2003年のNyoNyum創刊当初から連載している「ボンユキエッセイ」。カンボジアに長年住むと街の移り変わりが見えてくる。
おもしろくもあり、どこかもどかしくもある。
通訳、翻訳、会社経営に奮闘中のボンユキこと山崎幸恵がおくるカンボジアあれこれ。
今回は友人のカンボジア人家族とともに日本を旅したお話です。
ザ・ニッポン! の旅
4 月のクメール正月に私はカンボジアの友人家族とともに旅に出ました。
その目的地は「日本」。普段からカンボジア人を引き連れて日本各地を渡り歩いているボンユキですが、今回は完全プライベートな旅。
この旅のために「2 年間お金を貯めた」という彼らからは、①旅館、②温泉、③寿司・刺身、④新幹線、⑤鎌倉、⑥富士山、⑦京都、⑧桜、⑨できれば雪…と、ありとあらゆるリクエストが。
悩みぬいた旅程が、「羽田→鎌倉・江の島・横浜散策→はとバスで富士山・河口湖→新幹線で富山へ移動&海の幸&温泉満喫→アルペンルートで雪遊び→金沢で城下町散策→京都で世界遺産めぐり→関空(どこかで桜も見れるだろう)」という7 泊8 日の旅でした。
行く先々で土地の食べ物、文化に触れてご満悦のファミリー。
日本のサービス、近代的かつ整った社会、街ぐるみで取り組む美化などなど、日本の社会や文化への理解を深めてくれました。
そんな中で彼らは常に聞いてきます。
「日本人はいつまで働くんだ?」
タクシーに乗った時、ホテルや工事現場の警備員を見た時、高齢の方が働いている。
まだまだ働ける年だから働いている方もいるのですが、一定以上の労働を終えた年齢の人は隠居して他の家族が働くというのが「当たり前」のカンボジア。その前提が違うからこその質問です。
金沢城で公衆トイレに立ち寄り、近くに咲く桜や、春の花々の写真を撮っていた時、「日本人は本当に勤勉で緻密だね」。彼らが指さしたその先では、公園の整備員であろう作業服を着た老人が、しゃがみこんで雑草を1 本、1 本手でつまんでいる。
「当たり前」のように見てきたその光景を外国人に指摘されて、それを見過ごしていた恥ずかしさとともに、その行為が尊いものなのだと気づかされました。
お年寄りが働く背景にはいろんな問題があったり、社会の構造とか難しいことを言い始めるときりがありませんが、純粋にその行為に感謝しなければという思い。
そんな異文化交流いっぱいの旅の終わりは、京都で世界遺産散策。建築技術のすばらしさ、日本のわびさびを満喫し、さて、帰国前に何が食べたい?富山、金沢あたりで海の幸を食べ尽した彼らの答えは…。
「京都に来たなら、なんといってもKOBE 牛だろう!」。
ん~。神戸牛は京都でなくて神戸では?(松坂牛とか近江牛もあるよ)と思いながらも、外国人にとっては日本=神戸牛なのですね。
あたりを見回すと、KOBE Beef という看板につられて店に引き込まれていく外国人が…。でも、「え~、無理!」というお値段。すごすごとランチは黒毛和牛セットで甘んじた(?)のですが、「やっぱりKOBE 牛を食べないと帰れない!」と、なんと昼も夜も肉という最終日と相成りました。
京野菜の天ぷらとかお豆腐とかが食べたかったんだけどなぁ~。
Cambodia Joho Service 代表/日本カンボジア通訳翻訳家
神奈川県出身。在カンボジア歴、足掛け25年。
翻訳、通訳のほかカンボジア関連のアレンジやコーディネートを手がけることも。
仕事に追われつつも、大好きなビールは絶対に欠かさない。
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