2003年のNyoNyum創刊当初から連載している「ボンユキエッセイ」。カンボジアに長年住むと街の移り変わりが見えてくる。
おもしろくもあり、どこかもどかしくもある。
通訳、翻訳、会社経営に奮闘中のボンユキこと山崎幸恵がおくるカンボジアあれこれ。
今回は今、日本カンボジアで話題の「本田」に関してのお話です。
本田のことが知りたいの!
総選挙が終わり、日本のメディアがこぞってカンボジアの民主主義に憂いを表した記事を出し、このままじゃカンボジアのイメージが大きく崩れるよなぁと思っていたそのころ、電撃的なニュースが世界を駆け巡りました。
そう、「本田圭佑がカンボジアのサッカーナショナルチームの事実上の監督に就任!」というあのニュース。誰もが驚き、そして注目し、私は、あぁこれでカンボジアにも明るいイメージが広がったわね、とひと安心。
その舞台裏に対してもいろいろ憶測が飛び交っているようですが、9 月10 日のマレーシア戦は私もお茶の間で応援してました。が、実は現在大量の翻訳やら校正やらの真っ最中で、試合は前半しか見られなかったのですが(後半で負けちゃいましたね…)、とにかく早くこの仕事を終えたいと、それはそれは必至な毎日を送っているのです。
その一つに、農業テキストの翻訳校正の仕事がありまして。農業というのはやはり文化だけあって、特に稲作はクメール語にも独特の専門用語があります。
通訳駆け出しのころに農業調査、畜産調査などで農家を訪れて聞きかじった言葉や、稲作資料の翻訳で調べた単語を、脳の奥の引き出しをほじくり返し、どうにか校正を進めていたところ、ちょっと疑問が。
「“ なえしろ」で育てた苗を「ほんでん」に田植えする” みたいな表現があり、訳出で本来は「ほんでん」というところに「なえしろ」と思われる単語が使われていたのです。
あれ?これって違うよね、「ほんでん」ってすなわち本当の田んぼのことだよね、と私も曖昧になり、早速調べてみよう!とネットで検索。期待をもってアップされる画面を見ていると…。
トップに出てきたのは「本田技研工業株式会社」。次に「本田圭佑」…。おいおい、違うってば。「ほんでん」が知りたいの!「ホンダ」も「本田」もよく知っているから、「ほんでん」を教えてよっ! そりゃあ、「ほんでん」と打てば「本田」と変換されるけど、だからってあなたは私に本田(ほんでん)ではなく本田(ほんだ)を教えるってどういうこと?! と、一人夜な夜な検索エンジンに突っ込む私。技術が発達しているこの世の中、「ほんでん」と入力して「本田」と変換されたとしても、本田が知りたいときは「ほんだ」と入力するのだから、最初に入力した通り「ほんでん」の回答をいただけるような、そこまで技術レベルを上げてもらえませんかぁ。
で、気を取り直して「ほんでん」とひらがなで検索すると、飲食店「ほんでん」とか、なんだかわけのわからない検索が出てくる…。
はい、そうですか。で、次に「本田 ほんでん」と入力して検索。ああ、ようやく出てきた…。
1 苗代で育てた稲の苗を、本式に植えつける田。
2 荘園制で、新開田に対して、もとからあった田。
3 江戸時代、新田に対し、旧来の田。また、享保11 年(1726)の新検地条目で、元禄年間(1688 ~ 1704)以前に検地され検地帳に記載された田。(デジタル大辞泉の解説より)
ああ、よかった。よかった。(ちなみに、今回私が使った検索エンジンに限っての問題のようです)
Cambodia Joho Service 代表/日本カンボジア通訳翻訳家
神奈川県出身。在カンボジア歴、足掛け25年。
翻訳、通訳のほかカンボジア関連のアレンジやコーディネートを手がけることも。
仕事に追われつつも、大好きなビールは絶対に欠かさない。
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