NyoNyum120号特集:⑥コロナ禍で頑張る現地企業
NyoNyum120号特集:⑥コロナ禍で頑張る現地企業
2022.10.06

現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum120号の特集のWeb版です。

「より住みやすい街を目指してーシェムリアップの今を歩こう!ー

シェムリアップ州は世界遺産アンコールワットを有し、カンボジアで最も観光が盛んな地域。しかしこの2年来、新型コロナの影響で観光業が大打撃を受け、まるでゴーストタウンのようになってしまった市内の様子が、日々SNS等で伝えられていました。

そんなシェムリアップは、コロナ前の2018年にプノンペン、バッタンバンとともに、日本政府が支援するASEANスマートシティ・ネットワークのパイロット都市として採択されました。また、シェムリァップ州政府は2020年11月30日より市内38本の道路整備事業を開始し、コロナ禍で町全体が静まり返っている中での工事に人々は驚きを見せましたが、13カ月ですべての工事が終了し、街は美しく生まれ変わりました。

そして今、コロナ禍を抜け出しニューノーマルの生活を目指すカンボジアには、少しずつ観光客やビジネス客が戻り始めています。待ち望んでいた観光産業の再稼働に期待が膨らむシェムリアップも、この38本の道路整備を皮切りに信号設備、街灯、歩道等の整備が進み、スマート化に向けて大きく踏み出そうとしているように思われます。

シェムリアップが目指すスマートシティとはどういう姿なのでしょうか。そして現地の人や事業者たちは、この新たな発展への取り組みをどのように感じ、何をしようとしているのでしょう?

 

コロナ禍で頑張る現地企業

新型コロナウイルス感染症の影響により、世界各国と同様にカンボジアでも観光業に携わるビジネスの多くが休業を余儀なくされた。首都プノンペンはともかく、観光業に依存しているシェムリァップ市民も大きなダメージを受けていた。だが、生き残れるように、自社の従業員の雇用を確保するために、営業継続のために頑張っている企業もあった。その会社の事情を伺ってみた。

 

Angkor Cookies~観光客にカンボジアのお菓子文化をアピールしたい!~

「私たちの店もコロナで大打撃を受けました。売上はほぼなくなり、赤字ばかりが増えました。2人のスタッフだけで店を維持しながら、他の既存スタッフは解雇ではなく一時的に実家などに戻ってもらい、状況が回復したら呼び戻すことにしました」。こう語るのは、シェムリァップで長年にわたり「アンコールクッキー」の製造・販売をしているAngkor Cookies KH Co., Ltd.のマネージャーノル・ヌーンさん(37)。日本にいるオーナーと日々遠隔でやり取りしながら店を守ってきたが、ヌーンさん自身も先の見えない状況に不安を抱えていたという。だが、オーナーからは事業を縮小しながらも維持していくという意思を伝えられ、自分がしっかりしなければという思いに変わった。

笑顔でクッキーを手作りしている女性スタッフ

ヌーンさんは、「できる限りスタッフが働く場を守ってあげたいという思いが強かったです。そのため、店舗の賃貸料の値下げ交渉や、シフトで働くスタッフのスケジュール調整、電気代の削減など、あらゆる手段で節約する日々でした」と当時を振り返る。今年の4月頃から国内観光客が戻ってきたものの、カンボジア人客は外国人が好むような土産物にお金を使うわけではない。6月頃から日本人を中心とした外国人客がカフェに訪れるようになったが、コロナ前の状態には程遠いという。

この苦しい期間中、ヌーンさんもシェムリァップの街の変化を目の当たりにしてきた。「スマートシティの計画について、私は聞いたことはありません。でも、車道、歩道、自転車用道路の整備、防犯カメラの設置、ゴミの回収の徹底などが行われ、以前とは異なる美しい街になり、私たち地元住民にとっても住みやすさが増しました。今後、外国人観光客や訪問客を受け入れるために、さらなる整備を期待したいです」

明るい人柄のヌーンさん

感染者数が落ち着きを見せ始めたこの時期に思うことを尋ねると、「スマートシティ計画が進めば、街はさらに発展すると思います。私自身ももっとスキルアップしなければと思います。また私たちの店も、ニューノーマルの生活に向けて新しいお菓子作りや、品質向上、パッケージ、増産体制の準備など、これからシェムリァップを目指して来てくださるお客様に対応するためにさまざまな計画を立てているところです。自社工場を持ち、お菓子作りの経験豊かなスタッフがいること、これが私たちの強みだと思っています。これを活かして日本人向け以外の新たな商品も開発し、マーケットの多様化をしていく考えです。苦しい状況の時間をただやり過ごすのではなく、この時期を準備期間と考えています」と語る。

土産物に最適のアンコールチョコレートとクッキー

Angkor Cookies
住所:On the main road to Angkor Wat,in front of Sofitel Hotel, Siem Reap
電話:012-315-804, 063-964-770
営業時間:6:00-19:00(everyday)

 

NATA~カンボジア流のファッションを発信~

遺跡観光地として名高いシェムリァップ。伝統的な手工芸品を土産物として販売する市場やショップが中心だったの街に、コロナ前にPedro、Adidas、Zando、といった外国ブランド品を扱う店が増えたのが印象的だった。その中で、カンボジア初のファストファッションブランド「NATA」が5年ほど前にシェムリァップに出店している。

同店の切り盛りをするカンボジア人店員のマリーさん(27)は、「私たちは、カンボジアの気候やライフスタイルに合ったファッションの提案をしています。カンボジア人のお客様に支えていただいていますが、外国人の方にも目に触れる機会、手に取っていただく機会を広げたいと思い、外国人観光客の多いシェムリァップに出店しました」と話す。

マリーさん

だが、新型コロナが蔓延し始め、大きな危機に直面した。「お客様はまったくと言っていいほどいなくなりました。国境が閉鎖された時期には、商品が輸入できなくなるという苦しみを味わいました」

プノンペン店を皮切りに、コロナ前からシェムリァップ、シアヌークビル、バッタンバンなどに店舗を展開し、お客様の中心が国内のカンボジア人で経営的に安定していたため、コロナ禍でも店は維持され従業員も安心して生活できたという。今年に入ってカンボジア国内の感染者数が少なくなり、政府が入国制限を緩和したことで少しずつ国内外の旅行者が戻ってきた。

マリーさんは今後の店づくりについて、「来店するお客様はコロナ前の50~60%ほどです。これからさらに観光客が来ることを考えて、さまざまなプロモーションを企画しています。世界的なファストファッションブランドと異なり、カンボジアのセンスでデザインした商品をそろえることで差別化を図れるのが私たちの強みです。そのためにも、市場のニーズをしっかりとキャッチし、それに見合った最新ファッションを生み出していきます」と話す。

NATA
住所:Sivatha Blvd, Svay Dangkum, Siem Reap
電話:063-965-728
営業時間:8:00-21:00

 

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