日本人にとって特に盛り上がる世界的なスポーツの大会といえば、やっぱり4 年に1 回開催されるオリンピックだろう。毎回、開催時期にはテレビや新聞など報道もオリンピックムード一色となる。一方、カンボジアでは「あれ、今オリンピックやってるの?」と、下手したら開催にすら気づかず過ごしてしまうほどの注目度。それも仕方ないのかもしれない。カンボジアにとって世界の強豪が集まるオリンピックでよい成績を残すのは難しく、国民の関心も集めにくいのだ。
SEA Games は“東南アジアのオリンピック”
そんなわけで注目したいのが、“東南アジア版オリンピック” と称されるSEA Games! 正式名称を「Southeast Asian Games(東南アジア競技大会)」といい、2 年ごとに開催される国際総合競技大会だ。実力の拮抗する国同士が対戦するため、白熱した戦いとなる。もちろんカンボジアの活躍も大いに期待できる。前回の2015 年大会を含め、過去の大会ではいくつもの競技で複数のメダルを獲得、上位入賞を成し遂げているのだ。大会を主催するのは東南アジアスポーツ連盟(South East AsianSports Federation:略称SEASF)。“東南アジアの友好・理解・平和”と“オリンピックムーブメントの振興” を目的として、1959 年に東南アジア6 カ国の参加で始まった。カンボジアは1961 年の第2 回大会から参加している。初めての自国開催が2023 年に行われることも決定し、カンボジアではますますSEA Games への関心が高まっている。
第29回SEA Gamesの開催地はクアラルンプール!
29 回目となる今回のSEA Games は、マレーシアのクアラルンプールで開催される。会期は8 月19 日から8 月30 日まで。今回行われる全38 競技のうち、カンボジアは24 競技に総勢179 人のアスリートが挑む予定だ(※カンボジアオリンピック委員会(NOCC)、7 月16 日発表)。
かつての日本の指導者が繋いでくれた不思議な縁
大学時代まで水泳選手だった生山咲さんは、2016 年からカンボジア水泳ナショナルチームとユースチームを指導している。「ネアックルー(先生)、今日は何の練習?」。選手たちが生山さんのもとに生き生きした表情で寄ってくる。コーチの生山さんを信頼し慕っているのが伝わってくる。さかのぼること50 年。1966 年1 月、カンボジアに派遣された水泳指導者がいた。青年海外協力隊、初代隊員の中村昌彦さんだ。そしてその教え子だった元水泳選手のハェム・トンさんは、内戦の混乱が続く80 年代に水泳の復興に取り組んだ。水泳連盟を立ち上げ、選手の育成を始めた。やる人がいないなら、とまずは自分の子どもたちに水泳を教えたという。2015 年1 月12 日に亡くなるまで、カンボジア水泳に貢献し続けた彼の最期の願いが、日本からの水泳指導者の再派遣。その要請を受け、青年海外協力隊の水泳隊員として派遣されたのが生山さんだ。奇しくもハェム・トンさんのちょうど一周忌にあたる2016 年1 月12 日にカンボジアに降り立った。まるで導かれたような偶然に「天国のハェム・トンさん、中村さんに“俺たちが見守ってるから、おまえはとにかく全力でやれ!” と言われてる気がする」と使命感を感じながら、全力で指導にあたっている。
計画的なトレーニングで選手たちがどんどん成長
生山さんは自身の競技人生で得た経験を生かした計画的なトレーニングを実施。まずは毎回5 ~ 7 キロの長い距離を泳ぎ持久力をつける。次に重い負荷をかける期間に移行。とにかく何本も“全力で”泳ぐ。これは相当キツイそうだが、選手たちは必死で乗り切ったそう。そして実際のレースを想定した練習を経て、最後にレースに向け負荷をかけ過ぎない調整期間を設ける。これまで経験したことのない過酷な練習にもくらいついてきたカンボジアの選手たちは、短期間でメキメキと力をつけ自己ベストをどんどん更新しているという。今回のSEA Games に出場するのはハェム・トンさんの息子ポンルー選手、孫娘ヴィティニー選手を含む男女7 名。かつての指導者と選手がつないだ水泳の歴史をさらに前へ! 決勝進出を目指す。
カンボジア水泳代表メンバー紹介
<NyoNyum90号特集「飛翔せよ!、カンボジアのアスリートたち」より>
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