今月発行したNyoNyum106号の特集は、「起こせ!カンボジアの農業革命 ~カンボジア農業の秘めた可能性~」と題して、カンボジアで農業発展のために奮闘している方々を取材しました。
今回は取材を重ねるうちに、どんどん多くの方に伝えたい、知ってもらいたいことがたくさん出て盛りだくさんの内容になりました。
そこでWEB版では誌面では載せきれなかった部分をいくつか追記し、全6回で紹介したいと思います。
今回はカンボジアの農業が直面する6つの問題について。
起こせ!カンボジアの農業革命 ~カンボジア農業の秘めた可能性~
急速な経済発展に伴い、工業化が進むカンボジア。
一方で広大な農地では、せっせと農作業に励む人たちの姿が見られます。
そのなかには、カンボジアの農業の可能性を見据え、そして応援したいと、新しい技術や知恵を伝えながら現地の農家たちとともに汗を流す日本人の姿も。
カンボジアの農業をめぐって、今、何が繰り広げられているのか。
カンボジア人と日本人の農業の舞台での取り組みをご紹介します。
カンボジアの農業が直面する6つの問題
カンボジアの農家たちが抱える問題はさまざま。丹精込めて育てた農作物が売れない、まったく採算がとれない、仲介人にだまされる…。
こういう問題を抱えた農家たちは大損し、借金を抱えた挙句、農業をやめて都市部や海外へ出稼ぎ労働者として流出しています。
まずは、そんな農業をめぐる問題として具体的にどんなことが挙げられるのか、解説します。
問題① 農業用水
農業用の灌漑が整っていないことから、自然の雨水に頼った農作業が中心のカンボジア。定期的に農作物を作れず、できた作物の質も良くない割に値段が高くなる。
さらに、農地にポンプで送水するため、ポンプの購入やガソリン代などの資金が必要だ。自分の農地に池を掘ったりして、独自の灌漑を整備している農家もある。
近代的な灌漑を求める農家が増えてきたことにより、灌漑設備に投資する資金が必要となっている。
問題② マーケット
出来上がった農作物が上手く売れない、または安くしか売れない。こんな状況は、農家たちのやる気を失わせる。
やる気を失った農家の中で、主業であった農業を副業にしたり、農業そのものをやめて都会や海外へ出稼ぎをしに出ていく者も増えている。
特に、タイとの国境に近い地域で農業を営む農家たちがよくこういった問題を抱えている。
問題③ 技術
質の良い農作物を効率的に作るためには栽培技術が必要不可欠だ。技術を活用して効率化を図れば収穫高が上がり、作物の値段を抑えることにもなる。
一方で、その技術を研究し、普及する組織や、農民たちがそれを学んだりできる組織も必要となる。
問題④ コミュニティー
いわゆる日本の農協のような、農家のコミュニティーを設立することが重要となる。
これにより、農家が互いにコミュニケーションをとり、技術面での共同研究や、加工場への共同投資など、多角的な協力をし合えるようになるほか、市場の要求に合うように生産調整をしたりすることが可能になる。
問題⑤ 天候
カンボジアでは洪水や干ばつなどの天災がしばしばある。カンボジアの農家たちは主に昔ながらの農作のやり方に頼っているため、天候による影響を受けやすい。
特に昨今の異常気象により、農地の質にも悪影響が出て、害虫の問題も生じている。
問題⑥ 資本
資金的な問題については、カンボジア農家の経済状況はまだ潤沢とは言えないため、近代的な農業設備投資のための資金がない。
そのため、このような投資をしてきた農家のほとんどが、金融機関(主にマイクロファイナンス)から高利で借金をしてきた。
政府の決定で貸付金利に制限が加えられたものの、着実にお金を返す農家もある一方で、借金への負担がまだまだ大きいという。
農業設備への投資は金額も大きく、資金不足という問題を抱える農家が少なくないのである。
農民が求めるもの
こういった問題を解決するためには、行政、民間が一体となった協力体制が求められる。
まずは、政府が農家を育成する仕組みを作るのとともに、農家のコミュニティー発足を推進することが重要だ。
次に、コミュニティーに灌漑設備投資やメンテナンスをする資金を持たせることも大事となる。
そして、農作物が円滑に市場に出回るようにするために、コミュニティー間の情報交換や、市場とのマッチングなどの調整を行う必要もある。
農家や若手人材を育成するプログラムや農業研究の促進など、官民学で連携して改善していく必要もあるだろう。
つづく
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