クメールの水祭りはクメールの国家行事のひとつであり、首都プノンペンでは3日間連日で王宮前の広場で行われ、数百人の地方から人々が上京して賑わう。水祭りにはクメール式のカヌーレースや灯篭流し、お月見とオーク・オム・ボク(新米を炒った米を食べる)という風習がある。この行事は、カンボジア最大の行事でトンレサップ川とメコン川が合流した王宮前のトンレサップ川で国王のご出席のもとで執り行われる。米の収穫を祝うためにクメールの旧暦である11月の14日と15日の満月の日と次の陰暦の1日までの3日間祝われるのだ。新型コロナウイルス感染症の影響で3年間この行事が中止されていたが、今年は3年間ぶりの開催となった。 (今年の開催日は11月26日~28日)
クメールの水祭りの歴史の由来は、国内・外国家祭典委員会によると、次のような由来があるという。
カヌーレースの由来:
王宮前のトンレサップ川でカヌーレースが行われる
クメールのカヌーレースイベント開催はアンコール王朝時代に由来がある。この伝統的な祭りは、アンコール時代、特に12世紀の後半頃アンコールトムを設立したジャヤヴァルマン7世の統治時代に、隣国のチャンパ王国からの水上の侵略を防衛するために、カヌーの訓練を毎年行されてきたことが起源だ。このカヌーレースの行事がジャヤバルマン7世王の出席のもとで行われ、その様子がバイヨンとバンテアイチュマー遺跡の壁に刻まれたため、それが今のカヌーレースにつながっているという説がある。
時代が経て行くと、16世紀前半のロンヴェク時代にはアン・チャン1世王がクメールの水軍を3つのグループに組織し、3種のボートにより水上戦の訓練を行っていたという記録がある。このような説から水祭りのカヌーレースとしてクメール人が代々受け継いできたともいわれる。
灯篭流しの由来:
水祭りの3日間、日が暮れると政府機関の各省庁が用意した灯篭が王宮前のトンレサップ川に優雅に漂う
カンボジアでは雨季に降った雨がいろいろな川を通して最終的にトンレサップ湖に大量に流れ込み、氾濫が起こる(5月から10月まで)。そのお陰で、カンボジア全国の低地にはメコンの肥沃な土壌が蓄積され、氾濫した水が引いた乾季になると質の高い農地として生まれ変わるのだ。その豊かな自然に恵まれたクメールの農民が、豊富な農作物をもたらす自然の恩恵を神に祝うために、灯篭流しが行われたという。
お月見とオーク・アム・ボクの由来:
水祭りを祝うためにワットプノンで飾り付けられたお月見を象徴する神棚
クメールの聖典によれば、お月見とオーク・アム・ボクの由来は「ウサギに生まれた菩薩」の話から生じたという。その伝説は次のように語られた。「ある満月の日、仏様になりたいウサギがいつか自分が仏様になるように祈りをしていた。この願いを知ったインドラ伸は、そのウサギを試するために老人に変身し、ウサギに食べ物を求めにやって来た。ウサギは老人に自分の身を食べ物として食べなさいと伝え、老人に火を起こしてもらった。老人が火を起こすと、ウサギはすぐさま火の中に自分の身を飛じた。だが、驚くことに、ウサギの身は全く燃えなかった。それを見たインドラ神はウサギ(菩薩)を抱きかかえて、月の中心まで昇っていた。ウサギの菩提心を見たインドラ神は、ウサギの姿を月さまの中に刻んでほしいと祈り、これにより、今日まで月の中心にウサギの姿が見られるようになったという」。
この伝説を信仰しているクメール人は、毎年の11月の満月の夜にという菩薩であったウサギのために今年初めての新米を炒ったお米をバナナとココナツなどの他の農作物とともにお月さまに捧げて食べるという「オーク・アム・ボク」の儀式を行ってきたという。
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