ニョニュムでもこれまで、ショップの改装やディスプレイなどでお世話になってきた銀さん。ものづくり集団「hug factory」を立ち上げ、カンボジアで建物の内装や家具の製作を手がけています。
カンボジアに来たきっかけや、空間づくりに対する思いなど、色々とお話を伺いました!
大工道具で遊んだ幼少期。空間デザイナーになるまで
ーーいつから内装の仕事を始めたのでしょうか?
叔父が左官職人で大工だった影響もあり、小さい頃から釘や大工道具を手に何かを作って遊んでいました。親の目を盗んでは自分の部屋の壁を塗り替えたり、水屋をアンティーク風にしたりと絶え間なく改装を重ねていました(笑)。
そんな幼少期を経て、初めて勤めたのはアジアの輸入家具や雑貨などを扱い自社で店舗も持つ流通会社。そこで内装や改築に関わる機会を得て、設計や施工管理、発注管理を実践から学びました。
そして何より「空間作り」にワクワクする自分がいました。その経験から、これを仕事にしようと29歳の時に独立。空間デザイナーとして内装の仕事を始めました。
ーー銀さんが思う、「よい空間」とはなんですか。
空間デザインにおいては、どんな目的で使われ、そこにどんな人が立ち、どんな空気を生み出したいかを思い描くようにしています。私たちが作れるのは「場所」だけ。そこに人が立って動くことで空間に命が宿り、「よい空間・美しい空間」が完成する。そしてその空間が人を生き生きとさせる。そんなプラスの循環が生まれると考えています。
また、「現場」も大切にしています。デザイン画を描き図面を引くだけでなく、実際に職人さんとともに現場に立つことで、多くのことを学んでいます。
「職人」がいないカンボジア。きっかけは飲食店の内装
ーーそもそもどうしてカンボジアへ?
以前に内装を手がけた地元・福岡の飲食店のオーナーがプノンペンに出店するということで、その内装を頼まれ、完成するまで約3カ月ほど滞在することを決めて2013年3月にカンボジアへ来ました。計測とデザイン、解体から完成までの施工管理、店内の装飾までを請け負いました。
工事現場でハンマー1つ持って立つ10代そこそこの少年の姿を見たときは、「まさかそれで解体するつもり!?」と衝撃を受けました。どうやって進めていけばいいんだ!? と不安もよぎり、工事現場に泊まり込むことを決意。
昼夜問わずカンボジアの職人たちと作業にあたり、そのなかで感じたのは「まだ『職人』という立ち位置も技術もない」ということ。低賃金労働者としてその日暮らしで働いているため、1つ教えて覚えても数日後にはいなくなっている。そんなことの繰り返しでした。それでも1日中空間作りに没頭できたのは私にとって至上の喜びで、夢のような日々でもありました。
そんなこんなで、なんとか最初に手がけた店が完成。折しも日系飲食店の進出ラッシュだった当時のプノンペン。完成した店舗を見た方などから、いくつか内装の相談を持ちかけられました。それならばとカンボジアに居残ることに。自分でも予想外の展開でした(笑)。
カンボジア人を雇用し、「職人」を育てる
ーーカンボジアに残ると決められてから、どうしたのでしょうか。
そこで必要になるのが人材です。「日雇い」感覚ではなく、自分の仕事に誇りを持つ「職人」を育てたいと初めの現場で出会ったカンボジア人を雇用し、ものづくり集団「hug factory」を立ち上げました。
それから5年、プノンペンの「はかた食堂にゃむ」、本格江戸前寿司店「SuShi LaB」、海鮮居酒屋「SaKaNa LaB」、シェムリァップの「Angkor Cookies」本店など、数々の内装を請け負い、デザインから施工管理、完成後のフォローアップまでを行っています。
電気、給排水、雨漏りなどの問題はカンボジアでは日常茶飯事。思いもよらないトラブルも多々発生しますが、スタッフや経験豊かな現地の方たちと綿密に計画を練り、試行錯誤しながら進めています。
彼らのことを理解した上でこの国に合ったシステムを作ることが、息の長い企業になるためには不可欠と信じて、トラブルに柔軟に対応できる体制作りと迅速な対応を心がけています。
ーー最後にひとことお願いします。
このほど建具・家具の製作工房が完成しました。工房にはスタッフが住み込み、左官訓練として毎日作業しています。今後は内装で使う建具や家具はもちろん、家やオフィスで使うような家具の受注製作にも力を入れていきたいと思っています。内装設計・施工のこと、家具のこと、ぜひご相談ください!
ーー銀さん、ありがとうございました!
空間デザイナー/hug factory代表 銀さん
福岡出身、プノンペン在住の空間デザイナー。飲食業を中心とした“ものづくり”カンパニー「FooLaB」の一員。日本とカンボジアで内装実績多数。工房の庭には趣味で作ったピザ窯が。ものづくり&料理好きで、日本では内装業の傍ら古民家を改装したカフェも開いていた。
▽企画・設計・施工・デザイン及び家具製作のお問い合わせはこちらへ
(2018年8月発行 NyoNyum 96号より)
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