(日本語) 地方からカンボジアサッカーの底上げを【JICA海外協力隊員・宮城晃太さん】
(日本語) 地方からカンボジアサッカーの底上げを【JICA海外協力隊員・宮城晃太さん】
2020.01.21

近年、カンボジアのサッカーは日本から注目を集めている。2015年にロシアW杯のアジア予選で日本とカンボジアが同組になり対戦したのを皮切りに、国内トップリーグであるメットフォンカンボジアリーグには日系クラブが2つも参戦。

さらには2018年から元日本代表・本田圭佑選手がカンボジア代表の実質的な監督に就任。現在はU-16、U-19とすべての年代の監督が日本人など、日本とのつながりが深いカンボジアのサッカー界。

その影響か、昨年10,11月に行われたU-19AFC選手権予選では行徳浩二監督率いるU-19カンボジア代表が実に46年ぶりの本大会出場を決めた。

そして先月行われたSEA GAMES(東南アジア版オリンピック)では史上初の準決勝進出(結果は4位)を果たすなど、徐々にではあるが国際大会で結果も残しつつある。

そんな中、昨年からJICA海外協力隊員として北部のクラチェ州で指導にあたっているのが宮城晃太さんだ。日本では多くの子供たちが憧れるJリーガーだった宮城さん。

協力隊員の派遣期間である2年という限られた時間の中で、現地で日々どのようなことを考えながら実践しているのだろうか。今回、カンボジアのサッカーの底上げのために地方で奮闘するその様子を紹介します。

 

カンボジアにきたきっかけ

大学卒業後、2016年に当時J3だった地元のFC琉球(現在J2)に入団しました。選手としては同年限りで引退し、翌年からFC琉球のアカデミーコーチを務めていました。

元々、大学時代に教員免許を取得していたので、いつかはそれを有効活用しながらどこかでサッカーしたいと漠然と考えていました。

そして縁があってJICA海外協力隊員募集に応募。当初は、体育の職種と言う枠で応募しました。ですが、蓋を開けたら職種がサッカーに変更に。合格通知と共にカンボジアと言う国に派遣される事がわかりました。

ちょうどその頃、あの本田圭佑選手もカンボジア代表に関わりはじめたというニュースを耳にしたので、これはいいチャンスだと思いましたね。2019年2月からカンボジア・クラチェ州で育成年代の選手達にサッカーの指導をしています。

また、クラチェには現在、社会人チームのクラチェFCがあり、僕も選手としてそこでプレーし、それがきっかけで友達ができました。彼らとはプライベートでカフェに行ったり、一緒にサッカーやフットサルをしながら日々クメール語を学びました。

そのおかげで問題なく生活を送る事が出来ています。 また、良く友達に誘われ、晩御飯を食べに行ったり、結婚式もたくさん招待して頂いたりなどカンボジアの友人に囲まれながら田舎暮らしを満喫しています。

 

赴任当初の苦悩と感じたこと

来た当初はいろんな意味で驚きの連続でした。まず、チームの子供たちを連れて、地方で行われた大会に参加しましたが大会中は1週間、トタン屋根で寝泊まりして試合に臨みました。笑

さらに練習や試合をしようとしても地方では時間を守るという概念があまりなく、なかなか子供が集まらないこともしばしば。時には集合時間に選手がなんと2人しか来ないということもあるなど、現地の洗礼を受けましたね。

それでもめげずに声掛けをしていたら徐々に集まり始めてようやく練習ができるようになりました。

また、グラウンドがゴミらだけであまりに汚いので、練習前にゴミ拾いを始めました。日本の場合は「最初は一人でも続けていれば一人、また一人とゴミを拾う人が増え続け・・・」という展開になりますが、ここはカンボジア。ほとんどの選手がゴミ拾いを続けられませんでした。

元々、このグラウンドはユースチーム以外にも、他の大人のチームも使っていて彼らは平気でゴミ捨てているのが現状です。日本では当たり前のことがそうではない環境。僕はこの出来事を通して、何か見えない大きな壁にぶつかった感覚に陥りました。

そして、この習慣を変えるにはこの町だけでなく、国や教育から変えていかないといけないと身をもって体感しました。ただ、僕はめげずに今でも毎日選手たちにゴミ拾いの大事さを問いかけ続け、最近はきちんとゴミ箱に入れるという行動する光景を目にしますし、少しずつですが改善されてきてはいます。

また、古巣であるFC琉球の支援のおかげでユニフォーム、ボール、ミニゴールを贈呈していただき、ある程度の環境が整いました。選手には用具を大切に扱う事の大事さや、寄贈してくれる方々への感謝の気持ちを忘れないで欲しいと伝えています。

また、サッカー以外でも何か自分にできることはないかとクラチェ州の教育省に相談したら、地元の小学校と繋いでくれて球技中心に体育を教えることになり、活動範囲が広がり、それがサッカーにも繋がりはじめました。

 

カンボジア国内のユース事情

数年前までカンボジア国内の育成年代(15~18歳前後)に関しては一部のクラブの下部組織以外はほぼ皆無でした。

それが近年、日本サッカー協会からカンボジアサッカー協会に派遣されている小原一典さんがカンボジア全土を回り、各州の現地スタッフとともに協力してセレクションを行ない、各州にユースチームを立ち上げました。その後、U-16とU-18の2カテゴリーで8地域に分かれてリーグ戦が開催されるようになりました。

クラチェ州に関しては最初の選手選考は小原氏と現地スタッフが行ない、その後、僕が赴任して現地スタッフとコミニケーションを取りながら、選手のセレクションを行ったりしています。登録選手数はU-15,U-18チーム合わせて約50人。

選手にはセレクションを通ったり、練習に参加して認められれば途中からでもなることができます。

全部で4チーム (クラチェ州、ラタナキリ州、モンドルキリ州、ストゥントレイ州)が ホーム&アウェーでリーグ戦を行い、このリーグ戦の上位2チームが決勝リーグ進出、 16チームによる決勝リーグの上位4チームで決勝トーナメントを行なうという形式になっています。日本でいう都道府県選抜が関東リーグを行なうような感覚です。

そのリーグ戦ですが、本来は7月頃に開幕すると聞かされていましたが、なんと遅れに遅れて12月29日にようやく開幕しました。これからの連載ではリーグ戦の様子なども紹介していきたいと思います!

 

夢はクラチェからカンボジア代表を輩出

目指すところはやはり、ここクラチェからカンボジアという国を代表するようなサッカー選手の輩出です!

特に今のU-18世代は2023年にカンボジアで行われる予定のSEA GAMES(東南アジア版オリンピック)の対象です。カンボジアにとってこの大会は国を挙げての一大イベントなので是非そこに選手たちを参加させたいと思っています。

過去にもクラチェのU-15から3人、U-18から1人が各年代の代表チームに参加した実績があり、カンボジアの田舎の中ではちょっとしたサッカーどころなんです。そのためにもまずは彼らがサッカーすることができる環境と仕組みづくりが大事ですね。

例えば、練習試合をするには審判副審を呼ぶためのお金が必要です。本当の意味で選手達の質を強化していくためには公式戦だけでなく、練習試合も定期的に行なえるような仕組みづくりもしなくてはいけません。

 

あと、サッカーは18歳では体もでき上がってしまい、遅いのでもっと下の年代からの指導が必要です。

8月から次世代のクラチェアカデミーを担う選手育成とクラチェのサッカー普及を目的に10歳〜13歳向けのスクールを開始しました。

SNSで告知をすると僕が所属している社会人チーム・クラチェFCのサッカー仲間達が続々とスポンサーを名乗り出てくれ、 ウェア、ビブス、飲料水、朝食などを提供していただきました。サッカーを通して繋がったカンボジアの仲間に感謝です。

そして最近、カンボジアサッカー協会がU-13男子チームとU-18女子チームを各州に作ると発表しました。クラチェでも現在、選手を集めて、セレクションをしている段階です。

 

これから定期的にクラチェでの様子をお伝えできたらと思います!

皆様、よろしくお願いします!

 

(写真提供:JICAカンボジア、宮城晃太)

 

プロフィール:宮城 晃太(みやぎ こうた)

JICA海外協力隊員(クラチェ州)
1993年生まれ。沖縄県出身。大阪産業大学卒業後、2016年に地元のFC琉球(当時J3)に入団。同年限りで引退し、翌年からFC琉球アカデミーコーチを務めた。現役時代はMF。
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