NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリアップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、高校設立の手続きが難航している様子を伝えていただいた前回の続きです。
ついに高校が始まりましたが色々と問題があるようです。
バイヨン高校、ついに開校!
今年11月1日。創立7年目のバイヨン中学校の新年度が始まり、同時にバイヨン高校も開校しました。
念願の高校開設、バンザーイ!と書きたいところですが、そう喜んでばかりもいられません。
教師が足りないのです。
中学も高校も同じ校舎を午前と午後で使い、教師も中高関係なく教えることになるのですが、生徒数650人、13クラスに対して、教師は13人のみ。
絶対的に足りません。特に数学や物理・化学など理数系の教師がいない状態です。
カンボジアの教師は、ほとんどが市内の学校への赴任を希望しているため、市内の中・高校の教員数は定員の倍ほどもいて、教えたくても授業を持たせてもらえない状況とのこと。
教育省人事部にはいわゆる“袖の下”を吸い込むブラックボックスがあるとも聞きます。
そのとばっちりを受け、農村部の学校に赴任する教師は極端に少なくなるのです。

これはもう、母校愛に満ちたバイヨン中学校卒業生に、高校卒業後、教員養成校に進学してもらい、教師になって地元に戻ってきてもらうしかない。
そう考えた校長は、市内の高校を卒業したバイヨン中学校第一期生38人を集めて、
「将来、教師になって、バイヨン中学校で一緒に教えましょう!」
と呼びかけ、うち18人は教師になりたいと意欲を見せていました。
ところが、カンボジアでは、高校卒業試験の成績が良くなければ教員養成校の受験資格さえもらえないそうなのですね。
何人かは受験はできたようですが、全員落第。
教師になるのも狭き門となっているようです。
教師がいないのなら、e-learningを利用できないか?など、現在も模索を続けていますが、日本と違ってカンボジアの学校は、卒業試験で合格点に達しなければ容赦なく落第となるので、それが頭の痛いところです。
教員資格のない人が教えるのも違法で、教育省から固く禁止されているとのこと。
何かよい打開策はないものでしょうか……?
(この記事は2019年12月に発行されたNyoNuym104号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリアップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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36:教師不足解消への道?
37:次は文化祭!
38:4人目の勤続10年スタッフ
39:#cafemoimoi で繋がる輪
40:ノンちゃんはトリリンガル
41:粋なお福分け
42:魅惑のカンボジア発酵魚料理
43:NyoNyumとカンボジアと私
44:村の中学生たちの日常
45:中学校退学者のその後
46:バイヨン高校がほしい!
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