2003年のNyoNyum創刊当初から連載している「ボンユキエッセイ」。カンボジアに長年住むと街の移り変わりが見えてくる。
おもしろくもあり、どこかもどかしくもある。
通訳、翻訳、会社経営に奮闘中のボンユキこと山崎幸恵がおくるカンボジアあれこれ。
今回はクメール語での呼び名に関してのお話です。
ボンユキ改名!?
9 月末から11 月にかけて、出張が3本続き、日本とカンボジアを3 往復したボンユキです。国際線なのにまるでドメスティックフライトか、いっそのこと日本とカンボジアをくっつけてくれればこんなに移動しなくて済むのに(?)と、思考が支離滅裂になるほどドタバタでした(苦笑)。
さて、これらの仕事は、16 ~ 18 歳の青少年たちを引率する仕事だったのですが、若い子たちに囲まれてみなぎ
る生気をいただいて、若返られるかと思いきや、なんのその逆でどんどん生
気を吸われていく日々でした。
一番のショックが、子供たちの「ボンユキ」の呼び方という大問題。「ボンユキ」はクメール語のបង ボン:お兄さんとかお姉さんに対して付ける言葉)に私の名前のユキを付け、「ユキねえさん」という意味となります。
これまでの同様の仕事の時は、自己紹介の時に「ボンユキ」と呼んでね、と付け加えてきたのですが、さすがに16 歳の子供たちを目の前に、私を「ユキねえさん」と呼ばせるのは忍びなく…。さて、どうしようと悩んだのです。
彼らから見たら私はもはやបង ではない。となると、やっぱមីង(ミン:おばさん)でしょうかねぇ…。でも、クメール語ではមីង は自分の両親よりも年下くらいの人を呼ぶときの言葉。彼らのご両親って、やっぱり私より年下でしょう。どう考えても。そうなると、なんとも恐ろしい、自分の両親よりも年上の人に対して付けるអ៊ុំ(オム)でしょうか…。やっぱり。
9 月末から始まった最初の仕事では、あえて自己紹介で「〇〇と呼んでね」とは言わずにスルーしようと試みましたが、なんと子供たちからは「អ៊ុំ、អ៊ុំ」と呼ばれて、仕方なく反応してしまいました。ああ、なんだかしっくりこない。
こういうのって語感の問題なのだと思いますが、カンボジア人からすればこういう年齢差(彼らと私の)に対してきちんと礼儀をもってអ៊ុំと呼んでいるわけです。わかってはいるものの、なんだか悲しい。ああ、私の「ボンユキ」の時代も終わりか。改名しなきゃならないかな。
でも、2 本目の仕事は日本人の子供たちの引率だったので、彼らは「山崎さん」と呼んでくれました。そして3 本目のカンボジア人の引率で、最後の抵抗をしてみました。
そう、私のこの悩みを解消してくれる言葉があったじゃないか! それは…( ネァックルー:先生)年齢も考えなくてよいし、子供たちからしてもអ៊ុំと呼んでいちいち私から嫌な顔をされずに済むし(笑)、お互いいい関係でいられる素晴らしい単語です! いやぁ、ユキ先生。なんかいい響きだしねぇ。
ということで、これからはボンユキか、ネァックルーユキで生きていこうと思う、ボンユキでした。
Cambodia Joho Service 代表/日本カンボジア通訳翻訳家
神奈川県出身。在カンボジア歴、足掛け25年。
翻訳、通訳のほかカンボジア関連のアレンジやコーディネートを手がけることも。
仕事に追われつつも、大好きなビールは絶対に欠かさない。
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