2003年のNyoNyum創刊当初から連載している「ボンユキエッセイ」。カンボジアに長年住むと街の移り変わりが見えてくる。
おもしろくもあり、どこかもどかしくもある。
通訳、翻訳、会社経営に奮闘中のボンユキこと山崎幸恵がおくるカンボジアあれこれ。
今回は今年でカンボジア滞在25年目に突入したボンユキ自身のこれまでのカンボジアに対する想いのお話です。
四半世紀に突入!
2019 年がやってきました。昨年は通訳20 周年、会社創立& ニョニュム創刊15 周年、ニョニュムショップ10 周年という公的な区切りの年でしたが、今年は私の個人的な区切りの年。カンボジアの地に足を踏み入れてから今年で25 周年を迎えます。
石の上にも三年、十年ひと昔、と言いますが、25 年は四半世紀。ん~。なんとも感慨深いものです。カンボジアの25 年の移り変わりを見てきました。
1994 年当時、プノンペンの人々の顔は暗く、隣にいる人を信じられないといった雰囲気が漂っていました。そしてその人々の声を聞くたびに、私には「ため息」が混ざっているように感じられました。
「自分たちの祖先がアンコールワットを創った、すごいねって言われるけど、本当なのかな。この国の今を見ると、どこか違う国の話じゃないかと思ってしまう。そしてこれから先、僕たちはどうなっていくのかもわからない。不安で、そして自信がない」
プノンペン大学のクラスメイトの言葉を聞いて私は驚き、「将来のカンボジアを支えていく若者が自分の国に誇りを持てないのでは、いくら外国人が援助を持ってきてあれをやれ、こうしろ、と言っても押し付けでしかない。彼らがやる気を起こし、自分の国を誇りに思うように支えていく。それが、私がすべきことなのでは」と思ったのです。
そして「自分にできること」の一つとして、このニョニュムという雑誌を生み出しました。彼らの国の笑顔(ニョニュム)を伝えることで、それを読んだ外国人が自分の国を理解してくれる、もっと自分の国のいいところを発見して伝えたい、と思うことで自分の国を見つめ直し、自信を持てるようになるのでは。そんな思いからです。
25 年。彼らがアンコール時代のことをピンとこない、というように、私にも25 年より前のカンボジアのことはよくわかりません。でもその歴史の流れの中に自分が身を置いているのだということは確かです。
だからこそ、その過去に思いを寄せ、今を共に生き、そして一緒に将来を描いていく。これからもそうありたいと思います。
それを具現化したのが、私が描く「ニョニュム」という雑誌です。
「ボンユキ、ボンユキ」。そう呼ばれるたびに、言葉と一緒に彼ら、彼女らの心の声が聞こえてきます。
それをこれからも、通訳者として、ニョニュムや各種メディアを通じて、そしてニョニュムショップという場を通して、皆さんに伝えられたら。そう思います。
Cambodia Joho Service 代表/日本カンボジア通訳翻訳家
神奈川県出身。在カンボジア歴、足掛け25年。
翻訳、通訳のほかカンボジア関連のアレンジやコーディネートを手がけることも。
仕事に追われつつも、大好きなビールは絶対に欠かさない。
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