つないでいきたい“おふくろの味”(パパイヤの漬物売り)
つないでいきたい“おふくろの味”(パパイヤの漬物売り)
2019.07.12

人は食うために働く。カンボジア人のそんな姿を切り取るニョニョムでおなじみのコーナー

「カーロッシー(食いぶち探し)」。今回はプノンペンでパパイヤの漬物売りをしているソポルさんを取材してきました。

カーロッシーとは?


生活情報誌NyoNyumで長年人気を誇るコーナー「カーロッシー」。

人は何のために働くのか。

カンボジアの人々の答えは明快、「食うため」。

彼らは、働くことを「カーロッシー(食いぶち探し)」と呼ぶ。汗と涙を流しながらも、日々淡々と行われるその営みを紹介する。

 

つないでいきたい“おふくろの味”

路上にあるソパルさんの漬物屋では、バイクに乗ったまま購入していく人が多い

カンボジアは、日本と同じく発酵食文化が非常に豊かな国だ。

発酵した淡水魚のペースト「プラホック」、発酵した小エビやアミのペースト「カピ」など、どれも外国人からすると最初は独特の臭いに慣れないが、いつのまにかその深い味わいに病みつきになってしまう、なんとも言えない中毒性がある。

カンボジアの自然と気候によって生み出された発酵食品を使った料理の数々は、まさにカンボジアのソウルフードと言える。

プノンペンの路上に大きく広げたパラソルの下で、トーイ・ソポルさん(50)が売っているのは、“マムルホン”と呼ばれるパパイヤの漬物だ。塩と米で魚を乳酸発酵させた「マム」に、パパイヤを数日間漬け込んで作る。

ソポルさんの漬物は、おいしいと近所で評判だ。

 

50歳手前で思い切って転職

看板商品のパパイヤの漬物は、ソパルさんにも常連客にとっても慣れ親しんだ母の味

 

ソポルさんの経歴は少し変わっている。もともと約20 年もの間、医療機器販売会社で総務の仕事をしていた。

それが、一念発起して2018 年1 月にパパイヤの漬物販売を始めることにする。

当時の年齢は49歳。妻も3人の子どももいる。

家庭を持ちながらの50歳目前にしての転職、しかも自ら商売をするとなKeeping Mother’s Flavors Alive つないでいきたい“おふくろの味” を売るとかなり勇気がいったはずだが、ソポ ルさんは「この商売以外に考えられなかった」と笑顔で話す。

その大きな理由は、年老いた母親にあった。

ソポルさんの母親はずっとパパイヤの漬物売りをしていたが、高齢になり、体力的にしんどくなって店を閉めようとしていた。

すると、その噂を聞きつけた常連客から閉店を惜しむ声が相次いだ。

そしてそれは、母親が作る漬物の味で育ってきたソポルさんにとっても同じだった。

そこで、母の味を守ろうと、家業を継ぐことを決心したのだという。

 

おふくろの味を見事に再現

少し甘めに漬けた大根の漬物も人気

パパイヤの漬物は1 キロ15,000 リエル(約3.75ドル)、店では1 袋2,000 リエル(約0.5ドル)から販売している。

1日の売り上げは5 万リエル(約12. 5ドル)ほど。

まだ小さな子どもを3 人も抱えるソポルさんにとって決して収入が多いとは言えないが、自らの選択には満足しているという。

「私にとってパパイヤの漬物は実際のおふくろの味ですが、長年通ってくれている常連客のお家でも、私の母の味が家の味になっている。その味を今は自分が生み出しているなんて、すごく光栄なことだと思います」

高菜の芯の部分だけを使った漬物

 

この記事を書いた人:UON Chanra

ニックネーム:チャンラ
NyoNyum Magazine Designer
ウドン出身。2016年入社の26歳。日本とカンボジアを繋ぐ雑誌NyoNyum、日本のことをカンボジア人に紹介するNyoNyum Khmerのデザイナー。たまに記事も。現在、デザインと日本語を日々、勉強中。好きな日本語は「なんでしょう」「そうですね」。趣味はFacebookに奥さんとのラブラブな写真を投稿をすること。

 

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