NyoNyum121号特集⑦:砂山造りと仏清めの儀式について、 僧侶とアチャーに聞いてみました!
NyoNyum121号特集⑦:砂山造りと仏清めの儀式について、 僧侶とアチャーに聞いてみました!
2022.11.30

現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum121号の特集のWeb版です。

「クメール人の拠り所ー仏教の僧侶と寺の存在感とはー

「国家・宗教・国王」という国の標語に掲げられている通り、カンボジア人の90%が信仰する仏教(小乗仏教)は、君主や政府と並んで国家の最高機関の1つとされています。国王を含むカンボジア国民は、お坊さんを“サンマー・サンポット(仏陀)” の使徒であると信じており、古代から現在に至るまで僧侶は高い人格と深い知識を持ち、人々に仏教の教えを示す高貴な存在として敬っています。

カンボジア全土に多くの寺院が存在することも、仏教に対する強い信仰心を示しています。カンボジア
の人々がお坊さんを崇拝し、仏教を強く信じる理由に迫ります。

砂山造りと仏清めの儀式について、 僧侶とアチャーに聞いてみました!

~功徳を積む~

古来からカンボジア人の信仰や風習、文化、伝統的な概念による多くの祭りがある一方、宗教的な概念から行われる儀式や祭礼、そして宗教と伝統の概念両方が混ざった儀礼・祭礼もあります。その中で、砂山造り(プーン・プノンクサッチ)と仏清め(スロン・プレア)は、仏教を信仰するカンボジア人がクメール正月、プチュンバンなどの際にお寺で行う主要な儀式です。砂山造りと仏清めの儀式の発祥の由来や意味、目的についての解説は立場によって異なるのですが、興味深いものがあります。

 

僧侶による解説

スーガウン・ソコサール住職

カンダール州のボトムサーコー寺(通称タークロバウ寺)のスーガウン・ソコサール住職(30)によると、砂山造りの儀式は天界にある仏の髪を安置するストゥーパ(プレア・チョラーモニーチェディ)を模倣して仏のことを思い出して供養を捧げるために行われる儀式だという。

「これは、個々人の悪行を洗い落とすものではありません。自分の悪行を消滅させるためには、その本人自らが己の過ちを認め、本心から謝罪しなければなりません。お釈迦様の教えは人々がお経を学ぶことにより、悪意のない平和な世界、つまり来世の幸福な暮らしに導いていきます。特に、人々が社会の平和と繁栄のためにみんなの日常生活の中に善行をするように教え、それを実践するように奨励しているのです」

クメール正月の3日目に行う仏清めの儀式について、ソコサール住職は「仏清めの儀式は、そもそも仏教的な概念から行われる儀式ではなく、伝統的にカンボジア人が代々行ってきた儀式です。お釈迦様が生きていた時代には女性はお釈迦様に触れることができないため、お釈迦様へ水を注がせていただき、功徳を分け与えてもらっていたことが由来です」

 

実は現在仏清めの儀礼は、仏像だけでなく、仏様同様に敬っている自分の親を家族で囲んで水で清める儀式にもなっている
プチュンバンには仏清めコーナーも設置してあり、仏教信者たちによって水で仏様を清める様子が見られる
砂山造り会場の入り口前には、仏像と花が綺麗に飾られている

 

アチャーによる解説

今年の9月終わり頃に行われたクメールのお盆(プチュンバン)に寺の敷地内で砂山造りの式典があり、多くの村人が砂山を一周歩きながら、様々な願い事をしつつ、献花や金品の寄進をした。砂山に直接に線香を刺したり、金を投げたりすることもよくある

トボンクムン州のスオム寺でアチャー(司祭)の仕事をしているプリェプ・サルーンさん(77)は、砂山造りと仏清めの儀式について次のように解説をしてくれた。

「砂山造りの儀式は昔からカンボジア人が伝統的に代々行ってきたもので、作った砂山は仏の髪を安置するストゥーパを象徴し、人が生きる中での悪行を洗い落とすために行われています」。

砂山造りはクメール正月やプチュンバンにされることが一般的だが、葬式や寄進の儀式などでも行われているという。

盆に山盛りされたコメにお金を寄進する人も多い

「最初に砂を積み始める前に、アチャーと寺の関係者が僧侶を招待して砂山の前で仏教の繁栄を呼びかけるお経を唱えてもらいます。これによりその砂山が清められます。砂だけでなく、米などを山として積み上げることもできます。儀式の後はアチャーが砂山を解体するための儀式を行います。これをしないうちはその砂山の上を歩いたりまたがったりすることはできません。不幸になるからです」

カンボジア人は現生で悪行をする人は死後地獄に落とされると信じている。だからこそ、地獄から免れるために生きている間は善行をしなければならないのだ。この砂山造りには、下枠の中のような言い伝えがある。

 

アチャーの仕事を覗いてみよう

カンボジアの仏教儀式といえば、ビサックボーチア(仏誕節)、クメール正月、プチュンバンなどさまざまあります。これらの儀式では、僧侶のそばに白いシャツを身に付けたアチャー(司祭)の姿が常に見られます。アチャーはお寺でどのような仕事をしているのでしょうか? アチャーがお寺に欠かせない存在だと言われるそのわけとは?その疑問を探るために、トボンクムン州にあるスオム寺で8年間アチャーの仕事をしているプリェプ・サルーンさん(77)に話を伺いました。

プリェプ・サルーンさん

「アチャーというのは、仏教の儀式・儀礼に関する知識を持つ教師のような存在で、儀式の流れに沿って進行を導いていく役割と責任を担います」。2014年からアチャーとして仕事をしてきたサルーンさん。スオム寺の前のアチャーが引退したため、その後継者として村の人々から選任されたという。

後継者として正式なアチャーになるために、プノンペンにある宗教学校へカンボジア仏教の法規を習得するために2 週間ほど学びに行ったという。現在はスオム寺で僧侶の補佐として村の仏教儀式の進行をしたり、お寺に足を運ぶ村人に仏教の教えを普及したり、寺で僧侶の世話をしたりしているという。

寺などでの式典で白いシャツを着たアチャーがお坊さんのそばに座り、式を取り仕切る

僧侶の補佐としての役割について、サルーンさんは次のように説明を加えてくれた。「アチャーはカンボジア人の仏教の儀式に欠かせない存在です。まず、アチャーはお坊さんの補佐として、カンボジアの伝統と風習をよく理解したうえで村人にさまざまな儀式の作法を伝え、儀式が円滑に執り行われるように導く重要な役割を持っています。第二に、人々に徳を積むために寄進を促したり、道徳を守るよう教えたり、寺の建設資金への貢献を呼びかけたりする役もあります」。

さらに、アチャーは僧侶と直接相談ができる唯一の存在であり、儀式の前に円滑な進行のためにそのやり方や指導などを僧侶と決めたり、僧侶と村人の間を取り持つ大事な役割も担っているという。

村人に徳を積んだり、守ったりするように説教しているサルーンさん

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