現在、カンボジア国内で配布中のNyoNyum102号内の特集でも紹介した「NHAM24」。このアプリの充実っぷりを見て「ちょっとカンボジアのアプリ業界、実はけっこうすごいんじゃない!?」と思ったのが、今回の特集のきっかけ。取材のために会社に連絡をとると、創設者でCEO であるチャン・ボリマさんが直接会ってくれることに!いろいろとお話を聞いてきました!
フード宅配サービスについて
日本では配車サービスといえば、Uberが有名だが、東南アジアではシンガポールを本社とするGrabが2018年3月にUberの東南アジア事業を買収。
買収した中にはフード宅配サービスのUberEatsも含まれ、現在はGrabFoodとしてシンガポールやタイで多くの人が利用している。
カンボジア国内では近年、主にプノンペンを中心にオンラインでフード宅配できるサービスを提供する会社がいくつか誕生し、NHAM24は2016年から行なっている。
<詳しくはこちらの記事へ>
— 本日はお時間を割いていただきありがとうございます。私自身、飲食のデリバリーでよく利用しているNHAM24 の創設者にお会いできるとは思っていなかったので、かなり興奮しています。
ユーザーの方からの取材依頼ですからね。ぜひ会えたらと喜んでお受けしました。
— うれしいです! ではまず初めにいつからNHAM24を始められたのか教えてください。
勤めていた企業を退職しこの事業に本格的に取りかかったのが2015 年8 月、サービスを開始したのは翌2016 年2 月です。オンラインオーダー用のウェブサイト制作、モバイルアプリの開発、運営システム作りなど準備に約半年かかりました。
— そもそもなぜこのような事業を始めようと?
元をたどると大学時代にまでさかのぼります。いつか自分で何かビジネスをしたいと自分なりに市場調査を始めていたんですが、ちょうどその当時、1995年にあの「Amazon.com」が登場しオンライン書店としてのサービスを開始したんです。その画期的なシステムと世界的な拡がりを見て、これからはインターネット上で商品やサービスを取引する「e コマース」の時代になると確信しました。そしていつか、この業態で何か事業を行おうと思うようになったんです。
— そんなに前から構想があったとは驚きました!
はい、実はそうなんです。それから実際に始めるまでには20 年以上かかりましたが(笑)。思いつきはあっても経験がまったくなかったので、まずは就職して学びたいと思い、将来の起業に役立つよう、これまでいくつかの企業でセールス& マーケティングの職に就いて働きました。最後に勤めたのはホテル数軒をシェムリアップで展開する企業で、オンライン予約に関するマーケティングを任されました。そこで、オンラインでのホテル予約サービスを世界中で展開する「Booking.com」のアムステルダム本社を訪問する機会をもらえたんです。Booking.com の歴史や戦略などを知り、また担当者として実際にそのシステムの運用に関わったことが、かねてより思い描いていたe コマース事業に踏み切る決心につながりました。
— なるほど。それで満を持しての起業となったわけですね。でも、e コマースの中でも「フードデリバリー」
という業種を選んだのはなぜでしょう?
起業を決めた2015 年頃は、カンボジアでは始めては消えて…というe コマース事業が多く、その市場がうまくいっているとは言えない状況でした。そんな中で何がヒットするだろうと市場調査を重ねた結果、フードデリバリーにたどり着きました。
当時、ウェブサイトから注文できる同様のサービスはすでに他社が始めていましたが、まだ専用アプリを導入しているところはなかった。また、それら既存の他社はどうやら外国人在住者をメインターゲットにしているようだった。そこで、現地の人たちが気軽に利用するサービスを目指し、モバイルアプリ+ウェブサイト+電話予約の3 つの利用手段を用意してサービスを開始しました。
— 実際に初めてみてどうでしたか?
初めの3 カ月くらいはけっこう厳しかったですね。朝8 時から夜9 時までずーっとスタンバイして、結局1 件も注文がないなんて日もありましたよ。初めて予約が入り、動き出したときは本当にうれしかったですね。また、e コマース事業として始めたものの、メインターゲットに据えているカンボジアの人たちにとってクレジットカードはあまり身近でなく、電子マネーも当時はまだ普及していなかったので、決済を配達完了時の現金払いにせざるを得なかったことは、正直に言えばリスキーで不安も感じていました。
— そこからどうやって周知を図り、今ほどの成功に?
広報にかけられる予算はあまりなかったので、加盟店の方々に協力してもらいました。店の壁やテーブルにステッカーを貼ったり、名刺を置いて存在を知らせ、店主や店員の方々に「うちの料理はこのサービスを使って配達もできるよ」とお客さんに宣伝していただいて。あとはNHAM24 の公式Facebook ページを使ってPR しました。そうして口コミで1 人のユーザーが家族や友人に、そこからまた別の方に…と徐々に利用者が増え、オペレーションの改善も重ねながら今に至るという感じです。
— このほど新しくなったアプリでは「Taxi」「Grocery」「Flower」など、飲食以外の複数のサービスが加わっていて驚きました。また、自分のオーダーの配送状況がリアルタイムで追えるのはとても便利ですね。
食品や日用品の「Grocery」は、それまで「NHAM24Fresh」として別アプリで展開していたものを統合しました。そこに花や洋服にコスメ、バイク便といった新たなDoor to Door サービスを、今回のアプリ刷新で追加しました。そして配送状況をユーザーがアプリ上で追跡できるようにしたことと、クレジットカード、デビットカード、電子マネー(ABA PAY、Pi Pay、SmartLuy)による決済を可能にしたことで、e コマース事業としての利便性をより生かせる形になりました。言語も英語とクメール語の2 言語から、中国語を加えた3 言語対応にしました。
配車サービスについては、すでにPassApp やGrab などが普及しているので、そこに参入しようというわけではなく、配達員の稼働率を上げることが目的です。メイン事業はフード、そしてそれ以外のサービスもあることで、配達員の収入源・収入が増えて登録ドライバーが増える。そうすれば配送もより迅速に行えるようになり、利用者はもちろん加盟店にも喜ばれるというロジックで、今回のアプリ開発でサービスを拡大しました。
— お忙しいなか、いろいろな質問に丁寧に答えていただきありがとうございました。最後に今後の展望やメッセージを!
新アプリにはまだ不具合や不完全な部分もあり、ユーザーの声を聞きながら日々アップデートに取り組んでいます。また、電話での予約サービスはいろいろと考慮した結果ストップしましたが、ウェブサイトの方はまもなくリニューアルして再開し、利用できるようになります。スマートフォンでのアプリ利用は手軽ですが、パソコンからだと大きな画面でメニューが見やすいなど双方の利点がありますから、これからはこの2 つの手段で利用できるサービスを行っていくつもりです。よりたくさんの人が、毎日気軽に利用してくれたらうれしいですね。
「私自身、朝はまずコーヒーのデリバリーを頼んで…と毎日利用しているヘビーユーザーの1 人です」とにっこり笑うボリマさん。
起業当初は配達用のバイクを5 台用意したものの、2 人しか専任ドライバーを集められないままサービスを開始。
予約が重なったときには自身も配達要員としてバイクに乗り街をかけ回っていたそう。
ものすごい速さで進化し続けるカンボジア社会の中でも存在感を発揮しているNHAM24。
次はどんな面白いものを開発するのか、楽しみですね!NHAM24とボリマさんの今後に期待しましょう!
チャン・ボリマさん (Mr. CHANN Borima)
1974 年生まれ(44 歳)、プノンペン出身。
大学卒業後、約20 年の会社勤務を経て2016 年2 月にNHAM24 を創業。
Facebook page NHAM24
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