2017年10月から大規模な改修を行っていた日本橋が先日、4月3日に開通しました!
トンレサップ川にかかるチュルイ・チョンバー橋は「日本・カンボジア友好橋(日本橋)」の愛称で親しまれ、住民にとって欠かせない橋。
架かっているのが当たり前という感覚さえしてしまいますが、みなさまはこの橋の長い歴史をご存知でしょうか?
先日(3/29)、開通前の日本橋を見学させていただき、今回の改修を主導された大林組の辻本邦男所長にご説明をしていただきました。
本記事では、日本橋の歴史、そして今回の改修について、辻本所長からお聞きしたお話を加えながらご紹介していきます。
いつからあるの?
さかのぼること半世紀。この橋が最初に架けられたのは1963年。内戦よりも前のことなのです。
その当時、トンレサップ川にも橋は1つも架かっておらず、人々はフェリー(や船)に乗って行き来する方法しかありませんでした。待ち時間も長く、簡単に行き来できない状況は、交通の面でも経済の面でも非常に不便で、国の発展を妨げる原因でもありました。
1959年、カンボジア政府は橋建設の国際入札を行います。
応札したのはフランスと日本の2グループ。
フランス統治時代も長く、フランスの技術で建設されたインフラ設備も多いカンボジアであるため、この橋建設もフランスが行うだろうと多くの人が予想したと言います。
しかし、最終的には日本の業者と日本政府が協力し、「カンボジア自国予算で日本が技術提案」を行うという形で橋の建設が決定しました。(戦後準賠償として架設機材の一部を供与。)
驚くことに、「日本橋」と呼ばれ出したのはこの当時からだそう。建設が進むにつれて誰からということなく自然と住民の間で広まっていったようです。
誰もが待ち望んだトンレサップ川に架かる橋。
人々の生活はとても便利になり、日本が行った建設は当時大変な評判となったのだとか。
しかし悲しくも、時代は内戦へと突入します。
1972年。橋は爆破され、落橋してしまいます。
激化する内戦時、橋が再建されることはありませんでした。
内戦が終結し、その後行われた復興会議でシハヌーク前国王が日本に一番に要請したのは「日本橋の修復」。
「辛い戦争の記憶を遠ざけ、新しい国を造っていこう、それには戦争による破損の象徴たるあの橋を作り直すことだ」という思いがあったといいます。
(参考:イチからわかる!JICAプロジェクト「日本・カンボジア友好橋を大改修」)
そうして、1994年。無償資金協力によって橋は再建されました。
「日本・カンボジア友好橋」という名は、この再建完工時にシハヌーク前国王によって名付けられたのです。
それから25年以上の時が過ぎ、プノンペン、そしてカンボジアも変わりました。
日本橋はプノンペンと地方を結ぶ必要不可欠な要所です。その交通量は初期建設時、また再建時の比でありません。橋本来のキャパシティーを超える使い方を続けることは、何よりも大切な「安全性」を欠く結果になり得るのです。
経済成長著しいこの国の交通や物流を支える大事な橋であるからこそ、全面的な改修が必要でした。
このような大規模工事に踏み込めたのは、2014年に中国の借款によって建設された日本橋に平行して架かる第二橋の存在も大きかったようです。
どこを改修したの?
さて、2017年10月に始まった無償資金協力の大改修。
主な改修点は
①アプローチ部の架け替えと
②橋全体の道路舗装や鋼橋塗装の再施工 です。
架け替え前のアプローチ部分はなんと50年以上使い続けていたもの。長い間ご苦労さまでした、と言いたくなりますね。
そして橋全体の塗装ですが、一度全ての塗装をはがしたのだそう。その作業に約8か月がかかったといいます。
注目すべきはその塗装をはがす方法。「循環型エコクリーンブラスト工法」という日本の技術を用い、環境に配慮した方法で行われました。
そして塗り替え後、日本橋は「青い橋」になりました。
また、道路舗装にも日本の技術が用いられました。
鉄板にそのままアスファルト舗装をするのではなく、2層の間にSFRC舗装を敷いています。こうすることで、橋全体に重さを分散させることができ、橋を長持ちさせることができるのだそう。
また通行してみるとわかりますが、車用、バイク用、歩行者用と3レーン間に段差があります。
改修前のことを覚えていらっしゃる方はご存知かもしれませんが、実はこの段差、初期建設時と同じ仕様なのです。
というのも、1963年に設置された鉄板の形がこのように3段階だったのです。
平らにするために低い部分の舗装を厚くすると、橋全体に掛かる重さが増えすぎるそうでこの仕様は変えられないとのこと。
歩行者用レーンには親子のほっこりイラストもありますよ!
2017年10月に始まった大改修ですが、当初の開通予定は2019年6月でした。
なぜ2ヶ月も早く完成したのでしょうか。
(予定よりも早くプロジェクトが終わるのは前代未聞!?)
日本から現場に集った約25名の技術者、そして夜中まで作業を行った総勢150名のカンボジア人作業員。
「みんなの頑張り」だと辻本所長は言います。
最後に、1963年から現在まで日本橋にはずっと変わらない箇所があるのです。
落橋した部分を再建し、アプローチ部分を架け替えたということは…
そう、中間部分の両端は初期建設時のものなのです。
継ぎ目をよく観察しながら追っていくとわかると思いますので、橋を通行される際はぜひ注意して見てみてください。
プノンペン側の橋入口にはシハヌーク前国王直筆の文字が刻印されたモニュメントが。
3度に渡り、カンボジアと日本が協力して作ってきたチュルイ・チョンバー橋。
たくさんの人々の思いが詰まった橋、皆で大切に使っていきたいですね。
(写真では見えずらいのですが、中央下にシハヌーク前国王直筆の文字が刻印されています。)
(2019年4月3日)
谷垣 萌(タニガキ モエ)
1995年生まれ、大阪府出身。大学卒業後、2018年4月~CJSスタッフとして
ニョニュムショップのあれこれを担当しながら、メディア業務にも携わる。
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