2003年のNyoNyum創刊当初から連載している「ボンユキエッセイ」。カンボジアに長年住むと街の移り変わりが見えてくる。
おもしろくもあり、どこかもどかしくもある。
通訳、翻訳、会社経営に奮闘中のボンユキこと山崎幸恵がおくるカンボジアあれこれ。
今回は日本での研修の通訳を務めた際にあったお話です。
ボンユキの自分研究?
先日、日本で約1 か月にわたる研修の通訳の仕事をしました。
カンボジアの研修員が日本の講師から、何やら小難しい学問の指導を受けて、彼らなりにそれをカンボジアでどう教えるかを考えるという作業のために、指導のお手伝いをする。
通訳者として20 年働いていますが、この分野は初めて。さてさて、どんな状態になるかと意気込んで臨みましたが、いやはや、相当ハードな仕事となりました。
なぜって、指導内容がとってもロジカルで、とにかく深い。
さらに、当初担当する予定だった分野以外のグループの通訳もカバーすることになり、こっちの分野だと思ったら、次はあっちの分野と渡り歩き、えっと、こちらのグループはこれまで何の話をしていたんだっけ…と混乱するのに加え、それぞれの内容が本当にディープすぎ! 1 日終わるたびに、頭の回路がショートしている感じでした(苦笑)。
日が経つにつれて慣れ始めると、今度は自分の置かれている状況を客観的に見られるようになり、「もしかして私って、今、ものすごい状況の最中にいるのでは?」と考えが巡る。
何って、図にして解説するとこんな感じ。
日本人講師→(input)私(output)→カンボジア人受講者
まずこちらの流れでいうと、私は日本人講師から新しい知識をinput される。
そこには私が「学ぶ」という作業があり、にわかに「学んだ」その情報をすぐさま受講者に「教える」という行為をしながらoutput しなければならないのです。
しかも日本語→クメール語という転換も伴う。
そして次に、
カンボジア人受講者→(input)私→(output)日本人講師
となるわけですが、カンボジア人受講者はたいてい講師がinput した(私がoutputした)内容を呑み込めていない。
なので、最初の→に時間を要する。
その間に私は彼らの理解を促すfacilitate(内容理解の促進)という作業をしなければならず、「彼らが、何がわかっていないのかを解る」ためにいろんな角度から話をしたり、彼らの考えていることを聞き出したりして、それを講師にoutput する必要があるのです。
これって、なんだかすごいことじゃない?
休憩時間に講師と話しながら、いったい私の頭の構造はどうなっているのだろう、となり、これを研究テーマに論文でも書いて、学会発表とかできないかしら、という壮大な野望が広がってしまった。
どうでしょう。
どなたか、私の研究の指導教授になってくれる人はいませんか~。
Cambodia Joho Service 代表/日本カンボジア通訳翻訳家
神奈川県出身。在カンボジア歴、足掛け25年。
翻訳、通訳のほかカンボジア関連のアレンジやコーディネートを手がけることも。
仕事に追われつつも、大好きなビールは絶対に欠かさない。
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