現在カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum111号の特集ではカンボジアの調味料プラホックについて紹介しましたがそのWeb版も公開します。
味の決め手はプラホック(PRAHOK /ប្រហុក)
古くから代々に伝わり、造られてきた、カンボジアの調味料プラホック。
クメール料理の「味の決め手」であり、一年中欠かすことのできないこのプラホックのことを、みなさんはどのくらいご存知でしょうか。
毎年12月から2月は、プラホック造りのシーズン。
仕込み真っ最中のこの時期に、さまざまなカンボジア人を訪ねてみました。
カンダール州では自家製プラホックの造り方を教わり、シェムリアップでは情熱をもってプラホックを造り続ける職人にお話を伺い、若者のクメール料理離れがささやかれるプノンペンでは、プラホックへの思いとともにクメール料理に携わる料理人たちに出会いました。
カンボジア人のプラホック愛、読んで感じてみてください。
プラホックとは?
プラホックは、トンレサップ湖とそこから派生する川で採られる淡水魚を塩漬けにして造られるカンボジアの伝統的な発酵食品のこと。
英語でフィッシュペースト(Fish Paste)と呼ばれるようにドロッとした形状をしており、独特で強い匂いを持つ。
プラホックがなければクメール料理は成立しないと言えるほど、多くのクメール料理に調味料として使われている。
一材料として他の食材・調味料と料理されることが多く、単体で食べられることは珍しい。
農村部や都市部に関係なく、1家族あたり年間約10キロものプラホックを消費していると言われており、カンボジア人の食生活からは切っても切り離せない食品なのだ。
保存が効き、タンパク質の重要な供給源でもあるので、とりわけ田舎の生活では、農業が忙しさを増す時期に重宝される。
いつ、だれが造っている?
プラホックに使用される魚の漁獲時期である12月下旬から2月上旬あたり(年によっては1月中で終わる場合もある)が、プラホック造りのシーズンである。
しかし、この時期だからといって、いつでもどこでも勝手に魚を釣って作られる訳ではない。
その年の降水量によって雨季のトンレサップ湖の水位は異なり、水位が上がれば上がるほど魚の産卵範囲は広がり、漁獲量も増える。そしてその逆も然りである。
そのような天候状況を元に、漁港ごとの漁獲時期と漁獲回数を農林水産省・水産局が毎年設定し、シーズンが近づく11月から12月頃にその情報は公開される。
基本的には漁獲は専門漁師によって行われ、一般の人々は漁港に卸された魚を購入する。
有名なプラホック産地 (※地図中の薄赤●)
大規模な製造を行い、「プラホックといえば!」と言われる有名な産地が国内に数か所ある。
●シェムリアップ州
・Sot Nikum郡 Kampong Khleang地区
・Chi Kreng郡 Anlong Samnor地区
●コンポンチュナン州
・Chong Koh エリア
・Prasat Kampong エリア
・Chhunk Trou エリア
●カンダール州
・Ponhea Leu郡 Kampong Luong地区
国内最大のプラホック市場 (※地図中の紺◎)
バッタンバン州には、カンボジア各地で製造されたさまざまなプラホックが集まる国内最大のプラホック市場がある。
各地の市場などでプラホック屋を営む人々が仕入れのために訪れたり、地元の人が利用するほか、外国人の観光地にもなりつつあるそう。
(Ek Phnom郡 Prek Narin地区 Anchan村 Stung Sangke川近く)
漁港に集まって
トンレサップ湖、トンレサップ川、メコン川などに点在する漁港。この漁港ごとの漁獲スケジュールが農林水産省から発表される。
特集②で紹介している家庭・個人単位でのプラホック造りは、大体このエリアで行なわれる。
どんな種類があるの?
骨を残すか残さないか2つに分けられ、使用する魚は地域で異なり、種類によっては高価なものも。発酵期間の長短も含めて、カンボジア人にはそれぞれお気に入りのプラホックがあるそう。
※頭部とワタの部分は取り除いて造られます
ប្រហុកត្រីកំភ្លាញ(プラホックトレイコムプリーン)
焼きプラホックや、生プラホック、プラホックダレなどに使われる
ប្រហុកត្រីរ៉ស់(プラホックトレイロッ)
日本語では雷魚という種類で、高価だが、どんな料理にも合う。
ប្រហុកត្រីរៀល(プラホックトレイリエル)
他の魚も混ぜて造られることが多い。家庭で使用される一般的なプラホック
混ぜて造る際によく使われる魚
・ត្រីអំពិល(トレイオンパル)
・ត្រីគូទវែង(トレイクッヴェイン)
・ត្រីជាកកុក(トレイアイッコッ)
市場のプラホック屋さんでは、下の写真のようにこんもりと盛られて販売され、必要な量を伝えると木のヘラで容器に詰めてくれる。
どの地域で、何の魚を使って造られたものかも教えてくれる。
次の記事はこちら!
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