Elder Krong Yong’s Cave and Stone Field
Elder Krong Yong’s Cave and Stone Field
2018.03.22

2月10日に発行したカンボジア現地情報誌NyoNyum 93号内の特集記事をWEBでも紹介♪


カンボジア昔話④
「長老クロンヨンの洞窟とストーンフィールド」
●ラタナキリ州・クルン族に伝わるお話●

 

 

むかしむかし、ラタナキリ州のクルン族が暮らす山岳に、石がゴロゴロと転がる不思議で平らな一帯がありました。ジャングルの中でそこだけ木々が生えず、ぽっかりと開けた空間が広がっているのです。

この場所の近くの洞窟に、クロンヨンと呼ばれるこの地の長が暮らしていました。彼の暮らす洞窟には小川の水が流れ込み、寝室には石のベッドがありました。彼は不思議な霊力を持っており、雨や風、雲や太陽を自在に操って天気を変えることができました。


クロンヨンはあらゆる物を持っていました。クルン族の人たちは、皿やつぼ、狩猟の道具やお祭りの楽器などが必要な時はクロンヨンの所に借りに来ていました。そしてクルンの男女が結婚するときはハネムーンとして、クロンヨンの部屋に7日間泊まりに来るというしきたりがありました。新郎新婦の両親は7日分の食料を持たせ、新婚の2人はここで寝食を共にするのです。その間、クロンヨンはどこか別の所で過ごします。

時が流れ、クロンヨンは老齢で他界しました。クルンの人たちは死者を火葬にするのですが、不思議なことにクロンヨンの体はいくら薪をくべても上半身が焼けずに残ってしまいます。これも彼の体に残る霊力のせいなのでしょうか。さらに3日間火を絶やさずにし、やっとクロンヨンの火葬を終わらせることができました。

クロンヨンはもういません。これまで度々クロンヨンの所に必要なものを借りに来ていた村人たちは、次第に借りた物を洞窟に返しに来なくなり、ついには洞窟の物は一切なくなってしまいました。またある時、プレイボーイの男が婚姻関係にない女を洞窟に連れ込み、いやらしいことをしていました。

クロンヨンは霊となってこうした状況を見ていました。そして村人の秩序の崩壊に強く憤り、突然洞窟の石の天井を落としてしまいました。こうしてその場所はぽっかり開けた一帯、通称“ストーンフィールド”ができたそうな。<おしまい>

 

 

お話の舞台を訪ねよう

カンボジアの北東端にある山間の州、ラタナキリは山に息づく少数民族の文化、手つかずの自然に彩られたエコツーリズムの人気スポット。クルン族のほか、トンプーン族、ジャライ族、プラウ族、カチョ族など複数の山岳少数民族がそれぞれ独自の言語や文化を持って暮らしている。その多くは昔ながらの生活様式を維持しながら森の中で生活し、精霊を信仰する民族も多いというから、こんな話が語り継がれているのもうなずける。州都の中心部を少し離れると、竹カゴを背負って山道を歩く山岳民族の人々、竹を編んだ家壁の住居、民族独特の柄が織り込まれた布など、その生活や文化を垣間見ることができる。

この話に出てくるクルン族には、クロンヨンの洞窟ではないが、結婚適齢期の男女が2人きりで過ごすための小屋を建てる習慣があるそうだ。そしてストーンフィールドや崩壊した洞窟は、州都バンルンから北へ約十数キロの所に現在も存在する。長老クロンヨンの霊も今もそこに息づき、人々の暮らしを見守っているかもしれない。

 

ACCESS

プノンペンから
州都のバンルンまでは約590キロ、車で約10時間かかり、バス会社からラタナキリ行きのバスも出ている。国道7号線をコンポンチャム、クラチェを通って北上し、ストゥントレンから国道78号線に入って西へ進むと州都バンルンに到着する。ストーンフィールドへは街中の旅行会社やホテルの手配するツアーや車、バイクタクシーで行くことができる。

 

~土地に伝わる話を探して~
 

今回紹介したお話、じつは日本の団体「一般社団法人ホワイトベース」が集めたもの。カンボジア各地を訪ね歩き、土地に伝わる昔話を聞き取って物語にまとめる「カンボジア民話発掘・保存プロジェクト(CAMBODIA FOLKLOREARCHIVE)」という活動を行っている。同団体の代表を務める石子貴久さんに話を聞いた。「この活動を始めたのは2012 年頃。本屋をのぞくといくつか児童用の絵本はありましたが、多くは近隣諸国の昔話やどこかの童話のリメイク版のようなもの。“カンボジアの昔話” と言えるオリジナルの話は少ないのが現状でした」。そこで、まだ口頭伝承でしか伝えられていない地方の民話、伝説、昔話などを土地の老人にヒアリングし、絵本化することを思い立ったという。各地を訪ね歩くと、地元では有名でも全国的には知られていない、その土地の歴史や文化、風土に根ざした話に出会えた。聞き取った話をまとめたら、自ら絵を描いて紙芝居に。日本の若者たちといっしょにカンボジアの小学校を訪れ、地元の子供たちといっしょに絵に色をつけて紙芝居を上演する活動も行っている。「当初から比べると、最近ではカンボジアの本屋にもいろんな本が並ぶようになりました。私たちの団体が集めた各地の話もそこに並ぶのが目標です。昔話の発掘、伝播活動を通してカンボジアの文化復興にも貢献できたら」と語る。

※その他の活動詳細はこちら

 

<NyoNyum No.93特集「カンボジアの昔話」>

●シェムリアップ州・プノンクロムに伝わるお話●
カンボジア昔話①「将軍ハヌマーンと逆さの山」

●クラチェ州・メコン川に伝わるお話●
カンボジア昔話②「隠れてしまったメコン川のイルカ」

●コンポンスプー州・ウドン山に伝わるお話●
カンボジア昔話③「龍の洞窟とウドン山の大仏」

●ラタナキリ州・クルン族に伝わるお話●
カンボジア昔話④「長老クロンヨンの洞窟とストーンフィールド」

 

にほんブログ村 海外生活ブログ カンボジア情報へ
にほんブログ村 旅行ブログ カンボジア旅行へ

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

関連記事
おすすめ記事