2018年1月9日は今年の通訳初め。初仕事でした。
会社の業務は3日から開始しておりますが、会社の経営者という一面の他に、プロの通訳者・翻訳者という顔を持つ私にとって、通訳の仕事は喜びであり、そして闘いでもあります。
今年の初仕事は、ビッグな話が舞い込んできました。
日本の某組織のトップがカンボジアの大臣、総局長クラスの方と協議をされる。カンボジア側のトップクラスの方々は顔なじみなのですが、やはりお仕事として通訳席に座る前にはそれなりに緊張します。
午前、午後、そしてディナーでの通訳を終えて家に帰るともうヘトヘト。朝から晩までしゃべり続けたんですから仕方ないですが。午後の通訳が思ったより早く終わり、ディナーまで時間があったので足マッサージで自分の体を修理しながらの仕事となりました(このマッサージ代は経費にできないのだろうか・・・)。
自宅に帰って、どこか興奮しているのでしょう。全然寝付けず明け方くらいまで夢を見たり、ウトウトしながら何か考えていたり、夢の中で通訳をしたりしていました。
そんな初仕事を迎えた2018年。
今年は私にとって通訳デビューから20周年という区切りの年となります。20年前の何月だったでしょうか。私の本当の「初仕事」がありました。
それは、日本領事館の当時の領事からのお電話でした。
まだプノンペン大学の学生(3年生になったばかりのころ)だった私に、タイで働いていた頃の知り合いが日本からのお客様を連れて来るので、その際に通訳が必要ということで、私に通訳はできませんか?という問い合わせでした。
プノンペン大学在学中は、ガイドのアルバイトをさせていただいたり、多少日常生活の中で通訳みたいなことはしていたかもしれません。でも正式な「通訳者」としての仕事は未経験。私にできるのだろうか・・・という不安とともに、やってみたい・・・という思いが湧き上がる。内容を聞くと教育関係の話で、地方の学校などを回っての視察だという。できるかもしれない。そう思ってお仕事を受けることにしました。
タカをくくっていたわけでもなく、本当にまっさらだったのだと思います。その仕事の成果は・・・「大失敗」でした。出来ると思っていた通訳ができないのです。地方の学校の校長室でミーティングとなり、校長先生が学校の運営状況、背景、抱えている問題などを話し始めると、だんだん何が何だかわからなくなっていく。単語も知らないものが多かったし、ましてやガイドやちょっとした日常生活の通訳とはちがい、あちらには状況説明をしている校長先生、こちらにはメモを取ろうと真剣に話を聞いておられる日本のお客様。その狭間で、どんな風に両方向へ話を持っていったらよいのか、パニックに陥ってしまったのです。
日本からの質問もしどろもどろ。英語のできる若手のカンボジア側の先生がいたので、ツアーをコーディネートしていたタイ在住の日本人の方が英語で通訳を始め、その場はなんとか収まったのでした。。。
ショックを受けて、申し訳ない気持ちと恥ずかしい気持ちを抱えながらその学校を出てプノンペンに戻り、お客様の宿泊ホテルで精算をということになり、コーディネーターの方と別途二人で対面することになりました。お金なんて頂けない、そんな思いを正直に伝えると、彼女は私にこう言いました。
「山崎さん、私はあなたが将来立派な通訳になれると思ったわよ」
え?と思って顔を見ると、その方は続けてこう言いました。
「通訳は正直でなければダメ。変に繕って、わかってもいないのにわかったふりをして通訳を進めてしまう人を私はいっぱい見てきた。でもあなたはわからなくなってから、素直にわかりませんと皆に伝え、人を騙そうとしなかった。だからあなたには素質があると思う。頑張って欲しい」
叱られるものとばかり思っていた私にとって、その言葉はとっても身に染みるものでした。
しっかりとその日のギャランティーを頂き、私はプロの通訳の道を踏み出したのです。とにかく事前勉強、わからないことは通訳をしているその場で聞いて、理解して、それから進める。通訳者としての原点。
あの時のお客様や、カンボジアの校長先生、タイのコーディネーターの方、お仕事を声かけてくださった領事は、今どうされているのだろう。この場をお借りして、感謝をお伝えできればと思います。
(写真はこの「初仕事」のものではなく、別の通訳の際に頂いたものや、自分で撮っていた通訳メモです)
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