アンコール見聞録 #35 アンコール遺跡群の世界遺産登録30周年記念イベント報告
アンコール見聞録 #35 アンコール遺跡群の世界遺産登録30周年記念イベント報告
2023.02.14

NyoNyum Magazine にて連載しているコラム「アンコール見聞録」

上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者として、シェムリアップでアンコール建築に関する研究を行っている三輪悟さんが、アンコール建築の歴史や、遺跡の周りで営まれる生活、カンボジアにまつわるあれこれを綴ります。

 

アンコール遺跡群の世界遺産登録30周年記念イベント報告

世界遺産登録30周年

アンコール感謝祭の祈り(12月14日)

前々号の121号でも少し触れたが、昨年12月14日世界文化遺産アンコール遺跡群は、パリに本部があるユネスコの世界遺産に登録されて30年という記念すべき日を迎えた。これに合わせて、カンボジアのシェムリアップでは会議やイベントが開催されたので以下報告したい。

 

アンコール感謝祭の祈り

朝日に向かい舞う踊り子(12月14日)

12月14日(水)朝6時過ぎ、僧侶130人が西参道入り口に集まり祈りが始まった。朝日が昇る時間に始まり、僧侶の読経が続き太陽はみるみる高度を上げた。アンコールワットと朝日に向かって舞うアプサラダンスは、日ごろの鍛錬を感じさせ素晴らしく印象的なものであった。

 

アンコールワットの舞台演劇

アンコールワットの舞台(12月14日) *チュエン・ブティー氏撮影

12月14日(水)夕刻、入場無料の舞台演劇がアンコールワット裏手(=東側)で開催され多くの見学者が観劇した。告知によると出場者はなんと300 名とスケールが大きいパフォーマンスであった。舞台では、ジャヤヴァルマン7 世の物語や現代音楽に加え、無形文化遺産である、宮廷舞踊(登録:2003年)、大型影絵スバエクトム(同2005年)、チャペイ・ダン・ヴェーン(同2016年)、ボッカタオ(同2022年)なども象徴的に披露された。カンボジア国内で観劇できる舞台芸術の総合的な質が相応に高まっていることを感じさせた。

 

ICC 国際会議(=国際調整委員会)

通常年に二度6月と12月に開催される遺跡を管理する上で最も重要な国際会議。議長国は日仏が共同で務め、事務局はユネスコが担当。カンボジア政府の要望を受け登録日である14日を敢えて外して12月15-16日に開催された。

 

バイヨンのディナーショー

バイヨンのディナーショー(12月16日)

12月16日(金)夜、バイヨン遺跡北側の広場にてディナーショーが開催され、約400名が観劇した。遺跡ディナーのアレンジはこれまでの経験と蓄積が豊富で、手堅くまとめた印象がある。今後プログラムとライトアップを更に磨くことで、より質の高いイベントが期待できる。他方、文化遺産地域をディズニーランド化しない配慮も同時に必要になる。

 

ショー終了後の舞台(12月16日)

 

(この記事は2023年2月に発行されたNyoNuym123号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

 

コラムニスト: 三輪 悟(みわ・さとる)

上智大学アジア人材養成研究センター(シェムリアップ本部)助教
1997年10月よりシェムリアップ在住。専門はアンコール建築学。NyoNyum89号(2017年6月号発行)より遺跡やカンボジア生活にまつわる本コラム『アンコール見聞録』を連載。

 

 

前の記事:

 

過去の記事

7:死んだカエルと干しガエル
8:アンコールワットの矢ワニ
9:西参道正面北側のナーガ
10:石の穴 あいたり、消えたり
11:遺跡内は犬禁止
12:米価が3倍になる継続性
13:外国人の遺跡入場者数
14:仏人がジャワに学んだ修復手法
15:アンコールワットの睡蓮
16:大阪万博 旧カンボジア館
17:アプサラ機構創設25周年
18:プノンペンオリンピックスタジアム
19:新型コロナとアンコール観光
20:聖山クーレンでのキャンプ体験に想う
21:聖山クーレンでのキャンプ体験に想う(続編)
22:統計に見るウイズ・コロナのアンコール観光
23:スラスラン中央寺院(仮称)の復元・再構築
24:新型コロナ一年
25:紙幣の図柄をよく見ると
26:遺跡修復新時代
27:レッドゾーン指定でついに修復作業がストップ
28:観光の再開
29:変わるもの、変わらないもの
30:クメール正月再び♪(2022)
31:遺跡を空から見てみると
32:統計に見るコロナ禍からのアンコール観光回復度
33:在住外国人への遺跡無料パス発行と世界文化遺産登録30周年
34:遺跡写真館
35:アンコール遺跡群の世界遺産登録30周年記念イベント報告

 

 

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