クメール人なら、誰でも待ち遠しいクメール正月の連休。特に、田舎から上京して働いている若者は帰省の日を心待ちにしている。地方出身のニョニュムスタッフもクメール正月の休み期間中は故郷で家族と一緒に新年を祝うために4日間帰省していた。クメール正月を振り返ってレポートをしてくれた二人の日記をご紹介したい。
ニョニュム編集部に所属して3年目勤めているサルン・ピアリットさん
クメール正月の前日(4月の12日)
祝日になると、私はたいてい終業直後に故郷に帰る。故郷のトボンクモム州へ行くにはタクシーで約3時間掛かる。クメール正月の連休前日だということもあり、プノンペン都内を出るまでの道はどこも混雑していた。今回はタクシー予約を事前にしておいたため、席がちゃんと確保できた。夕暮れから夜に移りゆく国道を約3時間走ったところで、ようやく故郷に到着した。実家に辿り着き、さっそく水を浴びて久しぶりに家族全員揃って食事をした。食事後は皆であれこれのおしゃべりをしていたが、長い移動でちょっと疲れていたため、皆より先に寝てしまった。
クメール正月の1日目(4月13日)
朝6時に目が覚めると、久しぶりに帰ってきた村の新鮮な空気を味わった。同時に村の人々が新年の女神を迎えるためにそれぞれの家の玄関周辺に正月の飾り付けをきれいにしたりする風景が目に入ってkた。また、この日にも村に帰省してくる人の姿も見えた。しばらくして、私は家族と一緒に朝食をとり、新年の女神を迎えるために家族と一緒に大掃除したり、玄関の飾り付けの手伝いをしたりしていた。
約2時間の大掃除の手伝いの末、新年の女神を迎えるために玄関前のテーブルに花や線香、果物など置き、新年を迎えるムードが高まった。大掃除と飾り付けが終わった後、ちょっと家族とおしゃべりしていたら、ちょうどお昼ご飯の時間がやって来た。久しぶりに母が作ってくれた昼ご飯を食べた。帰省するたびに母は自家栽培の自然の野菜で美味しい家庭料理を作ってくれる。家族と一緒に食べることは、これ以上幸せなことはないとつくづくと思った。昼ご飯のあとは日差しがピークになるので、村の人々はたいてい昼休みをする。私は横になって携帯でFacebookを見ていたのだが、いつの間にか眠りに陥っていた!(笑)
昼寝は短時間するものだが、私はなんと午後3時に目が覚めた。その後は、家事のお手伝いだ。家族が栽培する野菜に水をまく作業を手伝った。鮮やかな緑色の野菜畑に夕日が差し込んできて、田舎の自然は最高だなぁと感じた。このような思いを抱えながら、しばらく野菜に水をかけていたら、晩ご飯の時間がやって来た。母親の呼び声がしたので野菜の水まきをやり終えた。今日の夕飯は蒸しプラホックという料理があると聞いていたため、畑に生えていた唐辛子を一掴み取って晩ご飯に向かった。唐辛子は母親が作ってくれた蒸しプラホックにぴったり合うのだ。家族揃って晩ご飯をお腹一杯食べた。故郷ではたいてい日が暮れる前後(5〜6時頃)に晩ご飯の時間となる。プノンペンに上京して働く自分は仕事を終えて帰宅するが、いつも晩ご飯を食べる時間がバラバラで、規則が正しい田舎の人々の生活のリズムを改めて感じた。
夜の10時。正月の女神が降りてくる時間になり、家族揃って線香をあげて正月の女神にお祈りた。
クメール正月の2日目(4月14日)
通常、新年の2日目は、さまざまな場所へ旅する人が多いようだ。私の家族は正月のお祝いで、作った料理とお金を持ち、プレイヴェーン州に住んでいる母方の祖父の故郷を訪れることにした。プレイヴェーンへ向かう途中、同じトボンクモム州に住んでいる父方の祖父のところへも寄った。こんな風に、両親の実家へ訪れることが我が家の正月の2日目の主な過ごし方だ。
正月の3日目(4月15日)
毎年、正月になると、私の家族は頻繁に祖父の故郷を訪れ、他の観光地で行楽することは滅多にない。今年の正月の3日目は、一泊したプレイヴェイン州から実家に戻り、家族揃って実家でゆっくり過ごすことができた。
正月の4日目(4月16日)
クメール正月の最終日の朝、私と家族はお寺へ行き、先祖のために準備した供え物を僧侶に寄進した。旧年は私と兄にいろいろな災いがあったため(特に、正月直前に兄は交通事故に遭った)、厄払いをしてもらうために実家に僧侶をお招きした。厄を払って運勢を高めてもらうこの儀式が終わった後、自宅で親を清める儀式をやった。親を清めることにより、家族全員が幸福に恵まれると信じられている。
実家での儀式を終え、私と従妹はお寺へ行き、伝統のクメール遊びを楽しんだ。この日、お寺ではダンスの音楽や水かけ、パウダーかけ、土鍋割りゲームなど楽しむ若者が多く集まり、とても盛り上がっていた。あまりの楽しさに調子に乗り、私と従妹は大きなバケツの水を車に積んで近所を周って水かけをしていた。多くの人が水かけを互いにし合ったりして村全体が盛り上がっていた。
クメール正月は帰省して家族と共に過ごすことが、何よりの楽しみだ。昨年も今年も、帰省して親のところでゆっくり過ごすことができたことは幸せだった。また、お寺や水かけなどで村の人々と再会し、遊びで喜びを共有できたことがとても幸せに感じた。
ニョニュム編集部に所属して3年目勤めているチューン・チュンさん
私は新年の連休をとても楽しみにしていた。久しぶりに故郷へ帰省するのは勿論だが、帰る途中の道沿いの景色を眺めているととてもリラックスした気分になる。忙しい都会の生活リズムからの開放感があった!一緒に移動した隣の人を見ても、同じような気分で故郷へ帰るのを楽しみにしているようだった。
新年の初日の4月13日は、長寿を祝う儀式をやるために家族で祖母の家へ行った。この儀式には近所に住んでいる村人がたくさん参加してくれたため、そのための準備で家族は大忙しだった。
祖母の長寿を祝う儀式は、正月の2日目まで行われた。この日の午前中は家族が僧侶を招き、お経を唱えながら僧侶にお渡しした供え物を、亡くなった祖先に送ってもらった。また、祖母の長寿を祝福する儀式の終わりには、参列してくれた村の人たちや家族全員で食事会をして楽しんだ。
夕方、近所のお寺へ土鍋割りゲームを見に行っていた。私の故郷は町から離れているため、近所のお寺ではクメール正月の伝統ゲームで遊んでいる人の姿が少なかった。特に若者の多くは夕方になると、プレイヴェイン州政府主催の「プレイヴェイ・ンソンクラン」のイベントに出かけていたそうだった。
正月の最終日の午前中は、私は姉と一緒にお寺に行った。この日、多くの村人がお寺へ行き、僧侶に食べ物を捧げたり、砂の山造り儀式に出たり、仏像を清めたりしていた。午前中いっぱい姉と一緒にお寺で時間を過ごした。午後2時頃になると、実家で両親に水をかけてもらう式をした。クメールの信仰によれば、両親に水をかけてもらうことにより、子供である私たちが幸福に恵まれ、どこにいても安全に守られ、病気も防ぐことができるのだという。夕方の涼しい時間には村の友達の家に出かけ、水かけ遊びなどで皆と楽しい時間を過ごすことができた。
今回の正月はゆっくり家族と過ごし、近所の村人と久しぶりにお寺で再会したり、正月の遊びを楽しんだりすることができ、新年の良い気分転換になった。
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