情や、やっぱり異文化で困っているんだな、なんてことがよくわかりました。
この国でカンボジア人とともに生活し、働き、泣いたり笑ったりの日常を営む中で、おそらく皆さんも「日本人である自分」を見つめなおし、改めて日本の良さ、悪いところを知ることが多いのではないかと思います。
それを教えてくれるのが、カンボジア。そして、そのきっかけとなるニョニュムであり続けたいと思っています。
Cambodia Joho Service 代表/日本カンボジア通訳翻訳家
神奈川県出身。在カンボジア歴、足掛け25年。
翻訳、通訳のほかカンボジア関連のアレンジやコーディネートを手がけることも。
仕事に追われつつも、大好きなビールは絶対に欠かさない。
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