実は1990年代から地方の薬草師・薬剤師の人たちをまとめる協会がある。昔から伝わり使い慣れてきたクメール薬草伝統治療は近代の社会発展と共に輸入されてきた海外の医薬品の台頭で、次第に人気が低下する一方であった。自国の伝統であるクメールの薬品の存在を保護するために、クル・クメール協会はどんな取り組みをしてきたのか、協会の会長であるヴェン・シーヌーン氏に話を聞いてみた。
Q:クル・クメール協会の役割を教えてください。
クメール・ルージュ政権後、生き残ったクメール薬草師を集めて伝統治療を再生する目的として、1994年に設立されたのがこの協会でした。現在は、協会には約100名のクル・クメールが会員となっており、クメールの伝統治療を復興するために研修や育成コースの開催、クメール伝統の薬剤の生産をしたりしています。薬草の薬剤師になるためには保健省が実施する育成コースで薬草のことを学び、それぞれの植物の効率性をちゃんと理解しないと、合法的なクル・クメールにはなれません。協会は保健省と連携し、研修のために地方に暮らしている会員を募ったり、専門家を派遣したりしています。研修に定期的に参加した会員、または育成コースを卒業できた人だけは保健省認定の証明書を持ったクル・クメールになれます。
Q:どうして先生のところでは薬草より薬剤を扱っているのですか。
カンボジアでは薬草による伝統治療は昔からあり、そのような薬草を利用するクメール人が多くいるなか、現在は薬剤師の団体が薬剤を勧めるようになっています。植物から作った薬草だと、薬草の原料である植物はたいてい半年程度で腐ってしまい、効果もなくなります。薬草の効果を長く保つために、粉にしてカップセルや粉薬のようにして容器で保存し、販売した方が良いのです。薬剤だと使用者にとっても手に取って使用しやすくなりますし、保健省にも認めやすくなっています。
Q:現在、クメール薬剤の評判はいかがでしょうか。
昔からクメール人が胃・腸の病気や、痔、婦人科関係の病気、肝臓病などの病気を抱える時は薬草で治療を望んでいました。それはクメールの薬草による治療を受けて病気が治癒した、その評判が昔から伝わっているからで、今日でも薬草の治療を選択するクメール人がまだまだいるのです。ですが現在では、経済と社会の発展と共に、海外からはさまざまな薬物の製品が流れ込み、西洋風の薬と治療を選択する人も少なくありません。その中で、海外からの薬の宣伝も現在フェースブックなどのSNSやテレビ番組、インターネットなどにあふれ、クメール薬剤に対する支持がさらに低下しています。例えば、我々クメールの薬剤師が提供する同じ効果を持つ(ប្រេងខ្យល់)コラピオイルという薬品を利用しないで、わざわざ海外の薬を高額で買う人が多くいたりと、無駄なお金を費やす市民の傾向がよく見られます。それはあまり良くないんですね。
メディアで宣伝された薬品のほうがよく、効き目が高いとは言えません。我々クメールの薬剤師が生産できる薬品も効果があるので、地元の薬品に現代のクメール人があまり価値を置かないことはとても残念なことです。
Q:最後の一言をお願いします。
現在、我々薬剤師は胃腸薬の他、タイカ―バムやコラピオイルのような薬品を国内生産できています。海外の物とほぼ同じ効果を持っているにも拘わらず、国内の消費者からはあまり支持を得られていません。海外薬品の宣伝にあまりにも信頼をしている消費者に、国内で生産できるクメールの伝統薬品の使用をお願いしたいのと、使用して効果が良いなら、是非評判を広めて頂きたいです。
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