現在カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum111号の特集ではカンボジアの調味料プラホックについて紹介しましたがそのWeb版も公開します。
3回目の今回は「プラホック造りに込める思い」として有名産地の製造者の方へのインタビューを紹介します。
<前回の記事はこちら>
\有名産地の製造者にインタビュー/造り続けて12年、プラホック造りに込める思い~プラホックで生きる~
プラホックの生産地として昔から知られている地域の1つ、魚の宝庫であるトンレサップ湖に面するシェムリアップ州クリエン(Khleang)地区は、隣接する地区も含めて、昔から変わらぬプラホック製造を続けています。
その産地で12年前にプラホック製造所を始めたタン・メーサーさん(38歳)とター・スレイマップさん(30歳)夫婦にお話を伺いました。
Q1:どのような経緯でプラホック製造を始めたのですか。
姉の結婚相手(メーサー さんの義理の兄)がプラホックの製造販売を家業としている方で、学生の頃から手伝いをしに行くことが多かったんです。
長い間続けていると、だんだんとプラホック製造に価値を感じてきて、結婚後に妻と自分たちの製造所を始めることにしたんです。
ここで大量に製造するプラホックは、基本的には国内各地のプラホック市場・お店などに卸していますが、小売りにも対応しています。
また、他の地域で小規模に製造されているプラホックの仲介販売などもしています。平均すると、1日1トンぐらいのプラホックを売っているんじゃないかな。
Q2:自営を始めて12年とのことですが、どのような点に魅力を感じていますか。
まずは、このプラホックが我々の先祖が代々食べてきたクメール伝統の食べ物であるということ。
アンコールワットを建て、クメール文化を繁栄させ、クメール人が生き続けられたのは、プラホックのおかげだとも思っています。
最近は見た目や匂いを嫌がったり、ピザやハンバーガーなど外国の食べ物を好む若者も多く、だんだんプラホックから関心が離れていっているように感じますが、もう一度よく考えてみてほしいです。
みんな意識していないけれど、プラホックは私たちのクメール食文化に欠かせないもので、現代でもやっぱり切っても切り離せないものだと思うんです。
食品としても、長期保存が効き、さまざまな料理に応用できる万能さが魅力ですね。
Q3:最近のプラホック業界は、どのような状況なのですか。
市場の競争が厳しくなりつつあります。隣国のタイとベトナムでもプラホックを製造しているのが理由です。
私たちが造るプラホックはトンレサップ湖で採れる天然の魚を使っていますが、年々漁獲量も減っています。
逆に、タイとベトナムでは魚の養殖が盛んになっていて、プラホック製造にかかる費用がカンボジアよりかなり安く済むんです。なので、国産のプラホックが市場競争で厳しい状況になる訳です。
国産のものを海外に売り出す業者もいますが、製造に費やす資金が十分にないと競争に及ばないので、私たちのようなこの程度の規模では、国内の市場でしか販路を広げられませんね。
Q4:将来、このプラホック業界をどのようにしていきたいですか。
カンボジアの伝統的な食べ物として、また、私たちのプラホックを今食べてくれている人々のために、守り続けたいというのが第一です。
でもそれ以上に、プラホック造りは大勢の人の仕事を生み出す商売であるとも考えていて。
たとえば、このクリエン地区を見てみると、プラホック造りに関係する仕事で生活している家庭が多いんです。
プラホックそのものの売上だけではなく、製造や販売、輸送などで雇用があり、もっと視点を広げると別の分野にも大きく影響があるんです。
若者の雇用が足りないという問題でタイなどへ出稼ぎが増えているけれど、もし、この業界をうまく守って動かすことができれば変化はあると思っています。
その反対に、今の状況が悪くなると職を失い、困る人が増えることもわかっています。
先程の話に続きますが、隣国からの安いプラホックの輸入で市場競争はすでに厳しいです。
だけど、どうにか頑張ってこのプラホック造りを続けていかないと、カンボジアの伝統と人々の雇用の両方を一度に失ってしまう。
だから私たちは、現状維持というよりも規模をもっと大きく展開させるために頑張りたいと思っています。
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