内戦終息直前、言わば、1980年代以降生まれの今30・40年代のクメールの人々が求める幸福度と価値観とはどのようなものか。142人が回答してくれたアンケート調査の結果を見てみよう。
アンケート
職場の環境について:(何を重視しているか)
Q1: 職場で最も良いと思うことは?
1、良い同僚 21.4%
2、良い上司 22.9%
3、良い給料 29.3%
4、好きな仕事に就くこと 26.4%
5、その他( )
Q2: 仕事をやっていく上で最も大切だと思うことは?
1、仕事のエチケット(言葉遣い・マナーなどある) 25.2%
2、専門性 30.2%
3、正直など人格がよいこと 44.6%
4、その他( )
Q3: 会社・現職の福利厚生制度(ボーナス、残業手当、昇給など)に満足しているか。
1、とても満足している 59.2%
2、やや満足している 35.2%
3、満足していない 5.6%
Q4: 政府・会社の休暇制度は充実しているか。
1、充実している 63.1%
2、やや充実している 33.3%
3、充実していない 3.6%
解説:
職場の環境をどのように考えているかという設問に、良い上司と良い同僚より、良い給料を選択した人が約29%と一番多く、次は好きな仕事に就くことを(約26%)という回答だった。今までよく言われてきたことではあるが、カンボジア人はたいてい給料を条件に仕事を選ぶということがここに現れているのかもしれない。だが、自分が満足できる仕事に就くことが30~40代の間で重視されていることにも注目したい。一方で、仕事をする上で一番大事だと思うのは専門性よりも正直で人格の良いこと(クメール語の表現では人として良い人ជាមនុស្សល្អ)を重視しているというのも興味深い。また、現在の会社の福利厚生と休暇の制度についてはたいてい充実していると感じているようである。
職場と上司との関係について
Q5: あなたが上司に不同意であっても、上司の命令であればそれに従うほかないと思うか。
1、従う他ないと思う 39.7%
2、そうでもない 60.3%
Q6: 安定した生活を好むか、生活は不安だが可能性の多い生活の方を好むか。
1、安定した生活を好む 28.8%
2、不安だが可能性の多い生活を好む 71.2%
Q7: 個人の「独立性」と、従来からある人間関係の和を重視する「協調性」はどちらを好むか。
1、独立性 44.9%
2、協調性 55.1%
解説:
上司との関係をどう思うかという設問に、上司の指示・命令に不同意があっても従うという人の割合が低く(約40%)、従わないと思っている割合の方が高かった(約60%)ことにちょっと驚いた。一般的に、クメール人は目上の人に言われたことを素直にやるのが常識だったからだ。上司に従わないというその背景には、やはり外国投資による経済成長のなかで外国人の労働文化が浸透し、自己アピールの意識が育まれてきた結果であろうか。他方、安定している生活より、不安があっても30~40代の多くのクメール人が、自己の能力を活かし、可能性に挑戦しようという意欲(約70%)が強くあるようにみえる。独立性と協調性のどちらかという設問をしてみると協調性の方がわずかに(55%)多かったものの、従来のごとくお互いに助け合うという精神が次第に変わり、5割近くの30~40代のクメール人が独立性を重視していることは思いも寄らなかった。
自分が求める幸せについて
Q8: 幸せな人生を送るために最も重要だと思うことは何でしょうか。
1、結婚して家庭(子供)を持つこと 16.1%
2、キャリアと安定した収入があること 43.8%
3、良い親戚に恵まれること 5.1%%
4、健康であること 22.6%
5、金、財産を持つこと 12.4%
6、その他( )
Q9:日常生活の中であなたが幸せを感じる時はいつですか。
1、美味しいものを食べている時 11.9%
2、新たな知識を得た時・自分の知識を深めた時 31.3%
3、趣味を楽しんでいる時 22.4%
4、家族と過ごす時 26.1%
5、仲の良い友達・同僚と時間を過ごす時 0.1%
6、昇進・給料の上昇がある時 8.2%
7、その他( )
Q10:今の結婚生活に満足しているか。
1、満足している 61%
2、やや満足している 30.9%
3、不満がある 8.1%
Q11:結婚生活で最も重要だと思うことは何ですか。
1、夫婦関係が良いこと 43.5%
2、夫と妻の両方の親戚との良い関係 25.2%
3、子供がいること 5.3%
4、親から夫婦二人で生活が独立できること 26%
5、その他( )
解説:
自己の幸福感については、キャリアと安定した収入を条件に良い人生が送れると思っている30~40代の社会人が最も多かった(約40%)。そして、日々の生活の中で新たなことが学べる時が一番幸せだと思っていつつも、家族と過ごす時間を大切に考えていることがわかる。他方、結婚生活について、約90%の人が満足とやや満足していることを選択した回答には何も違和感がない。従来の通りに結婚生活を重視しているクメール人の価値観が濃いことがQ11の回答で分かるのではないだろうか(約43%)。ただ、親のもとを離れて夫婦で独立した生活したいと望むとの回答もあり(26%)、それが親戚との良い関係を大事にするとほぼ同じ数字の回答があったのが注目したい。やはり、従来の大家族観は経済が良くなると共に薄れてきているように思わせる。
内戦終息直前・後に生まれた人たちが思う家庭の価値観とは?
Q1.生活して行くうえで第一にしていることは?
1、家庭・実家を持つこと 20.7%
2、良い仕事/キャリア・商売を持つこと 37%
3、家庭の収入 17.8%
4、友人・同僚・近所・親戚との良い関係 9.7%
5、国の平和 14.8%
6、その他( )
Q2.今自分が求める幸福とは?
1、健康でいること 24.1%
2、安定収入・財産を持つこと 24.8%
3、長生き 1.2%
4、楽しい日々を過ごすこと 14.6%
5、自分のことより、子供と孫のことを大事に考えている! 24.1%
6、お寺へ修行できること 1%
7、理想な愛車・家を持つこと 10.2%
8、その他( )
Q3.あなたが人生で一番大事にしているのは?
1、親しい友人関係持つこと 4.4%
2、家庭生活 34.5%
3、結婚生活 19.4%
4、健康 18.7%
5、お金・財産 10.1%
6、仕事 12.9%
7、その他( )
Q4.親として子供のことで最もみたい幸せとは?
1、安定した収入を持つこと 26.8%
2、良い結婚生活 13%
3、公務員などのような社会的に位が認められた職業を持つこと 40.6%
4、健康でいること 19.6%
5、その他( )
Q5.親として子供にどの価値観を最も重視しているか。(最も重要だと思う3つを選択しなさい)
1、大きくなってちゃんと独立して生活できること 62.3%
2、勤勉でいてほしいこと 34.1%
3、誠意な人になること 44.9%
4、他人への思いやりのあるひと 14.5%
5、謙虚であること 32.6%
6、信仰心のある人 1.4%
7、忍耐できる人 26.8%
8、競争心がある人 23.2%
9、教師や年上の人に対する敬意を持つ人 23.9%
10、お金持ちになること 11.6%
11、その他:…………………………
解説:
やはり、50~70歳の方々の考え方と同様に(40%)、良い仕事とキャリアを持つことは生活して行くうえで一番大事だと30~40代の人々も思っているようだ(37%)。しかし、自己の幸福でほしいものとしては30~40代の人々は健康、安定収入と子供のことを大切に思っているようだ(いずれも約24%)。そして、人生の価値観を問うと、最も重視しているのは家庭生活(約35%)であり、50-70歳の人々と同じく最も多い回答だった。さらに、親として、自分の子供を社会的に位が認められた職業に就いてほしいと言う回答が約40%と一番多くあり、50~70歳の回答と同様(44%)だった。世代を問わず、社会的地位を重視しているクメール人の価値観が強いことが分かる。他方、親として子供にどの価値観を最も重視しているかという設問に、30~40代の親が一番大切にしているのは自分の子供が独立した生活できること(62%)、続いて、誠意なひとになること(約45%)であり、3番目は勤勉であること(34%)だった。(50~70歳の方々の回答は1番目が教師や年上の人への尊敬心、2番目が子供の独立性、3番目が誠意な人になるだった)。
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