(日本語) NyoNyum106号特集:⑥より遠くの人まで美味しさを届けたい
(日本語) NyoNyum106号特集:⑥より遠くの人まで美味しさを届けたい
2020.04.28

今月発行したNyoNyum106号の特集は、「起こせ!カンボジアの農業革命 ~カンボジア農業の秘めた可能性~」と題して、カンボジアで農業発展のために奮闘している方々を取材しました。

今回は取材を重ねるうちに、どんどん多くの方に伝えたい、知ってもらいたいことがたくさん出て盛りだくさんの内容になりました。

最終回の今回は、「より遠くの人まで美味しさを届けたい」と、ドライフルーツ加工を行い国内外へ販路を広げるJapan Farm Products(ジャパンフルーツプロダクト:JFP)について紹介します!

誌面では載せきられなかったことも追加したWEB拡大版記事となっておりますので、誌面を読んだ!という方も最後までどうぞお読みください!

前回の記事はこちら

より遠くの人まで美味しさを届けたい

2012年、青果の生産・流通・輸出入事業をメインにカンボジアで農業事業をスタートしたJapan Farm Products (Cambodia) Co., Ltd.。「安全・安心・良品質」を追求し、たどり着いたのは加工事業。日本の有名テレビ番組でも取り上げられた「カンボジア産無添加ドライフルーツ」に込めた想い、現在に至った経緯や目指している今後のカタチを代表の阿古哲史さんに伺いました。

加工事業開始のきっかけ

現地生産者が栽培したマンゴー、パイナップルなどを原材料として、無添加・無糖で高品質なドライフルーツに加工生産しているJapan Farm Products (Cambodia) Co., Ltd.(以下JFP)。

「途上国と日本の農村が共に発展できないかという想い」から、カンボジアでの事業を始めた。
開始時は青果の生産と流通が主。

しかし次第に青果がアプローチできる市場には限界があるのでは、と感じるようになったそう。

創業時から一貫して、日本農業の「安全・安心・良品質」の価値をアジアに展開し、共に成長し、農業をアジアの一大産業にすることを目指し、当初より、カンボジアの青果を国外展開することも視野に入れていた。

けれど、日本の農業現場に関わってきた阿古さんだからこそ、いくら産地で美味しいものを作っても、産地から距離が離れるほど鮮度や品質は必ず損なわれてしまうことも、またわかっていた。

その点、農産加工品はしっかりとした技術で良いものを作ることが出来れば、より遠くの方へ、その味を届けることができる。

「そのままの美味しさをより遠くの人へ届けたい」。
その思いがドライフルーツ事業開始につながった。

 

商品化への道のり

ドライフルーツ事業を本格化したものの、事はスムーズには進まない。

まずは、商品開発。
無添加・無糖で果物本来の特徴を前面に出すため、乾燥温度・時間、そして加工までの下ごしらえ、その細部にまでこだわり、納得できる商品が完成するまで1年以上を要したという。

バッタンバン州産のパイナップル。皮は全て手作業で丁寧に剥き、果実部分と芯部分をドライフルーツにする

加えて、カンボジアで加工事業を行うにあたり、大小さまざまな問題が絡み合う。

プノンペン近郊にあった自社加工場は、乾季に起こる大規模な電力・水不足の影響をもろに受け、製造と品質管理に支障が。
そのため、現地のパートナー企業の協力を得て、産地に近い場所への工場を移設。

加工工場にてマンゴーの管理を行うスタッフ

そのほか人材教育や製造ライン・衛生管理など、次から次へと出てきた問題。
カンボジア・日本のさまざまな企業や人々の協力と支えがなければ事業は実現できなかったと阿古さんは振り返る。

JFP代表の阿古さん

日本全国へ

加工事業をスタートさせてから数年。独自製法を確立し、徐々に販路は拡大。
現在、同社のドライフルーツの主要販売先は“無添加”商品のニーズが高まる日本だ。

ドライフルーツ専門店や百貨店の商品として販路が広がる中、なんとこの4月からナチュラルローソン(一部店舗を除く)で販売されることとなった。

日本の大手流通に「カンボジアの人々とともに作った農業製品」が並ぶことが何よりうれしい、と阿古さんは話す。

ただ、課題ももちろん付き物。
-フィリピン産やタイ産とどう違うの?-
残念ながら“カンボジア産”に抱く消費者のイメージはまだまだ弱い。

販路拡大とともに、そのイメージをがらりと変えるアプローチが必要だと考え、次なる目標は日本国内で「無添加ドライフルーツ=カンボジア」のイメージを確立させること。

カンボジア産の美味しい果物が国としてのブランドを作る一助になれば、と期待と自信をもってJFPは事業を続けていく。

パイナップルの生産を行う現地の農家さん。加工事業責任者の小川さんは「JFPが製造するドライフルーツは、各農家さんがカンボジアで作る果物本来の香りや味をそのまま楽しめる商品」になっているので、日本にいる方だけでなくカンボジアの方々にもぜひ食べていただきたい、と話す

 

パイナップルは果実の部分と芯の部分の両方が製品となる

日本の食品ロス問題解決にも取り組む

日本の各産地で課題となっている食品ロス問題。
出荷基準が厳しい日本では、少しの傷やサイズの違いで規格外として出荷できない果物が大量に発生している。

“ロス”になってしまう果物をカンボジアでドライフルーツにする。
日本とカンボジアを繋ぎ、問題解決へ取り組み出した。

2018年より、日本の農水省ファンド機関を中心に日本の各JAや産地との繋がりを深め、産地から直接カンボジアへ加工用原材料として果物を輸出を始めた。

現在カンボジアで加工が行われているのは、柿とみかん。
日本ではコストが高くて難しい、無添加手作業の加工をカンボジアで行うことで新たな付加価値も商品にプラスされる。

加えて、日本の食品ロス問題解決だけでなく、カンボジアで採れる果物の加工が終わり、工場が未稼働となる時期をうまく調整し行うことで、加工スタッフの雇用創出にも繋がっているそう。

加工工場にてみかんの加工準備を行うスタッフ

日本でご購入いただける商品

4月21日よりナチュラルローソン(一部店舗を除く)で販売が開始された、ドライマンゴーとドライパイナップル。

また、同ドライフルーツを1点購入するたびにカンボジアのこどもたちの1分間の授業に貢献できる「1 MINUTE 1 PRODUCT」プロジェクトを、 CIESFの『国境なき医師団』と連携し、新たな取り組みとして開始。

(左)マンゴーはカンボジアの代表品種、フルーティな香りと強い甘さを兼ね備え、果肉感のある噛み応えのケオロミート種を100%使用。風味をそのままドライフルーツにして届ける為に、じっくりと低温長時間で乾燥させている。日本の有名TV番組でも取り上げられた商品。

(中)パイナップルは甘味の強いバッタンバン産の品種を使い、収穫のタイミングを完熟時に合わせ、砂糖を一切使わず最大限甘くなるように管理しているそう。パイナップルは登熟しない果物のため、収穫タイミングが非常に重要だそう。

(右)日本産の高級甘柿である富有(ふゆ)柿を、じっとりねっとりとした食感と味わいに仕上げた商品。「柿が赤くなると、医者が青くなる」と昔から言われる程、柿は栄養価が高いそう。

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