2015 年の重大ニュース! みなさんはどんな出来事がありましたか? 私はといえば、3 本の指に入る大きな出来事は、カンボジアで初めて行われた「日本映画祭」の翻訳です。大変な仕事だったけど、映画をあんな風に製作者の側から考えて読み込むことは、貴重な体験だったな、と思うのです。
クラッシックから最新作、ホラーからドキュメンタリーまで、全部で17タイトル。人生で、こんなに一気に映画を見たことはない。日本で映画館に行ったのは、東映まんがまつりで『ドラえもん』を見に連れて行ってもらったとか、小学校の時にグループ交際?で映画を見に行ったとか、そんな感じの記憶ばかり(笑)。中学は部活、高校はオーケストラ、大学はバイトで忙しく、カンボジアに来てからは、映画館はお化け映画ばかりで、やっぱり映画に触れる機会はなかった。強いて言えば、日本・カンボジア往復の飛行機の中くらいかな。
そんな私が映画の翻訳をするわけです。そして、改めて、映画の面白さを知ったのです。2 時間前後という決められた時間の中で、起承転結、それぞれの場面にいろんな意味があって、後の方になってさっきのあのシーンが関わっているのね、あの時のあのセリフがこの意味になるのね、なんてことを考えながら翻訳する。これは面白い。
2 カ月間で17 本の映画翻訳。ほぼ毎日映画を見続け、それも1 タイトルで通算5 回以上は視聴する。同じシーンを何度も何度も見たり、さかのぼって確認したり。そんなこんなで1 タイトル18 時間くらいかけて仕上がる。最初は面白かった翻訳も、次第に苦しい、辛い、寝たい、もうダメ~なんて、楽しめない。本人必死。そんな時に、ホラー映画が出現した。
ホラー映画、嫌い! 最初っから拒絶反応を示していた私ですが、仕事とあればやるしかない、見るしかない、翻訳するしかない。意を決して翻訳をする。ふむふむ。この霊はあの時主人公が言ったあの言葉を恨んでとり憑いているのね。霊には霊の事情があるのだなぁなんて、なんだか納得したり。それにしても1 人にあんなにしつこくつきまとうなんて、ちょっとひどすぎるよなぁ、なんて怒ったり。怖い怖いと思っていたホラー映画ですが、開けてみると怖いシーンはほとんどセリフがないので飛ばせる(翻訳しないので見なくて済む)し、意外に怖くないホラー翻訳でした。
そんなこんなで出来上がった映画祭も無事終了。「カンボジア人の笑うポイントが違う」とか、「けっこう受けていた」とか、「なんとか大臣が涙を流して見ていたよ」とか、いろいろな声をいただきます。私はすっかり体を壊し、声も出なくなり、マスクして、マフラーぐるぐる巻きにして、怖い顔して字幕をひたすら読みに行きました(笑)。
映画は仕事ではなく、娯楽で見に行くに限ります!!
2015.12-2016.1月号(第80号)掲載
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