当プロジェクトは9月末で一応の終結となります。皆、本当にがんばって技術を身につけたと共に、その技術で生活する展望も少しずつですが見えてきているのではないでしょうか。これからお話するのは、私が個人的に考える希望的観測です。
近い将来、今のメンバー全員はお互いに協力し合いながらですが、独立し先生として教える立場となります。ここが新しい陶器の産地として根付き始めれば、自分もやりたいと言う人は必ず現れます。その時に学校のような施設として、プロジェクトの仕事場を活用するのもいいでしょう。今ある窯は皆の共同窯として使用され、自宅にではなく、この敷地内に個人工房がずらりと並ぶのも面白いと思います。そうなれば制作風景を毎日どこかで見ることができ、直売店で購入ができる上に作った作者にも会える。
ここで作られた陶器でお茶のサービスでもできれば陶器の良さも伝えられる。おそらくコンポンチュナンで一番の観光名所になるのではないでしょうか。釉薬陶器の仕事が商売として忙しくなってきたら、個人的に人を雇ってもいいでしょう。そうすれば仕事量も増やせるし、必然的にその雇い人を弟子のように育てることになります。深く広く、そして継続することが大切なのです。私は釉薬陶器産業の先駆者となるであろうメンバー達に期待します。(本連載の私の担当は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました)
猿田さんは、千葉県市川市出身の44 歳。青森県五所川原市で陶芸家として活動しています。9 月まで素焼きの鍋で知られるコンポンチュナン州オンドン・ルッセイ村で、陶工たちに釉薬(ゆうやく)を使った陶器製造技術を伝える専門家として同州に滞在していました。村には、栃木県益子の国際陶芸協会の支援などで完成した登り窯があり、それを活用する形で日本財団の「カンボジア伝統陶器プロジェクト」が2009 年に開始されました。猿田さんは4 代目の長期滞在専門家です。
2012.10-11月号(第61号)掲載
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