「若い時から身に付けた理髪の技をこれからも周辺の住民に役立ち続けたい!」
「若い時から身に付けた理髪の技をこれからも周辺の住民に役立ち続けたい!」
2024.01.29

約20年前まで、路上の散髪屋さんではフランス語のTondeuse(トンズーズ)をトロンデューと呼ぶ手動のバリカンで髪カットをするのが一般的だった。だが、現在の経済発展と共に電動バリカンなど利用するお洒落な理髪店がプノンペン都内にあちらこちらに現れ、手動のバリカンを利用する散髪屋さんの姿がだんだん見られなくなっているようだ。一方で、昔ながらの散髪屋さんを懐かしんで、今も手動のバリカンで髪の調髪を望む都会のクメール人の住民がまだまだいる。今回は、路上の散髪屋さんの商売事情をお届けしたい。

 

路上の散髪屋さん

イオンモール1号店の手前のエリアにあるワット・スバイ・ポぺェ寺の南周の壁沿いには、約10人の理髪師の散髪屋が軒を連ねている。その中で、ニョニュムスタッフの取材に応用してくれる理髪師が一人いた。

チョーム・チュンさん(53)は、2000年からプノンペン都内の散髪屋さんで理髪師として生活を営んでいる。プノンペンに上京する前は故郷のコンポンチャム州で1990年からこの理髪師のキャリアを始めたという。故郷からプノンペンに上京して理髪師として長年働いたチュンさんは、今日に至るまでようやく今の自分の散髪屋を構えることができた。今までの理髪師としてのキャリアについて次のように教えてくれた。「約30年前は散髪の技を先輩から学びました。当時、授業料として約50ドル払いました。最初は理髪師としてあちらこちらの理髪店で日雇い仕事として働いていました。故郷のコンポンチャム州で約10年間日雇い理髪師としては働きながら、プノンペンに上京して自力で稼ぎたいという想いが募り、2000年にようやく今のところでこの散髪屋をやるようになりました」

1990年代のヘアカットの料金は、一人当たり1,500リエルだったが、今は一人7,000リエルだという。年々物価上昇と共に徐々に料金が上がったものの、1990年代と比べて収益がほぼ変わらないと語る現在、通常一日あたり3万〜4万リエルを稼ぐことができます。だが、週末には平日より来店客が多いので、約7万〜10万リエルを稼ぐことができる時もありますが、生活は依然とあまり変わりがありません」

チュンさんの理髪店に来る客の多くは労働者やオートバイ、トゥクトゥクの運転手など、年配の客が多いという。年配のリピーター客が多い理由については、次のように語った。「多くの客が昔ながらの路上散髪屋さんに懐かしみがあり、特に私の店はちゃんとした良い理髪店より安価です。そして、私がそれぞれの客の好みも把握しているので、私とのおしゃべりも楽しみながら、皆が気楽に利用して頂けるのです」

若者の理髪師が多い現在のプノンペンの理髪店。だが、同世代または年配の客の好みが理解できることが大事だというチュンさんの路上散髪屋さんは、現在若者と外国人の顧客も多くなっていると言う。「よく来てくれる客の中では、年配のモトアップのドライバーや周辺の住民ばかりではなく、近年、私のところに寄ってくれる若者や外国人も多くなっています」

髪の理髪スタイルと言えば、いろいろな流行が好まれる中、ロンソンタイや古代のロンソンという髪型が今も人気があるそうだ。どのヘアスタイルでもカットを丁寧にすることが大切だとチュンさんは言う。そして現代は家電製品が多く利用されている中、チュンさんは昔から使い慣れている手動のバリカンを好んでいるという。「近年、電動のバリカンが良く利用されていますが、私にとっては、電動も手動も両方使いこなせるものの、手動のバリカンの方が好きです。それは、客の髪を丁寧にカットすることに集中できるからです。年配の客には電動バリカンより手動バリカンの方が好まれます」。 

料理人の奥さんと、2人の子供と暮らしているチュンさん。寺の周壁沿いの路上散髪屋の場所を選んだ理由についても、教えてくれた。「私は理髪師として長年この仕事に就いてきたため、この技術以外に他のスキルはありません。この仕事の収入はそこそこですが、妻の収入で二人の子供を扶養できるくらいの生活ができています。また、人が立ち寄りやすくて、賃貸もほとんど掛からないので、理髪代も安く多くの客が親しめるのです」

1990年代から学校や寺など住民が多く集まるところにやっている路上の散髪屋さん。現在でも寺と学校の存在がある限り、路上の散髪屋さんの存在は絶えないだろう。陽射しや雨から客を守るために日傘やテントを張ったり、寺の壁の横に前鏡と椅子、多種のバリカンとハサミなどの理髪道具が置かれている。のんびりと客を待っている路上理髪師のチュンさん。大きな理髪店を開くために人を何人か雇用して、多額の賃貸など負担することができないと、これからもこのようなところでリピートしてくれる客や地域住民のために髪カットを頑張り続けたいという。

チュンさんの散髪屋は車があまり往来しないワット・スバイ・ポぺェ寺周壁沿いの路上にあり、賃貸は不要で、月に約5ドルを警備員に支払えばよいと言う。そのお陰で、安価で周辺の子供や大人、年配の住民が理髪ができて、住民から人気がある。子供と大人のヘアカット以外は髪染めや耳掃除のサービスがあるという。

 

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