近年、目覚ましい経済発展を遂げるカンボジア。
国内の急速なデジタル化で情報を得た若者は国外へ飛び出すものも多いです。
日本へ向かう若者もここ数年で数倍に増えてきています。
勉学に励むもの、母国の発展のために働きながら技術を習得するものなど。
日本で日々奮闘しているカンボジア人の姿をNyoNyumの姉妹誌NyoNyum Khmer内の「レポートフロムジャパン」というコーナーを通して紹介してきました。
そして、上記コーナーを「是非、日本語でも紹介して!」という声が多かったので、読者の日本人の方や日本語学習するカンボジア人の方にも知ってもらいたいということでNyoNyum webで日本語版でも紹介していきたいと思います。
今回は金属リサイクルを手掛ける再生総合商社に勤めているヒム・チャンリットさんです。
「勇気と前向きな努力、効率の良い金の使い方を持つことは、私の日本留学の成功の鍵だ」
ヒム・チャンリット(Him Chanrith)さん(25歳)は、金属リサイクルを手掛ける再生総合商社、株式会社川嶋に勤めている。
2014年に首都プノンペンにあるベルティーという私立の高等学校を卒業した後、プノンペン王立芸術大学美術学部で半年間勉強した。
在学中にアジアの経済先進国であり、カンボジアに多大な支援を提供している日本の文化や伝統についてもっと知りたいという好奇心が高まり、2015年初頭に日本に留学することを決意した。
プノンペンの日本語学校に通い始めて3か月間経ったころ、学校から日本留学の情報を耳にした。
日本語学習経験は短かったものの、勇気をもって留学のための手続きをすることにした。
その結果、2015年の4月に東京都にある日本語学校へ留学することとなった。
来日当初、チャンリットさんは日本語をほとんど喋れなかった。必死で日本語学習に励みながら、アルバイトでお金を稼ぐ必要もあった。
アルバイト先は、学校の紹介先である食品包装会社。自国と異なる文化や習慣を持つ日本での生活に適応することは非常に大変だったが、学びも多かったという。
日本で日本語を勉強した最初の1年半の思い出を、彼は次のように語る。
「日本語学校で勉強している間、私は日本語で日本の教育の在り方について多く学べました。また、日本の食文化や日本人の性質、働き方など、いろいろ学ぶことができました。さらに、中国やネパール、タイ、ベトナムなどから来た他の留学生もいて、彼らからもいろいろ学びましたね。日々新しいことを目の当たりにして発見の連続でした。この日本語の勉強やこのころの生活が大学に行くための基盤になり、あとになって本当に役に立ったと思います。」
授業料を自己負担する「私費留学」で日本留学を決めたチャンリットさん。
「自分は留学当初から、学費、生活費などすべて自分で払わなければならなかったので、勉強しながらお金を稼がないとなりませんでした。だからこそ、稼いだお金は有効に活用しないとなりません。安いアパートを探したり、自炊したりして節約しました。日本で勉強するには、自分自身で多くの努力をする必要があります。資金に余裕を持っておくことは、その努力を実らせるためにも欠かせないと考えました。」
この考えが、日本での勉強を成功させる秘訣だ。
そのたゆまぬ努力の結果、チャンリットさんは2017年に聖学院大学国際政治経済学部に進学できた。
そして、大学1年生の時から公益財団法人ロータリー米山記念奨学会から4年間の奨学金を受られることになった。
「このロータリークラブの奨学金のほとんどは、各地域の学校に支給されています。私を含めた他の留学生、特にアジアからの学生は過去の学校業績GPAを3.5以上持っていないとなりません。勤勉な学生であることを条件としているこの奨学金に、私は通っている大学を通じて応募しました。」
奨学金応募者は、それぞれの大学で書類選考と面接を受けるが、最終合否の決定には、ロータリー米山記念奨学会による面接がある。アジア諸国からの留学生に向けて広く募集している奨学金であるため、とても競争が激しい。その競争に勝ったチャンリットさんはこういう。
「最後の面接まで、求められる多くの要件を満ために必要なのは、諦めずに前向きな姿勢で努力するということだと思います。」
この奨学金を得たチャンリットさんは、大学で自分の研究に集中することができるようになった。
さらに、4年間の大学生活の中で日本国内外様々な場所に旅行できたため、地域の人々との文化交流の機会が広がり、日本のことを深く学ぶことができたという。
「私の大学では、他国との国際文化交流プログラムがあります。私もそのプログラムに応募してみたところ、2週間韓国で研修することができました。また、大学では多くのボランティア活動もあるため、さまざまな場所に旅する機会も得られました。このような学外活動を通じて、本当に充実した学生生活が送れました。」
大学を卒業した後、携帯電話や自動車、電子機器などの中古製品を消費財にリサイクルする有名な株式会社川嶋に就職した。この会社のリサイクル製品は、日本国内外で販売されている。
この会社で働くことを決意した理由についてチャンリットさんは語る。
「私の見解では、カンボジアを含む一部のASEAN諸国では、リサイクル技術がまだ未発達です。だからこそ、この会社で働き、そのノウハウを習得し、ASEAN諸国の可能性を広げることに貢献したいと思いました。将来は、日本のリサイクル技術をカンボジアに持ち帰り、子会社を設立するというのが私の夢です。リサイクル業界がカンボジアで発達すれば、他のカンボジア留学生や国内の雇用を広げることになると思うんです。」
(NyoNyum Khmer 45号掲載)
※掲載情報は取材当時の情報です
「レポートフロムジャパン」過去の記事はこちら
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