近年、目覚ましい経済発展を遂げるカンボジア。
国内の急速なデジタル化で情報を得た若者は国外へ飛び出すものも多いです。
日本へ向かう若者もここ数年で数倍に増えてきています。
勉学に励むもの、母国の発展のために働きながら技術を習得するものなど。
日本で日々奮闘しているカンボジア人の姿をNyoNyumの姉妹誌NyoNyum Khmer内の「レポートフロムジャパン」というコーナーを通して紹介してきました。
そして、上記コーナーを「是非、日本語でも紹介して!」という声が多かったので、読者の日本人の方や日本語学習するカンボジア人の方にも知ってもらいたいということでNyoNyum webで日本語版でも紹介していきたいと思います。
今回は農村開発省のコンポンチュナン州の農村開発局に所属しているティム・チーさんです。
「人材育成奨学計画(JDS)は、日本に新しいことを学ぶのと今の自分のキャリアアップを後押してくれた」
ティム・チーさん(Tim Chy,34)は現在、農村開発省のコンポンチュナン州の農村開発局の農村経済開発部署を担当する公務員である。
2007年に高校を卒業し、王立農業大学の奨学金で農業と経済、農村開発の学部に進学し、2011年に同学部の学士号を取得した。
翌年の2012年には、農村開発省の公務員試験に合格。公務員として働く中、2015年にJDS奨学金試験に合格し、日本の東京農工大学で修士号を取得した。
帰国後、現職に復帰したが、現在はプノンペンの王立行政学校で官僚向けの行政学の学位を取得しようとしている。
優れた日本の教育制度を知り、特に日本人の伝統や文化、そして日本の現代の技術について関心を持っていたため、日本政府が実施した人材育成奨学計画(JDS)の奨学金を申請し、2015年に日本に留学を実現した。
この奨学金を得るためにはかなりの時間と努力をしたというティム・チーさん。
「修士課程で農業と農村開発のための研究でこのJDS奨学金を獲得するまでに、申請プロセスや英語の試験、面接、健康診断などの厳選されたプロセスでほぼ一年間掛かりました」
東京農工大学での修士課程では、カンボジアのコンポンチナン州のロレアビア地区での事例を研究テーマとし、小規模農家における野菜生産の障壁についての論文の執筆に焦点を当てた。日本とカンボジアでの研究の違いについては、彼は次のように述べた。
「この研究プログラムでカンボジアと異なるところは、学生がそれぞれの研究テーマに合った研究所に分かれ、指導教員のもとで毎週研究の進捗状況を発表する必要があることです。また、学生は国際会議で自分の研究成果を発表するチャンスも得られます」
日本の大学の研究生の生活状況についてティム・チーさんは、「日本の大学での研究は、学生を自立性を養うものでした。自習を通じて学生一人一人が多くの知識とスキルを培っていきます。研究生としての生活は容易なものではありませんでした。各科目の教授と論文執筆を指導する指導教授は基本的な事だけ教え、それを基に学生は自分の研究を進めなければなりません。そのため、多くの学生は図書館や研究室で自習し、さまざまな学習活動に参加するために多くの時間を作らなければなりません」と振り返る。
しかし、ティム・チーさんはこのJDS奨学金プログラムに深い感謝をしているという。
「2年間の日本での生活に非常に満足しています。日本滞在中はJDS奨学金プログラムで宿泊費や他の生活の費用など経済的な面でかなりの支援を受けました。日本の宿泊施設(アパートや寮)でも、公共の場所でも、きれいな環境に恵まれ、日本のことが本当に好きになりました。勉強だけでなく、地震や四季などの自然にも触れ、カンボジアでは味わえない新しい生活を体験することもできました。特に、日本食はとても美味しいですね。日本食が恋しくなったきは、プノンペンのイオンモールに行って食べています。いつか再び日本で新鮮なものをもう一度食べられることがあればいいなと、いつも思っています」
日本人は時間を厳守し、人々がお互いに尊重する道徳感の意識が高く、生活も規則正しく、特に衛生に対する意識がとても高いと評価するティム・チーさん。
一方で、日本で円滑に生活するためには、日本語ができると便利だが、注意しないといけないこともあるという。
「日本語が話せないと日本人とのコミュニケーションが難しくなります。そして、人が密集する都会に行くと、日本であっても都会にはいろいろな人がいるし、人に騙されたりすることもあるので、注意しないといけませんね」
日本での修士号を取得するための勉強は、本当に自分のためになったという。
「留学を終えて帰国てから、上司からも信頼され、新しい役職に就任することができました。日本で学んだこと、経験したことを活かすだけでなく、帰国後も関連分野の新しい知識やスキルを身につける努力をしました。その結果、職場の同僚からも地域の人々も、自分の仕事ぶりを評価してもらっています。将来は、海外、特に日本で博士課程を獲得したいと思っています。自分の能力や知識、スキルなどさらに磨いていきたいんです」
最後にティム・チーさんは日本の修士号を取得した経験から、日本の大学での研究を目指すカンボジア人の後輩たちに、こんなアドバイスをしてくれた。
「日本の大学では英語での履修だったとししても、日本語ができることが大事です。そして、自分の目指す大学の研究の仕組みをよく調べて、クラスメイトや教授、特に指導教官(主査)と副指導教官の人格をよく知り、良好な関係をつくることが自分の研究と論文を円滑に進めるのに重要です。研究者だからといって研究ばかりするのではなく、コミュニケーション能力が重要なんです。また、運動や食事を十分に取るなど、正しい健康管理が良い研究成果に繋がります。自信をもって行動していくことで成果を積み上げていくことが、将来の自分自身と国に誇りと名誉をもたらすと信じて頑張ってほしいです」
(NyoNyum Khmer 44号掲載)
※掲載情報は取材当時の情報です
「レポートフロムジャパン」過去の記事はこちら
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