(日本語) コロナ禍の今こそ、クメール人の目線でアンコールの魅力を発信したい! ~ニョニュムスタッフ現地リポート~
(日本語) コロナ禍の今こそ、クメール人の目線でアンコールの魅力を発信したい! ~ニョニュムスタッフ現地リポート~
2020.07.02

最近、カンボジアの地元メディアによると、新型コロナウイルス感染症の影響で海外からの観光客が激減した世界遺産アンコールワットが有名なシェムリアップ市では、5月半ばごろから国内の観光客者数が増えてきたため、遺跡周辺の土産物店やレストランなどの営業が開始しています。

これまで海外からの観光客からの収入源に頼っていた業者らは、こんな状況だからこそ海外の観光客に頼らず、収入を得るため少しでも国内の観光客に向けの営業をする事に切り替えたという。

カンボジア国内では、4月は帰国者・入国者などの感染者が日に日に増える傾向があったが、5月頃から国内感染は見られず、プノンペンをはじめとする経済拠点では、国内の経済活動が復活する傾向がみられています。

シェムリアップの業者によると、新型コロナ感染症の広がりにより、コロナ前と比べて収入は7~8割減ったというところも。中には銀行から借り入れをしている者もおり、観光業以外の他の副業がないため、開業をする事で少しでも収入を上げたいという思いが強い。

そんなニュースが発信される中、ニョニュムスタッフであるノップ・ヴィサールがシェムリアップを訪問してきました。

カンボジア人の目線でアンコール遺跡群の素晴らしさをリポートします!

 

ノップ・ヴィサールの3日間のシェムリアップツアー

先週末、故郷であるシェムリアップ州へ妻と二人で行ってきた。理由はプノンペンの王立文化芸術大学で講師を勤める妻が、コーケー遺跡を見学したいと言ってきたからだ。

10世紀前半に都が移転したコーケーの地での王朝の歴史を二人で語り合いながら、プノンペンを出発。

 

1日目

お昼ごろ車でプノンペンの渋滞を抜け出し、整備された国道6号線で順調かつ快適なドライブをスタート。

国道沿いに新しく生えている緑が広がる雨季の初めなりの風景を楽しみながら、約5時間かけてシェムリアップにたどり着いた。

翌日は家族とゆっくりと過ごし、みんなが次の日のコーケー遺跡観光プランを組んでくれた。

8年間の日本留学から1年半前に帰国して首都プノンペンで暮らしていると、やはり都会だから様々な業界が密集し、人々の生活はせわしなく感じられる。

そんな都会から脱出し、観光業に頼る小さなシェムリアップ市だからこその、のんびりとした人々の生活に浸ることができた。

 

2日目

バクセイ・チャムクロン遺跡にて

早速姪っ子たちを呼んで、アンコールトムへ散策に出かけた。

新型コロナウイルス感染症の影響で休校中の姪っ子たちとゆっくりとした時間を過ごしたかったので、プノンバケンの手前の駐車場に車を停め、徒歩でプノンバケン北部の麓にあるバセイチャムクロンという遺跡をスタートポイントして散策を始めた。

クメールの歴史教科書に書かれたことを思い出す。

9世紀にレンガ造りでできたこの遺跡には、カンボジアの建国神話でもある「カンプ仙人」と「メーラー女神」の間にカンボジアという国が誕生したということが書かれた碑文があるという。

それを確かめたくて、今回この遺跡を登ってみた。

碑文は当時のクメール語の古文だからよく読めないが、残っていたその文字を読むと、何とか「メーラー」と読めるような文字があった。

 

次は南門を潜ってアンコールトムに入った。

今回の散策の目的の一つはアンコールトムの城壁の堤防の上を歩くことだった。

歴史を振り返ってみると、アンコールトムができた12世紀後半の時代には、チャム(現在のベトナム中央にあった民族国)の侵略が何回かあったと言われている。

その侵略から都を守るためにアンコールトムが建設され、高さ約7メートルの城壁の内側に幅10メートルくらいの堤防を盛ったという。

現在この堤防はきちんと残っており、その上を散策する目的で私たちはアンコールトムの南門から東方向に歩くことにした。

アンコール・トムの城壁の堤防上を散策する様子

 

アンコールトムは、アンコール王朝の中でも最強の王であるジャヤバルマン7世王が建立した、一辺3キロメートルの城壁によって四角形に囲まれた都だ。

このような歴史を思いながら城壁の中央にある南大門を約1500メートル歩いていくと、アンコールトムの城壁の角当たりにたどり着いた。

そこにプラーサート・チュルンという小さな遺跡があった。

みんなで森林浴しながらこの堤防を歩いていると、通り掛かったサイクリングをする人の姿を目にしたり、城壁と共に背を伸ばした木々の中に咲く大樹の花、城壁の上から眺め下した森林の中から浮かんだアンコールトムの外のお堀の様子が眺められ、本当に楽しめる散策だった。

(地元の人の話を聞くと、アンコールトムの南門を西方向に歩いていくと、角当たりにあるプラーサート・チュルン遺跡からサンセットが楽しめるという)

城壁角にあるプラーサート・チュルン遺跡にたどり着いた

 

散策を終えて、市内にちょっと寄ってみることにした。

観光客でいつも賑わいているオールドマーケット周辺。

今年の4月頃から新型コロナウイルス感染症拡大の防止策として、海外からの観光客の入国が制限されて以来、ナイトマーケットやオールドマーケットの周辺には観光客の気配があまり見えなくなったという。

確かに、4月中旬頃に私たち夫婦が訪れた時、土産物屋さんが閉まっており、路上の屋台、マッサージブースなどが姿を消し、シーンとしていた。

しかし、2か月半ほど経った今回の街の風景はちょっと違っていた。

外国人観光客はあまり目にしないが、開いている店の件数が増えていた。

夜になると外国人観光客でいつも賑わいているパブストリート辺りも電飾の光が灯され、開業を再開したような雰囲気があった。

外国人の観光客でいつも賑わうパブストリート周辺のレストラン街の今の様子。

 

3日目

コーケー遺跡群を象徴するプラーサート・トム遺跡にて集合写真

私たち夫婦にとって2か月半ぶりの今回の帰郷の旅。

いよいよ3日目のコーケー遺跡見学当日になると、いつの間にか全兄弟の家族が子供を連れて集まってきて、総勢20人でのコーケー遺跡ツアーとなった!

久しぶりに訪れる私たち夫婦と一緒に楽しい時間を共にしたいという思いだったのか、新型コロナウイルス感染症の影響で休校の子供たちに加え、兄弟も時間を持て余していたからなのか、今回の家族ツアーが実現した。

コーケー遺跡の見学は非常に良かった。

この遺跡はシェムリアップ市の北部に位置し、車で町から約2時間半。

内戦時代はコーケー遺跡エリアはクメールルージュの支配地域だったが、平和と現代の経済発展のお陰で、遺跡までの道はよく整備されていた。

道沿いに村が点々とあった。

都会であまり見かけられなくなった高床式のクメールスタイルの民家が並ぶ風景が目に入った。

地方には農村がまだ多く残っているため、高床式の家一軒、一軒に実が食べれる果物の木や、犬、鶏のような家畜の姿があり、さらに北に進むと高地に色々な作物の畑の風景が広がっていた。

 

遺跡を登る前みんなお祈りする

小雨に降られながらお昼頃、コーケー遺跡群にたどり着いた。

高地だからこの季節になると雨がよく降るという。

このコーケー遺跡は10世紀後半にジャヤバルマン4世という王のもと、プノンバケンが中心であったアンコールの都を移したといわれている。

地理的に考えるとこのコーケー遺跡は、昔から魚の宝庫であるトンレサップ湖に面したアンコールの都とラオスのワットプー遺跡の間に位置し、当時栄えていたこの二つの町の間に位置したため、交流都市として立地的に良かったのかもしれない。

高さ35メートルのピラミット型で、壮大な砂岩という岩で覆われ、周囲の森林から壮大に空にそびえる、まるで空中に浮かんでいるような姿に驚いた。

遺跡の横に取り付けられた木材の階段を登っていくと、遺跡のてっぺんから360度が見渡せ、1000年以上の歴史を持つこの都の魅力に耽りながら景色を眺めていた。

遺跡の頂上で記念撮影

 

今回、「行って良かった」という思い出深い旅となった。

日本留学前に日本語のガイドをしていた頃にクメールの歴史を約5年間学んだ私だが、今回初めて訪れたコーケー遺跡には心の中まで魅了された。

やはり、歴史的背景を知りながら遺跡観光をすると、その魅力はさらに深いものとなる。

海外の観光客が激減しているなか、今回は私たち20人以外にも、他のカンボジア人見学客が何組かいた。

我々クメール人の祖先が残してくれた遺産。

どんな状況にあっても我々クメール人が守り続け、その魅力を世界に発信したい。

世界がコロナ禍にあるとはいえ、カンボジア国内の経済は落ち着き始めているような感じだが、まだまだ海外からの観光客は見込めない。

だが、外国人観光客で賑わういつもの遺跡の風景と違っていても、国内観光客の姿ばかりでも、コーケー遺跡の魅力は変わらない。

自国の歴史の証である遺跡には海外の観光客が来る来ないに関わらず、もっともっと国内観光客の姿が溢れると良いなと思った。

 

この記事を書いた人:ノップ ヴィサール(Nop Visal)

クメール語/日本語・翻訳通訳者
シェムリアップ生まれ。カンボジア国内での旅行会社勤務を経て、日本に8年間滞在し、明治大学と筑波大学大学院を卒業。日本国内でのカンボジア人留学生協会の関東エリアの会長も務めた。2019年カンボジア情報サービス入社し、クメール語/日本語の翻訳通訳をはじめ、記事執筆等も行なっている。
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