(日本語) アンコール見聞録 #14 仏人がジャワに学んだ修復手法
(日本語) アンコール見聞録 #14 仏人がジャワに学んだ修復手法
2020.02.01

NyoNyum Magazine にて連載しているコラム「アンコール見聞録」

上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者として、シェムリアップでアンコール建築に関する研究を行っている三輪悟さんが、アンコール建築の歴史や、遺跡の周りで営まれる生活、カンボジアにまつわるあれこれを綴ります。

今回は、遺跡修復に関わったあるフランス人について。

仏人がジャワに学んだ修復手法

マルシャルが訪れたインドネシアのプランバナン遺跡
マルシャルが訪れたインドネシアのプランバナン遺跡

アンリ・マルシャル(Henri Marchal, 1876-1970)は、1916 年に逝去した初代仏人保存官コマイユの後任であり、1931 年にバンテアイスレイ遺跡をアナスティローシス(Anastylosis)という手法で修復し成功を収めた。

これが一つのモデルとなり、その後のアンコール遺跡群の修復が進められた。

バンテアイスレイは 1914 年に発見された新しい遺跡であったが、1923 年に後の仏文化大臣アンドレ・マルローによる「東洋のモナリザ」盗難事件があり、皮肉にもこれを契機に知名度を増していく。

1930 年修復手法に悩んだマルシャルはインドネシアのジャワを訪れ、プランバナン遺跡にてオランダ人保存官の教えを受けていたことは興味深い。

その後、マルシャルは 1952 年に大崩壊したアンコールワット西参道の修復を担当した(1953-)。

上智大学の石澤良昭教授は 1961 年マルシャルと共にバンテアイサムレを訪れたと回想している。

マルシャルは 1970 年 4 月シェムリアップにてその生涯を閉じた(享年 93 歳)。

1993 年カンボジア政府より西参道修復の打診を受けた石澤がマルシャルに思いを寄せたことは容易に想像できるが未確認ではある。

現在上智大学センターに勤める女性は、マルシャルのカンボジア人夫人の親戚であることは偶然ながら運命的なものを感じる。

(この記事は2019年8月に発行されたNyoNuym102号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

コラムニスト: 三輪 悟(みわ・さとる)

上智大学アジア人材養成研究センター(シェムリァップ本部)助教
1997年10月よりシェムリァップ在住。専門はアンコール建築学。NyoNyum89号(2017年6月号発行)より遺跡やカンボジア生活にまつわる本コラム『アンコール見聞録』を連載。

 

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過去の記事

4:カンボジアは日本の先輩!?
5:アンコールワット西参道前の広場
6:アプサラ機構専門家による熊本視察
7:死んだカエルと干しガエル
8:アンコールワットの矢ワニ
9:西参道正面北側のナーガ
10:石の穴 あいたり、消えたり
11:遺跡内は犬禁止
12:米価が3倍になる継続性
13:外国人の遺跡入場者数
14:仏人がジャワに学んだ修復手法

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