現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum126号の特集のWeb版です。
「膨張し続けるプノンペンのいま〜プノンペン不動産の魅力と憧れのマイホーム開発〜」
カンボジアの経済成長の舞台は首都プノンペンに集中しており、プノンペンの人口も増加しています。2008年に約150万人だったのが2019年には約210万人に、そして2035年までに300万人に達すると予測されています。人口増加を受けて、都心から周辺地域への道路や上下水道、電気などのインフラ整備を政府も進めています。
プノンペンの経済成長とインフラ整備の拡がりを背景に、理想のマイホームを求めて「ボレイ」と呼ばれる新興住宅地で夢のマイホームを購入しようと、銀行ローンを組む市民が急増しています。一方デベロッパーは、さらなる市民のマイホームニーズを満たすべく、プノンペン近郊でボレイの開発と建設を推し進めています。
今回は、プノンペンにおける不動産の現状、そしてボレイでの生活を叶えた人の生活について調査しました。
官庁移転に伴い開発されたボレイ・ペン・フート
官庁の機能を郊外に移転することにより移転先でボレイ開発が進み、地域発展の軸を作り出した例があります。10年という短い期間で官庁施設が次々に移りボレイ建設計画が急増しているチェアソパーラー大通り(598通り)を取材しました。
カムコシティ交差点からプノンペン北部にのびる「チェアソパーラー大通り」と呼ばれる道がある。現在この大通りにはプノンペン都警察や公共事業運輸省といった官庁の拠点が置かれている。これに伴い、チェアソパーラー大通りにボレイやショッピングモールなどが次々に建てられ始めている。10年ほど前までは少しボレイがあっただけだが、今は状況が一変。
そしてチェアソパーラー大通りには、都内からだけでなく地方から移住してくる人でほぼ空きがないボレイ・ペン・フートというボレイがある。現在ここで生活するユー・ソクレーンさん(40)にお話を聞いた。
ボレイ・ペン・フートの住宅を約10年前に購入したと聞きましたが、購入した当時この辺りはどんな感じだったのですか?
ボレイ・ペン・フートの建設が始まった頃、シアヌークビルに住んでいる親からの資金援助もありツインヴィラタイプの住宅を約20万ドルで購入しました。当時この辺りは田舎で空き地も多く、牛や水牛が道路を歩いて渡っていたり溜め池も多く見られました。
どうして当時、そんな地域のボレイを購入することにしたんですか?
夫が仕事でプノンペンに赴任することになったのをきっかけに、家族みんなでプノンペンで暮らしたいと思うようになりました。当時は他の場所よりここのボレイのツインヴィラが建設中で、約20万ドルの価格でしたが、ローンではなく一括払いで購入できるという条件が自分たちの希望と一致したのでこの場を決めたのです。
ボレイ前にチェアソパーラー大通りがあり、この通り沿いには建設中の他のボレイやショッピングモール、大きなガソリンスタンド、カフェがたくさん並んでいます。このような状況へいつ頃から変化したんですか?
確か4、5年前から飲食施設や娯楽施設、チップモンモールなどいろいろでき始めました。生活がどんどん便利になっています。
治安はどうですか?
ボレイには門番がいて、一軒ごとに月に25ドルのセキュリティ料を払っています。特に泥棒などの被害は聞いたことがありません。
旦那さんの通勤とお子さんの登校はどうしていますか?
このボレイに住んでいる人は大抵マイカーを持っています。夫と私のオフィスは都心にあり、毎朝どちらかが子供を車で学校まで送ってからそれぞれの職場へ向かいます。帰りも私か夫が子供を連れて帰ります。ボレイのご近所さんの中にも同じ学校に子供を通わせている家庭があるので、子供が近所の人と一緒に帰ってくることもあります。
何か困ることはありませんか?
特にないです。職場は都心ですが、ボレイから車で30分前後で通勤できています。ただ、もしここから王宮辺りに行くとなると遠い感じがしますが、私たちにとってここでの生活は本当に良いことばかりです。これまで洪水で被害を受けたこともないし、停電も滅多にないし、近所の人もいい人ばかりで本当に恵まれています。
プノンペンのボレイ開発の現状
プノンペン郊外へ水道・電気などのインフラ整備を行う政府の都市開発計画により、郊外に多くの新興住宅地開発プロジェクトが展開しています。新しい住宅購入を考える人にとって、ボレイは理想の住宅になっています。
ボレイと一言で言ってもランクがいろいろあり、設備が充実し都心近くで商業地周辺など立地条件が良いボレイだと、高所得層を対象にした高級ボレイとなる。一方、プノンペン西側にある工場密集地域には中所得層向けのボレイが多い。立地により周辺住民の生活レベルに合うボレイ開発が行われているのだ。
2022年半ばのプノンペン都知事の発表によると、プノンペンのボレイは合計310あり、高層ビルの数は約1,600棟、そのうち20階以上のビルは225棟あるという。カンボジアの経済成長に伴い、プノンペンでは住宅需要がますます高まっている。国土整備・都市化・建設省によると、カンボジアでは年に約1万戸の新しい住宅が必要で、2035年までにその数は100万戸になるという。
こういった点からも現在、ボレイ開発が注目を集めている。日々テレビやラジオ、新聞、雑誌、また FacebookなどのSNSを通じて中・高所得層の市民を対象とした広告宣伝が活発に発信されている。プノンペンでボレイ開発が最も多い区はセンソック区で全体の23%、次いでダンカオ区が17%、ルセイカエウ区が12%を占めるという。
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