Cambodians Spreading Their Wings in Japan ⑥Training in Japn
Cambodians Spreading Their Wings in Japan ⑥Training in Japn
2018.12.26

留学に就職、実習や研修。さまざまなかたちでカンボジアの人たちが日本へ渡っています。 2018年の今年は1953年の外交樹立から数えて65周年、「日カンボジア友好65周年」の年。カンボジアと日本、その関係や交流のかたちは 65年の間に変化してきました。

そんな今、日本で学び働くカンボジア人たちは何を思いどう過ごしているのでしょうか。現地情報誌NyoNyum No.98に掲載されている特集「日本に羽ばたくカンボジア人」をシリーズに分けてお伝えします。

 

<前回までの記事はこちら>
①カンボジア人の日本留学事情編!
②大学院留学編!
③日本語学校留学編!
④働くシステムエンジニア編!
⑤働く大使館職員編!

 

6回目の今回は「技能実習制度とは?」最近何かと話題の「外国人技能実習制度」の概要について取材しました。実習生の増加とともにさまざまなトラブルも発生するなか、カンボジア政府もその対応に動き始めています。その取り組みについて、技能実習生のサポートを行う在カンボジア王国大使館労働参事官のリッティさんにお話を伺いました。

 

外国人技能実習制度とは?

「外国人技能実習制度」をご存じだろうか。最近、新聞などでよく目にするこの言葉。実は、制度自体は新しいものではない。開発途上地域への技能移転を図り、その経済発展を担う「人づくり」支援を目的とする制度として1993年に制定され、在留資格「研修」での研修修了後、続く1年を限度に技能実習目的の在留が認められた。

その後2009年の入管法改正により初めて、在留資格「技能実習」を単独で設置。2017年11月には「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(以下、「技能実習法」)が施行された。

技能実習法では、技能実習の適正な実施、実習生の保護、制度の拡充の3点を重視し、管理団体の許可制や技能実習計画の認定制などが新たに導入された。現在は最長で5年の滞在が実習生に認められており、技能実習の対象職種・作業は農業、漁業、建設関係などを含む80職種142作業(2018年11月16日現在)に上る。

法務省によると、2017年6月末時点の「技能実習」在留資格を持つ在留者数はおよそ25万人で、その数は年々上昇傾向にある。在留者数を国籍別で見てみると、ベトナム人が最も多い約10万人、 次いで中国人の約8万人、フィリピン人の約2万5千人と続く。カンボジア人の技能実習取得者数は同時点で5,704人と、いまだ他国に比べ少ないものの、礼儀正しく真面目な国民性が日本人に似ていると言われ、近年注目されている。

 

送り出し機関と受け入れの流れ

技能実習生はどのようにして日本へ渡るのだろうか。日本での技能実習を目指す人たちは渡航前に自国の送り出し機関に通い、日本語の授業や職業訓練を受けるのが一般的だ。送り出し機関は実習生の募集、教育をはじめ、受け入れ機関、監理団体との連絡・調整、送り出し後のフォローアップなどを行う。

技能実習の受け入れには2つのタイプがある。日本の企業が直接、技能実習生を受け入れる「企業単独型」と、受け入れ企業が監理団体経由で技能実習生を受け入れる「団体監理型」だ。受け入れ側は、適切な技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構より認定を受ける必要がある。技能実習の区分は入国1年目の「第1号技能実習」、2・3年目の「第2号技能実習」、そして4・5 年目の「第3号技能実習」と3つに分けられる。ただし、第1号から2号、2号から3号へそれぞれ移行するためには、実習生本人が技能評価試験(学科や実技)に合格することが必要となる。

カンボジアと日本は2017年7月に「技能実習を適正かつ円滑に行う」ために2国間の取り決めを行った。この協力覚書では、事務的な合意が図られたことに加え、カンボジア政府が公式に認定した送り出し機関のリストが2国間で共有された。協力覚書は同年6月に交わされたベトナム以来、カンボジアが2カ国目で、今年10月現在、日本はカンボジアを含む計10カ国との間で取り決めを作成している。

 

政府によるカンボジア人技能実習生のサポート

外国人技能実習制度のもとで日本に渡航するカンボジア人が増えています。しかしさまざまなトラブルも発生するなか、この制度の重要性を鑑み、カンボジア政府は駐日大使館に「労働参事官」を駐在させることを決定。初代労働参事官として赴任したリッティさんにお話を聞きました。

 

ティエン・ベンリッティさん
Mr. TAING Phengrithy

在カンボジア王国大使館労働参事官

1986年生まれ(32歳)、コンポントム州出身。2003年に高校卒業後、2005年から大阪で日本語を学ぶ。2006年~2010 年、横浜国立大学経営学部。2010年に労働職業訓練省に入省、2018年1月より在日本カンボジア王国大使館で勤務。

 

2018年9月時点で、日本には約6,000人のカンボジア人が技能実習生として7つの分野に派遣されているという。主な分野は農業(32%)、建設業(22%)、縫製業(21%)だ。最近日本の国会でも大きな議論になるほど、その制度や現状をめぐる問題は山積みとなっている。一方で年々増え続けるカンボジア人技能実習生たち。そんな彼らをサポートするために、カンボジア政府はリッティさんを今年1月から労働参事官として駐日大使館に赴任させることにした。

労働参事官の任務は大きく言うと、「技能実習生の利益を守ること」と「カンボジア国民の労働市場拡大」の2つ。赴任以来、各地の技能実習生のもとを訪れ、生活や仕事の状況把握、法律・制度に関する情報の伝達などを行っている。「技能実習生たちは、私が訪問するととても喜んでくれます。日々寂しい思いをしているのだなと思います。私が行くことで、心強く感じてくれるようです。彼らには、病気や事故、その他何か問題が起きたら、Facebookや電話などですぐに連絡をするよう伝えています」とリッティさん。大使館にリッティさんのような存在がいることは、技能実習生にとって心の支えとなっているようだ。

 

(岐阜の企業で働く、縫製分野の技能実習生のもとを訪れるリッティさん)

 

技能実習生が抱える問題は、給与に関することや職場でのトラブルなどが主なもの。また、まだ少数派ではあるが失踪も起きているという。リッティさんは、カンボジア人技能実習生には、確かな情報のもとに自分の置かれている状況を確認し、問題が起こったときには大使館など公的な機関に相談をしてほしいと呼びかける。一方で、日本政府にも受け入れている企業に対する指導や監督を強めてほしいと望んでいる。

自らも留学生として日本で生活した経験を持つリッティさ ん。SNSも発達していなかった時代を経験している。「外国で暮らす中では、カンボジア人、外国人のネットワークを作ること、仕事や勉強だけでなく、社会的な活動に積極的に参加して日本人を含む良い仲間を作ることが必要だと思います。そして自分の専門をしっかり身に付け、将来カンボジアに戻って政府機関や企業で活躍できる人材になってほしいです」と、日本で頑張るカンボジア人たちにメッセージを送った。

 

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