NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、アンコールワットを始めてみた子供の感想について。
近くて遠いアンコール遺跡
私が運営するNGOでは、2010年から、アンコール地域にある学校の生徒を招待して、バイヨン寺院修復現場の社会見学会を実施しています。
きっかけは、この地域の小学校を回る中で、一度もアンコール・ワットやバイヨンを音連れたことがないという子供があまりにも多かったことにあります。
カンボジアでは遠足や社会見学会といった学校行事がないこともありますが、確かに、遺跡を見学しているのは、ほとんどが外国人観光客です。
これはおかしいのではないか、遺跡修復チームの専門家が母体となってできたNGOだからこその支援ができるのでは、との思いから、遺跡までの交通費や参加する子供たちの昼食代の寄付金を募り、カンボジア人遺跡修復専門科が中心となって実施することにしたのです。
午前中だけの行程で、最後に感想文を書いてもらうのですが、その中で、特に印象的だった生徒の作文を紹介したいと思います。
「見るもの聞くものどれも興奮しました。参加できて本当に良かったと思います。先生、またいけるかなぁ・・・。
遺跡は今回が初めてでしたが、ぼくの人生で最後になるかもしれない。それでも勉強のチャンスがあったことに、泣きたいほど感動しています。
アンコール時代のことって、今まで祖父や両親も教えてくれなかったよ。生まれてなかったから仕方ないかなあ。何とかわかるようになったけれど、もっともっと知りたい、一日中この勉強を続けたかったよ。
それに自分がカンボジア人に生まれたこと、とっても誇りに思いました。そしてカンボジアのために日本政府が自分の財産や時間を費やして修復してくれることにも感謝しています。
最後に、この勉強会に、昼御飯だけでなく朝ご飯や晩ご飯も付けてほしいです。」
最後の一文が何とも微笑ましいですが、この切実な思いをなんとか受け止めて、カンボジアの子供たちがアンコール・ワットやバイヨンを普通に見学できる時代が早くきてほしいと願うばかりです。
(この記事は2015年8月に発行されたNyoNuym78号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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11:村の中学校が開校した!
12:未来へのバトン
13:農村案内ツアー開始!
14:雨降って地固まる
15:20年の重み
16:カンボジア遊農民のキュウリ畑
17:治水工事をめぐるてんやわんや
18:教師がいない危機に直面するバイヨン中学校
19:バイヨン中学校の菜園ビジネス
20:1日1000リエルのアンチエイジング体操
21:近くて遠いアンコール遺跡
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