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「本田圭佑がカンボジアで伝えたいこと」 ソルティーロアンコールFC辻井翔吾GMインタビュー 前編

9月10日(月)、カンボジアの首都プノンペンのオリンピックスタジアムで、カンボジア(FIFAランキング166位)対マレーシア(同171位)の国際親善試合が行われた。

FIFAランキング下位同士による対戦という、世界のサッカーファンからすれば特に注目されづらい試合。だが、カンボジア代表の監督として指揮を執ったのは、つい先日まで日本代表としてロシアワールドカップに出場していたあの本田圭佑だ。

ワールドカップ以降はオーストラリアのメルボルンビクトリーと契約し、プロサッカー選手として現役を続けている彼が、カンボジア代表監督を兼務するという世界でも例を見ない試みが発表されたのは8月12日。

登録上の監督は本田のパーソナルアシスタントであるアルゼンチン人フェリックス・アウグスティン・ゴンザレス・ダルマスが務め、本田の正式な肩書きは「Head of delegation」というチーム構成や指揮に対する全権も与えられるというポジション。

本田といえば2008年の日本代表デビュー以来、約10年間日本代表を牽引し、ワールドカップでは日本人初の3大会連続得点。クラブチームにおいても星稜高校(石川)から名古屋グランパスへ入団し頭角を表すと、21歳の時にVVVフェンロ(オランダ)へ移籍。

その後、ロシアの名門CSKAモスクワでは世界最高峰の舞台である欧州チャンピオンズリーグ出場、ロシアプレミアリーグ優勝、昨年途中まではイタリアの名門ACミランで10番を背負っていた。

そんな男がなぜカンボジアを選び、代表監督としてどのような試みをしているのだろうか。

(対マレーシア戦までの1週間について迫ったインタビュー後編はこちら)

 

カンボジアと本田圭佑の出逢い


現在、本田氏はカンボジアで代表監督の他に実質的なオーナーとしてサッカースクールとクラブチームの運営を行なっている。その両方の立ち上げに関わったのが、現在ソルティーロアンコールFCのゼネラルマネージャーを務める辻井翔吾氏だ。

辻井氏は本田氏と同じ星稜高校サッカー部出身の27歳。大学卒業後、2015年にカンボジアの日系クラブ・カンボジアンタイガーFC(現アンコールタイガーFC)の立ち上げメンバーとしてカンボジアへ。

同クラブではトップチームのサポートをはじめ、サッカースクールの立ち上げを経験。毎日学校やフットサル場を回り、一緒にボールを蹴るなど生徒集めに奮闘。時にはスクールの説明のために1日に数百件ものFacebookメッセージのやりとりをしたという。

結果、生徒達の間でまたたく間に広がり、わずか1ヶ月足らずで100人以上のスクール生が増えた。日本人によくありがちな遠慮などは一切せずに積極的に現地の土壌に溶け込んだことで、カンボジアの社会や人々の特徴を掴むことができた。

そんな時、ロシアワールドカップアジア地区2次予選で日本とカンボジアが同組になり、2015年11月に首都プノンペンでカンボジア対日本戦が行われた。そこで辻井氏は学生時代の恩師が繋いでくれた縁もあって、当時日本代表選手として当地を訪れていた “本田圭佑選手”との再会を果たす。

辻井氏は日本が誇るスター選手となったかつての大先輩を前にカンボジアの現状を話した。この時、本田氏はカンボジアの秘めた可能性に興味を持ちはじめたという。

翌年、辻井氏は本田氏自身が経営しているHONDA ESTILO株式会社に入社。同社は2012年から日本全国でサッカースクール「SOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOL」を展開。カンボジアでも「サッカーを通じて子供たちに夢を持つことの大切さを教えたい」というコンセプトのもと、同年11月に辻井氏が中心となってサッカースクールを立ち上げ、現在は約150人もの生徒がいる。

子供たちにはサッカーの技術はもちろんだが、世界で活躍する人材に育てるため幼い頃から「自ら考えて判断・行動する」という判断力を中心に指導しているという。

 

サッカークラブの運営


サッカースクールを立ち上げて間もなくカンボジアサッカー協会からの熱烈なオファーもあり、シェムリアップにあるクラブの経営権を取得し、辻井氏はゼネラルマネージャーに就任。チーム名をソルティーロアンコールFCとし活動を開始した。

設立初年度となった2017年はカンボジア2部リーグに参戦し4位。今季から1部リーグに参戦中だ。

クラブの目標はサッカースクール同様に子供たちに夢を持つことの大切さを伝えること。所属する選手達はサッカー選手としてはもちろんのこと、人間的にもお手本とするような存在にならなくてはいけないと辻井氏はいう。

ソルティーロの選手・スタッフは1週間に1回のボランティア活動をはじめ、学生団体と少年サッカー大会を実施したり、日系企業と共同で日本国内で集めたサッカー用品を地方の子供たちに届ける活動を行なうなど、サッカー以外での活動も積極的に行なっている。

また、選手の人間力向上にも力を入れているという。日本とは違ってまだまだ教育が不十分なカンボジアで生活をしていると、規律の面での問題に出くわすことがよくある。その度に頭ごなしに怒り、規則で縛り付ける外国人も少なくない。

ソルティーロはホームタウンであるシェムリアップから首都プノンペンへ遠征に行く際は毎回、様々な業種の日系企業等で働いているカンボジア人を夕食に招待し、選手達の前で普段の仕事のことを話してもらう機会を設けている。これは日本の良い文化である「規律を守る」「勤勉」というものを実際の日系企業で体験しているカンボジア人から直接話を聞くことで、彼らの理解度も増すだろうというのが狙い。

辻井氏は「選手達にはサッカーだけでなく、様々なことを通して一人の人間としても成長してほしい」と語る。

 

クラブ単体での独立採算制で黒字化

©HONDA ESTILO

そして気になる運営面だが、ソルティーロは日本の本社とは別に独立採算制のスタイルをとっている。これも世界で活躍できる人材育成を目指す本田氏の考えを取り入れており、現在カンボジア単体での自立を実現している。(2017年度は黒字達成、2018年度も黒字予定見込み)

辻井氏は「設立当初に苦労はしたが現地で様々な活動などを通してカンボジアの社会に貢献することで、徐々に信頼を得はじめている。今後はサッカーを通して新たなビジネスチャンスを創ることで、これまでになかった新しいモデルケースを生み出したい」と語った。

 

後編に続く。

 

情報提供:©HONDA ESTILO

 

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