プロジェクトには男性メンバーが4人います。主に陶土、釉薬作りを担当しています。その中でリーダー的存在がサマートです。「色が安定しないので大変ですが、最近はだんだん良くなってきています。欲しい釉薬がまだまだあるのでチャレンジしています」とサマート。地元で採れる天然の原料から釉薬を作り薪窯で焼いていますが、自然の原料のため成分が一定しておらず、狙った色を出すには試行錯誤が欠かせません。また最近、大口の注文が増えてきました。「手作りなので大変です。たくさん必要な時に追いつきません」
村ではおよそ85%の人が素焼きの生産や販売に従事しています。しかし近年は、素焼きの売り上げだけでは十分ではなく、さらなる現金収入を求めて工場で働いたり、村を離れて出稼ぎに行く人が増えました。サマートも以前、韓国へ2年ほど出稼ぎに行っていました。現在、サマートの世帯収入のおよそ半分は素焼き作りから得ていますが、「将来もっと釉薬陶器が売れたら素焼きをやめて専念したい」と考えています。
自分たちの焼き物の個性を追求しつつ、お客さんの要望にも応えていかなければなりません。「新しい商品を作り出すためにデザインもずっと試行錯誤を重ねています。たくさん売れるとやる気が出ます」。もっと売れるようになったら、「村にはろくろ成形の技術を持った人が多いので、新しい人を探して釉薬陶器の技術を教えて、メンバーを増やしていきたい」。プロジェクトの将来像です。
明 博史(Hiroshi AKE)
カンボジア伝統陶器プロジェクト、コーディネーター。陶器生産を地場産業として盛り上げるべく、セールス、マーケティング、生産管理などを担当。日本でテレビニュース・ドキュメンタリー番組制作、写真、ウェブサイト制作などメディアの仕事に関わったあと、2000 年、初カンボジア。2009 年、地雷・不発弾対策支援NGO のカンボジア事務局代表としてバッタンバンに赴任。任期終了後、「カンボジア伝統陶器プロジェクト」に参加。このコラムでは村のメンバーたちのストーリー、声を伝えていきます。
2014.6-7月号(第71号)掲載
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