これまで大使館のあれこれや心に残ったよしなしごとを書き連ねてきましたが、肝心なことが抜け落ちていました。そう、それは“私の仕事”。「参事官」という肩書きが付いているのですが、これは格付けみたいなもので、職務ではありません。
堅い言い方をすれば、「大使館が統一感をもって、迅速・的確に課題を片付けたり、成果を挙げたりできるように、目配りをすること」が私の役割。大それた響きですが、実情はあくまで地味です。
外部からの照会や要請をきちんと担当部署に振り分けて、フォローをお願いするのから始まり、公式書類のチェックや署名が続きます。滞ってるなと思ったら、会議を招集、それをてこに作業を促したり、他の部署と調整を図ったり。1 人に仕事が偏ったり過剰にならないよう気を配るのも大事です。
合間に東京と打ち合わせして、温度差を埋めることも欠かせません。大きなレセプションやらVIP の出張やらがあれば、日程の調整から予算の算段、体制づくりに担当の振り分け、といった作業もあります。
特に悩ましいのが職場内の意思疎通です。意外とお互いのことは分かっていないものですが、あらゆる情報を共有しすぎても、書類の山になって誰も注意を払わなくなります。サッカーにたとえればパス回しにあたるでしょうか。技術半分、チームスピリット半分で、これをどう高めていくかによって、スピード感やゴールの頻度が変わってくるのです。
つまりは、どの会社・どの組織でもやっている当たり前のことです。ただ、外務省のいろいろな仕事をこなした経験がなければ、正確で早い決断をして、その上でそれぞれの担当者に納得してもらうのは、やっぱり容易ではありません。
言い過ぎたのではないか、伝わっていないのではないか、の狭間をいつも行き来するばかりで、もやもや感が消えない、ザ・中間管理職。自分でやっちゃった方が早いよな、と思っても、1 人の力は絶対に組織力にはかないません。遠くプノンペンまでやってきても、私の現場はあくまで大使館。楽しくのびのびと仕事ができるように頭を悩ませる日々が続きます。
気づけばもう2年になりました。
町田 達也(まちだ・たつや)
東京都出身。1971 年12 月1 日生まれの40 歳。1994 年外務省入省。2010年6 月より在カンボジア日本大使館にて総務、広報文化、人権などを担当。趣味は、他人のブログを読むこと、水泳。テレビ大好き。
2012.6-7月号(第59号)掲載
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