Moi Moi ライフ #59 日本にもクメール寺院が!
Moi Moi ライフ #59  日本にもクメール寺院が!
2022.01.13

NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)

シェムリアップで暮らす小出陽子さん。NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。

今回は、日本にあるクメール寺院について。

 

日本にもクメール寺院が!

クメールサマキ寺院での法事の様子

日本に帰省中の先日、日本に住む夫の親戚(ポル・ポト政権による混乱後、日本に逃れてきた元カンボジア人とその子孫)の法事に参加しました。場所は、神奈川県愛川町の山あいにあるクメールサマキ寺院。日本での宗教法人登録はハードルが高いとのことで、正式名称は「一般社団法人 カンボジア文化センター・クメールサマキ協会」だそうですが、日本にもカンボジアのお寺があるということを、今回、初めて知りました。

ただし建物は、冬には隙間風が入ってくるのでは、と心配になるほど簡素な集会所建築で、在住カンボジア人による手作りとのこと。建築様式はクメール寺院とはかけ離れているとはいえ、祭壇は小さいながらもクメール寺院そのものでした。当日は、日本在住の親戚一同40人ほどが集まったのですが、カンボジア人僧侶による読経など、儀式の流れもカンボジアと全く同じ。しかも、開始予定時間になっても当の家族が集まらず、それを誰一人咎めることなくのんびりと待ち、一時間以上経ってからようやく始まった、というのも同じでした(笑)。参加者は、それぞれの家で腕をふるって作ったカンボジア料理を持ち寄り、僧侶に献上した後、最後に皆でいただきました。

この寺院では、お盆や寄進祭りなどカンボジアの仏教行事も行われているとのことで、その期間は、県内外からカンボジア人が集まるそうです。また、コロナ禍で生活が困窮した日本在住カンボジア人の駆け込み寺となっている他、物資の支援なども行っているようです。

カンボジアの上座部仏教寺院は、祖先や来世と繋がることができる場所でもあり、地域コミュニティの中心でもあります。カンボジア人にとって無くてはならない存在、といっても過言ではありません。そんな寺院が日本にもあることで、カンボジアにルーツを持つ多くの人々が心強く感じていることを実感した一日でした。

(この記事は2021年12月に発行されたNyoNuym116号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

 

コラムニスト: 小出 陽子(こいで・ようこ)

1992年早稲田大学大学院卒。一級建築士。2000年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のため、カンボジアに赴任。2005年シェムリァップにレストランCafe Moi Moiをオープンする(一時休業中)。同年JST(NGO:アンコール人材養成支援機構)を設立し、農村地域の支援活動を始める。2013年“アンコールの都の西北” に公立のバイヨン中学校を創設。2019年には高校も併設され、現在、全校生徒820人の学校運営を行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事

 

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39:#cafemoimoi で繋がる輪
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41:粋なお福分け
42:魅惑のカンボジア発酵魚料理
43:NyoNyumとカンボジアと私
44:村の中学生たちの日常
45:中学校退学者のその後
46:バイヨン高校がほしい!
47:バイヨン高校、ついに開校!
48:他国事(ひとごと)ながら
49:”パプリカ“歌って英語授業!
50:”サイクリングブーム
51:将来の夢はYouTuber!
52:ナーガ・シンハ彫像修復プロジ ェクト終了!
53:Cafe Moi Moi コロナ禍で一時休業へ
54:バイヨン中高校先生方のコロナ禍副業
55:話し出したら止まらない“将来の夢!”
56:Moi Moi Farmでマンゴー狩り!
57:"一家に一農園"ブーム到来?
58:『インドラネット』
59:日本にもクメール寺院が!

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