12月10日に発行したカンボジア現地情報誌NyoNyum 92号内の特集記事をWEBでも紹介♪
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タイトル
【いま、「ポイペト」が熱い!~カンボジア経済の新たなる牽引拠点となるか~】
プノンペンから北西のはるか遠くにポイペトという町があります。タイから陸路でカンボジアに入る玄関口のひとつ。一昔前まではタイ側のアランヤプラテートという地名が有名で、ポイペトは「地雷の町」「帰還難民の再定住地」として見られていました。
そんなポイペトにいま、革新的な開発の波が訪れています。その中に日本の勇敢なる企業戦士たちがいると聞きつけ、ニョニュム取材班は一路北西へと向かいました。
全長800キロ超!ひたすら走り続ける国道5号線 ~ 6号線一周の旅
プノンペンからポイペトへ行くには2つのルートがあります。プノンペン-コンポンチュナン州-ポーサット州-バッタンバン州-バンテアイミエンチェイ州をたどる国道5号線(南部経済回廊の一部)ルートと、プノンペン-コンポントム州-シェムリァップ州-バンテアイミエンチェイ州をたどる国道6号線ルート。
カンボジアでもとても重要なこれらの道沿いには、なんでも日本とのゆかりの地が点在しているのだとか。
南部経済回廊とは
ベトナムのホーチミンからカンボジア、タイを横断しミャンマーのダウェーまでを結ぶ南部経済回廊は、この地域全体の発展に重要な役割を果たしている。
道路の整備や国境通過の円滑化等のハード・ソフト両面のインフラ整備により、南部経済回廊沿いの地域は連結性を高め、国際的サプライチェーンを発展。カンボジアにとって、日本企業等が集積しているバンコクやホーチミンの自動車・電気製品の工場が必要としている部品を製造する工場を誘致するために、南部経済回廊は必要不可欠なものとなっている。
日系企業にとっても、カンボジアやミャンマーを、タイやベトナムの次の投資先としていくための重要な要素に。日本政府もメコン川を渡るつばさ橋、国道1 号線等の改良を支援し、現在は国道5 号線の改善に円借款を供与しており、さらに今年から、物流全体の改善を図るための技術協力も実施している。
日本の企業戦士たちの取り組みを追う
タイプラスワンの利便性がギュッと詰まった「テクノパーク」の魅力を紹介!
豊田通商株式会社が100%出資して、工業団地運営会社Techno Park Poi Pet Pvt. Co. Ltd.を設立。2016年9月1日にバンテアイミエンチェイ州・ポイペトに新しいスタイルの工業団地「テクノパークポイペト」をオープン。
同社の龍田貴行さん(社長、プノンペン事務所長兼務)、丹崎太郎さん(副社長)に、立ち上げからこれまでの苦労話、そして将来の展望を伺った。
1998 年のインド南部のバンガロールを皮切りに、タイ、インドネシア、そしてカンボジアと世界4 カ国に展開する「テクノパーク」。カンボジアの「テクノパークポイペト」は6 拠点目。コスト削減、現地調達率アップの要求が高まったこと、新興国市場の成長が見込まれる中、現地に適した商品を現地で生産するという「地産地消」を目指して、中堅・中小企業の海外進出サポートをビジネスモデル化した。
海外進出というと聞こえはいいが、経験のない中小企業は進出先の検討、F/S 調査(実行可能性調査)、政府機関や現地パートナーとの交渉など、あらゆる面で足踏みする。そこで、これらを全面サポートする工業団地の機能を構築。会社設立・事務代行、設立後の人事・総務業務、財務・経理業務などのソフト面から、工場用地および建屋を確保しレンタル工場として顧客に提供することで初期投資の負担を減らし、進出企業を全面後押しする。
一方テクノパークポイペトは、すでにタイに進出している企業の悩みを解消する。タイの産業政策の変化(ハイテク産業誘致へ移行)や、最低賃金高騰や権利意識の向上に伴い労働力確保が難しくなった企業が、「タイプラスワン」と言われるように生産工程の一部を他の地域・国に分散させる傾向が高まった。そこで、労働集約型産業誘致を図る政策を持ち、比較的労働賃金が安価で労働力が豊富なカンボジアに注目が集まった。
1990 年代後半から、カンボジアではプノンペンに労働集約型企業進出が集中。だが、タイの生産の一部という点を考えると、より近い地域にその拠点を置くのが望ましい。調査の結果、タイの主要工業団地から2 ~ 4 時間、国境ゲートから20 分の好立地にあるサンコー経済特区の一部を確保し、本格的な環境整備に乗り出した。
社長の龍田さんによると、昨年9 月に操業開始してから、日系、タイ系の企業5 社が入居。第1 期工場がほぼ100% の稼働率となった。同地の最大の魅力は、人材採用・派遣機能、通関手続きサービスを持たせたこと。人材派遣ではトヨタグループの人材育成ツールも利用した派遣前研修を行う。そして通関・物流サービスは、トヨタグループが持つ物流サービスを展開する。将来は生産の請負も手がけ、グループ全体の強み、ノウハウを集約させた総合サービスという、新たな挑戦を展開する予定だ。
二人三脚でプロジェクト街道を奔走!
ポイペトに常駐している丹崎さんは、1997 年10 月に「在外公館派遣員」としてカンボジアの日本大使館に赴任。2 年後に大学に復学し、卒業後はIT 企業に入社。その後米国、英国の大学院で国際開発や農業経済学などを学ぶ。
「国際協力」を一貫して学んできた丹崎さんだが、その後は民間企業に勤務し、開発途上国はビジネスパートナーとして共に成長する関係になると考え、中小企業診断士の資格を取得。そんな時にJICA カンボジア事務所で、中小企業診断士有資格者の募集があった。再び吸い寄せられるようにカンボジアに戻り、2013 年11 月にカンボジア開発評議会(CDC)の日系企業誘致促進のための「ジャパンデスク」に配置された。当時は日系企業の進出ラッシュの時代だった。
一方で、投資環境をめぐるトラブルも尽きない。労働争議、電気供給の問題、経済特区のソフト、ハードのインフラの不備…。何もないところでの開拓。そんな経験を培った丹崎さんは任期終了にあたり、「より現場に近い当事者として道を切り開いていく」ことへの思いを強める。テクノパークポイペトの調査が始まっていたことも重なって、豊田通商へその身を置くことを決心した。
「テクノパークはサービス業であり、物流業でもあり、将来は製造業もしていくという、これまでにないビジネスモデルを描いています。ですから、カンボジアの外国投資誘致の柱である投資適格プロジェクト(QIP)の枠にはまらない部分がたくさんあります。投資認可を出すCDC と交渉し、現地政府とともにテクノパークを作り上げる挑戦が始まりました。大変な苦労もありますが、やりがいもあります。入居企業の皆さんが、身一つでカンボジアに来てモノづくりに集中できるよう、さまざまな角度でサービスを提供し、問題を解決することが私たちのミッションだと思っています」
丹崎さんの上司にあたる龍田さんは、テクノパーク事業のプロだ。テクノパーク発祥の地であるインド・バンガロールで経験を積み、数多くの拠点立ち上げ、統括運営を行ってきた。カンボジアの事業でもその手腕を奮い、システム作り、営業活動を精力的に行っている。
「テクノパーク事業は日本が得意とする『モノづくり』を国内だけでなく海外で展開するにあたり、海外進出のハードルをできるだけ下げ、モノづくりに専念できる環境を提供することをコンセプトとしています。我々はモノづくり商社として進出企業の現地調達を可能にし、WIN-WIN の関係を構築します。地産地消、現地調達が進むグローバル化の中、日本のモノづくりの高い技術力が絶えることなく、世界各地に根を張って成長していくことを応援していきます」
経験豊かな龍田さんと、機動力のある丹崎さん。二人三脚で多くのスタッフを引っ張り、関係者との調整をしながら、さらに進出誘致の次のステージに立ち向かおうとしている。
国境の町で企業人を育てる-日系企業の果たす役割
「テクノパークポイペト」のオープンにより期待されるのはポイペト、カンボジアの経済活性化だけではありません。国境の町で企業人が育つ。そのための教育が始まっています。
テクノパークを訪れた日、お昼休みに食堂へ行ってみた。そこで出会ったのは、1 週間前に採用され、教育を受けた男性5 人グループ。日系の入居企業に派遣されたそうで、それぞれ出身はポーサット州、バッタンバン州、バンテアイミエンチェイ州の近隣州。タイへの出稼ぎ経験もある。友達の勧誘だったり、すでに働いている親族もいたことで、応募したという。
「タイや国内の日雇い労働者として働いてきましたが、給料を得られる仕事に就けてうれしい」と口々に語る。4、5 年働いて資金を貯め、地元でなにか商売をしたいのだそう。採用教育では、礼儀作法や時間厳守、チームワークなどの基本ルール、挨拶・自己紹介を学んだという。
「学校でも学んだことですが、過去の職場では意識していませんでした。改めてその大切さを認識しました。学んだことを活かして働きたい」と抱負を語ってくれた。
テクノパークで採用教育を担当しているテス・サォさんに話を聞いた。
人事関係の仕事を通算4 年間しており、テクノパークに入社してからフィリピンの経済特区を視察し、特区が提供する教育サービスを学んだ。安全衛生、環境、リスク、コミュニケーションといったキーワードを、受講者がこれから経験する実社会で活かせるよう、日々講義内容のブラッシュアップに努力している。
「4 年間で1 万人以上の教育をしてきました。この仕事が好きです。1 人でも多くの人に自分の知識を伝えていきたいです」と目を輝かせる。派遣したあとのフォローアップもきめ細やかと評判だ。これからも採用教育のプロとなり、多くのカンボジア人労働者の「先生」として活躍してもらいたい。
カンボジア政府の期待- 大臣インタビュー
テクノパーク事業の挑戦に理解を示し、実現を後押ししたCDC 事務局長であるソック・チェンダーサォピァ首相付特別大臣。テクノパークへ寄せる期待と熱い思いを語ってくれた。
「先般の産業開発政策の策定で、私は縫製産業以外の付加価値の高い産業誘致を盛り込みたいと考え、その形はチャイナプラスワン、タイプラスワンを想定していました。政府は中国、欧米、日本、どのような国籍でも歓迎します。その中で、各地の経済特区に日本から進出していることをうれしく思っています。タイプラスワンという流れによる日系企業誘致では、ポイペトはまさに適地です。テクノパークの存在により、日本の経済産業界にポイペトという名前を広めたいですね。
一方で、我々行政としては、現地の公官庁職員に手続きの円滑化の理解と執行を促す必要があります。また、将来のワーカーとなる地元の子どもたちや保護者らに、タイに出稼ぎに行かなくとも自分の故郷に仕事があることを伝え、家族のもとで生活しながら就職の機会を得られるように、CDC あげて環境整備に全力で取り組みたいと考えています」
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