人は食うために働く。カンボジア人のそんな姿を切り取るニョニョムでおなじみのコーナー
「カーロッシー(食いぶち探し)」。今回はプノンペンで路上の鍵屋をしているチュム・サ
リットさんを取材してきました。
カーロッシーとは?
生活情報誌NyoNyumで長年人気を誇るコーナー「カーロッシー」。人は何のために働くのか。カンボジアの人々の答えは明快、「食うため」。
彼らは、働くことを「カーロッシー(食いぶち探し)」と呼ぶ。汗と涙を流しながらも、日々淡々と行われるその営みを紹介する。
鍵屋にも時代の波。常に知識をアップデート
器用に新しい鍵を作っていく
カンボジアの生活で鍵は欠かせない。泥棒が多く、防犯のために家の門扉には南京錠、そして玄関扉にも通常のドア鍵に加え南京錠で施錠をするのが一般的だからだ。
ただ、鍵の多さゆえ、失くしたり、住人が増えたりしたときに鍵のスペアを作る必要性が頻繁に出てくる。
だから、市場の近くや大通り沿いなどで屋台のような店構えの鍵屋をすぐ見つけることができる。
コンポンチャム州出身のチュム・サリットさん(31)=写真=は、プノンペンで鍵屋をして3 年。もともとは電気工として働いていたが、自分で商売をしたいと2015 年から鍵屋を始めた。
電気工をしていただけあって、手先が器用だったサリットさん。
少し勉強しただけで鍵作りができるようになったそうだ。
「鍵屋を選んだのは、小さい頃からものづくりに興味があったからです。
鍵作りは、何年も修行が必要というほど難しくもなく、かといって誰でもできるような簡単な技術でもないことから、やってみようと思いました。
カンボジアで鍵屋は生活に密着したサービスなので、必ず需要があるとも思いました」と鍵屋を始めたいきさつを教えてくれた。
プノンペンの路上にあるサリットさんの作業場
サリットさんは、家の鍵、南京錠、バイクや車の鍵などなんでも作る。
料金は家の鍵なら1 本1 万リエル( 約2.5 ドル)から。
車の鍵だと少し上がって3 ~ 4 万リエル(約7. 5 ~ 10ドル)になる。
家に呼ぶ場合は距離に応じて出張費を取っているそうだが、近場なら鍵代のみで無料で対応することも。
迅速に対応することをモットーに続けてきたおかげで常連客もつき、1 日に20 ~ 60 ドルの収入があるが、日によっては15 ドル程度にしかならないこともある。
なかなかの売上に思えるが、材料費に1 日約15 ドル、仕事場の賃料で月100 ドルかかっている。
「収入には今のところ満足していますが、もっと頑張って稼ぎたいと思っています。それには勉強をしないと…」。
そう語るのには理由があった。
「車やバイクの鍵は以前と変わり、形も複雑になってきています。でも、それにも対応するために常に勉強を重ねています」。
さらに、最近はもう1つの脅威が。「車は電子キーが流行り始めています。そうなると、自分の出番はなくなってしまいますね。違う技術になりますから」。
今では弟子をとるまでになったサリットさんだが、時代の波を感じて少し焦りもある。
カンボジアでは廃れることのないと思われた商売も、少しずつ変化が訪れているようだ。
ニックネーム:チャンラ
NyoNyum Magazine Designer
ウドン出身。2016年入社の26歳。日本とカンボジアを繋ぐ雑誌NyoNyum、日本のことをカンボジア人に紹介するNyoNyum Khmerのデザイナー。たまに記事も。現在、デザインと日本語を日々、勉強中。好きな日本語は「なんでしょう」「そうですね」。趣味はFacebookに奥さんとのラブラブな写真を投稿をすること。
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