「ニョニュム」愛読者の皆様も、初めて手に取られた皆様も、等しくどうもありがとうございました。残念ながら、今回で最終回。なんだかんだと2 年も暮らしたカンボジアです。かっこよく、国家や国民を語って締めたかったのですが、歯が立つようなテーマじゃありません。代わりに、心に残ったクメール人の3つの言葉を、自分なりの解釈と一緒にご紹介します。
「政治を語らない風潮が息苦しい。日本にカンボジアの政治を変えてほしい」(ある大学生)
プノンペンは、経済成長の恩恵であふれていて、若い人たちは、その最大の受益者。でも、出る杭にならぬよう、政治についての議論をタブー視する空気が漂っているのかもしれません。その善し悪し以前に、ひっかかるのは、そうした不満を外国に変えてもらいたい、と考えること。自分の国の未来は自分の手で切り開かなければ。外国の干渉を許し続けた歴史を思うと、ちょっと不安を覚える言葉でした。
「独立したてのシンガポールはプノンペンを視察して都市計画の参考にしたんだよ」(ある大学教授)
1970 年の軍事クーデターまで、着実に発展し、優雅な文化を誇っていたカンボジア。特にプノンペンは世界的に価値のある近代建築物がいくつも造られました。長い内戦の間、フランス保護国時代のコロニアルな町並みとともに放置され汚れてしまいましたが、よく見ると都市としての機能はとっても高い。最近はこうした建物がおしゃれなカフェやレストランに改装されて、観光地としての魅力はアップしています。もう少しすると高層建築に代わってしまうでしょうからこそ、今が旬。シアムリアップとは違った異国情緒をたっぷり味わってみてください。
「僕の上司は無能。だからって反論なんかしない。意見なんて言ったら盾突くことになっちゃうよ」(ある若手官僚)
あーでもないこーでもないと上司の考えを想像して対処するのが日本流。対して、ここでは怖い上司とか難しい案件とかだと怒られるから、聞かなかったふりをしたり勝手に処理したり。それって最終的には上司を大事にしていないんじゃないの、と思いながらも、親や目上の人を大事に敬うところは、古き良き日本のようで素直に好感が沸きます。
(「ノロドム通りNo. 194」は今号をもって終了いたします。ご愛読ありがとうございました)
町田 達也(まちだ・たつや)
東京都出身。1971 年12 月1 日生まれの40 歳。1994 年外務省入省。2010年6 月より在カンボジア日本大使館にて総務、広報文化、人権などを担当。趣味は、他人のブログを読むこと、水泳。テレビ大好き。
2012.8-9月号(第60号)掲載
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