2003年のNyoNyum創刊当初から連載している「ボンユキエッセイ」。
カンボジアに長年住むと街の移り変わりが見えてくる。
おもしろくもあり、どこかもどかしくもある。
通訳、翻訳、会社経営に奮闘中のボンユキこと山崎幸恵がおくるカンボジアあれこれ。
今回は、10月で生誕17周年を迎えたNyoNyumについてのお話です。
NyoNyum 17 周年です !
ニョニュムが満 17 年を迎えました。
3 年、10 年と経った時は、あっという間だった印象がありますが、特にこの数年はある意味ニョニュムとじっと向き合い、考える時間だったように思います。
1996 年から 2000 年、王立プノンペン大学に留学していた時、クラスメイトの男の子が「自分たちの将来に希望が持てない。今のこの国を見ていると、希望が持てないんだよ。アンコールワットを作ったのが自分たちの先祖だというけれど、自分はその子孫ではないのではないか、別の民族なんじゃないかと思ってしまうんだ」と私に話してくれました。
それがニョニュムを生むきっかけでした。
将来を担う若者が、自分の未来に、自分の国に希望を持てないなんて。
いくら外国人が援助を持ち込んでお金を投じたって、そこで一緒に働き、学び、動かしていくこの国の人財にその気持ちが起きないのでは、全く無意味ではないか。
国造りは人づくり。
その人をつくるには、人がその営みに希望と自信を持てるようにさせることが重要なのでは。
そう感じ、大学を卒業して 3 年後にこの「ニョニュム」を生みました。
自分たちの国、社会、身の回りで繰り広げられているあらゆることを取材して、それを発信し、私たち日本人をはじめ外国人がそれに対して「へぇ」「面白い」「すごいなぁ」と反応することで、彼らは自分の国を見つめなおし、そして自信と誇りを持つようになるのではないか。そう思ったからです。
それからがむしゃらに、この子を育ててきました。
通訳・翻訳の仕事をしながらの、二足のわらじのシングルマザー。
営業も、企画も、取材も、執筆も、時にはデザインソフトをいじって訳が分からなくなり(苦笑)、指定した色が出てこない印刷所に行って
「この国で作っているものがこんなに低レベルだと思われていいの ?私たち、一緒に作品を作っているんでしょ。いいものを作ろうよ。そのためにどうしたら改善できるか真剣に考えてほしい」って伝えたり。
それ以外にもいろんなドラマがありました。
泊まりがけの取材に出ていたスタッフから、車のトラブルで田舎道で立ち往生していると深夜に連絡を受けたり、印刷が上がってきてからミスが見つかって全ての部数にシール貼りをしたり、ハードな仕事の中でスタッフの笑顔がなくなり「ニョニュム(笑顔)」を作っているのに何をしているんだろうと反省したり、もうやめてしまえって思うことも何度も、何度もありました。
でも、そういう苦しいことよりも、楽しく、幸せな子育ての記憶の方が多いんだなぁと、今振り返ると思います。
10周年の記念イベントでは、のべ400人ほどの方々がニョニュム祭りに参加してくださり、100号記念の時にもホンワカした温かいイベントをすることができました。
広告主の皆さん、読者の皆さんに支えられながら、ニョニュムという子はどんどん社会に出て、鍛えられ、育ち、いつか私の手から離れていくんだろう。そんな風に思っています。
この数年は、経営面でのいろんな苦悩を抱え、ニョニュムの存在意義に疑問を抱き、悩み、うろたえ、右往左往していたような状態でした。
そしてコロナ禍で再びそれをじっくり考える日々が続き、ある結論に達しました。
それは、この子がもっとはばたけるフィールドを見つけ出し、生きていく道を作ってあげること。
親として、彼女が 20 歳になるまでは、それをそっと手助けしていこう。
そんなイメージのことです。
2003 年 10 月 10 日 か ら 始 まり、2020 年 10 月 10 日を迎えました。
17年は区切りとしては中途半端かもしれませんが、コロナ禍という人類が遭遇した非常事態の中でこの記念日を迎えていることの意味をかみしめたいと思います。
Cambodia Joho Service 代表
/日本カンボジア通訳翻訳家
神奈川県出身。在カンボジア歴、足掛け27年。
翻訳、通訳のほかカンボジア関連のアレンジやコーディネートを手がけることも。
仕事に追われつつも、大好きなビールは絶対に欠かさない。
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