現在カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum117号の特集では「プノンペンの生活改善を目指して!」について紹介しましたがそのWeb版も公開します。
「プノンペンの生活改善を目指して!」
著しい経済的・社会的発展により、プノンペンではごみ問題が大きな課題となっています。
2000年における1日のごみ排出量は約500トンだったのが、2020年には約3000トンにまで膨れ上がっています。
プノンペンの「スモーキーマウンテン」として知られるドンカオ区のごみ埋め立て地のごみの量は許容範囲を超えはじめ、昨年には収容が1カ所のみでは続けることができなくなってしまいました。
これに対してプノンペン都は、現在のごみ埋め立て地の約2倍の広さの土地をカンダール州オンスヌール郡に確保。
2023年から利用されるこの新しいごみ埋め立て地により、プノンペンの廃棄物管理が改善されることが期待されています。
さらにプノンペン都は昨年7月にごみ管理を改善するためごみ回収を行う民間企業3社と契約を結んだり、都民に対しごみの分別とごみを出す時間指定を昨年9月に発令するなど、状況はめまぐるしく変化しています。
今号のニョニュムは、プノンペンのごみ問題の現状と、いま行われている最新の取り組みについてレポートします!
ごみでできた学校〜ごみをなくすサーラードーン学校とは?〜
コンポンスプー州キリロム山の中にあるサーラードーン学校は、『ごみと戦う男』として知られるオック・ヴァンデーさんにより、自治体が提供した約1 ヘクタールの土地に2017 年設立された。ごみと戦う男とは、「ごみを価値のあるものにリサイクルする男」という意味。この学校は、ペットボトルやビール瓶、ストロー、ペットボトルのキャップ、車の使用済みタイヤ、ガスボンベなどの廃棄物をリサイクルして作られている。
現在、サーラードーン学校には小学校1年生から3年生までの107人の生徒が在学中。この学校により、村の子供たちへ英語学習と自由に遊べる場を提供し、ごみのリサイクルを通じてごみに対する問題意識を高めさせたいという思いを持つヴァンデーさん。
「ここではごみでお土産や学校のインテリアなども作っています。この作業を通して子供たちにリサイクルの価値と、ごみを削減して生きていく方法を伝えています。たとえば、飲み物を飲むときは水筒やマイストローを使用させ、ポイ捨ての習慣をなくすようにしています。生活の中でプラスチックを使用しないよう教育することで、将来ごみのない社会の実現を目指していきます」。
リサイクルは短期的な解決策にすぎず、ごみの削減は長期的な意識改革が最大の解決策であるとするヴァンデーさんは、学校でのリサイクル作業は20~ 30%ほどにしておき、残りの約70~80%は教育が肝心だと語る。
ヴァンデーさんはまた、地球規模で人間の消費量が増える中、ごみ問題は世界共通の問題であると考えている。
「リサイクルの仕方や価値がわからない人が多く、消費したらすぐにごみとして捨ててしまうのが一般的です。そのため、この学校ではごみからリサイクルしたものを写真にまとめ、ここの子供たちだけでなくこの学校を訪問してくれた人々にごみの実情とリサイクルの価値を知ってもらい、将来皆が自らごみの処理と削減を積極的にしていくようにしたい」と話す。
この学校を作った当時は、周りの人から差別を受けたことがある。「あいつこそごみ人間だ」とか「ごみ野郎」といった見下す発言をする人もいたという。しかし、ヴァンデーさんはそういった人たちに怒りは湧かなかった。
代わりに「ごみはリサイクルできるが、ごみより困る人はリサイクルできない」というスローガンを立てた。つまり、ごみはリサイクルでき価値あるものに変えられるが、考え方が乏しい人が生まれれば、世の中の役に立たないのだと。
「私は捨てられたごみは嫌いではありませんが、ごみの管理や処理の仕方がわからず公共の場所に捨てる人は嫌いです」と熱く語る。
サーラードーン学校を設立する前、2010年から2013年までコンポントム州のホテルで責任者として働いていた経験を持つヴァンデーさん。利己を追求するより社会に貢献できる仕事をしたいと考え、2014年からサーラードーン学校設立を開始した。
子供の時からリサイクルの価値観が備われば、将来プラスチックの使用を減らすことができると信じている。サーラードーン学校はもともとプノンペン近郊にあったが、土地の使用で問題が生じて今の場所に移ったという。
困難があってもそれを乗り越え自分の信念を貫くヴァンデーさん。
「今の学校ができたのは支援者のみなさんの協力があったからなんです」。
芯の強い人だからこそ礼節を重んじる人柄がうかがえた。
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