チャンテーンは12才頃から母を手伝って素焼きを作り始めました。伝統的な叩き技法で壼やかめ、土鍋を作っていました。その後、村に入ってきたドイツのNGOからろくろでの成形技術、窯での素焼きの焼成技術を学びました。そして私たちのプロジェクトに参加、釉薬陶器が作れるようになりました。現在は村にあるワークショップで陶器を作り、家で素焼きを作る毎日です。
チャンテーンは6人兄弟の長女です。弟(長男)と妹(4女)が今年の4月、タイへと出稼ぎに。「僕たちを含めて村から4人でタイへ行きました。バンコクでビル建設の仕事で、月給は1万バーツ(約300 ドル)でした。最初の現場を終え、次の現場に移ったのですが、そこでの給料が未払いとなってしまい、仕方なくカンボジアへ帰ってきました」と弟が話してくれました。タイへの出稼ぎは給料は良いのですがリスクがあります。
村では素焼きを作るより工場へ勤めに出ることを選ぶ人が増えています。チャンテーンの妹たち(3女と4女)も今、コンポンチュナンにある縫製工場で働いています。月給は勤務時間によって110ドルから130ドルほどになります。
「素焼きの仕事は、家族と一緒に住んでいる家で出来るので安心で楽です。でも単価が低いのでたくさん作らないといけません。時間がかかって大変です。天候にも左右されて不安定だし」とチャンテーン。「もっと陶器がたくさん売れるようになれば将来はワークショップでの仕事に専念したいと思っています」。最近は大きな注文も入るようになり生産が追いつかなくなることも。「これからも今の10人と一緒にやっていきたいし、メンバーを増やしていきたいです」
村の人が取り得る新しい選択肢。釉薬陶器の生産をもっと村に広げていきたいと私たちは考えています。
明 博史(Hiroshi AKE)
カンボジア伝統陶器プロジェクト、コーディネーター。陶器生産を地場産業として盛り上げるべく、セールス、マーケティング、生産管理などを担当。日本でテレビニュース・ドキュメンタリー番組制作、写真、ウェブサイト制作などメディアの仕事に関わったあと、2000 年、初カンボジア。2009 年、地雷・不発弾対策支援NGO のカンボジア事務局代表としてバッタンバンに赴任。任期終了後、「カンボジア伝統陶器プロジェクト」に参加。このコラムでは村のメンバーたちのストーリー、声を伝えていきます。
2014.10-11月号(第73号)掲載
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